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2009/11
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『ロックンローラ』
〔英〕ROCKNROLLA (2008年)
監督:ガイ・リッチー
脚本:ガイ・リッチー
ジェラルド・バトラー/トム・ウィルキンソン/タンディ・ニュートン/マーク・ストロング/イドリス・エルバ/トム・ハーディ/トビー・ケベル/ジェレミー・ピヴェン/クリス・ブリッジス/ジェマ・アータートン//カレル・ローデン/ドラガン・ミカノヴィッチ

1.裏社会の底辺にいるワンツーとマンブルズは、不動産バブルの波に乗ろうとするがあえなく撃沈。大物レニー・コールに多額の借金を抱える羽目に。
2.長年裏社会を牛耳ってきたレニーは、新興勢力のロシア人ユーリと取引を始める。しかし、ユーリから預かった大切な絵画が何者かに盗まれてしまって窮地に陥る。
3.有名ロックンローラーのジョニーは、麻薬漬けで死亡記事まで出る始末。実はジョニーが画を盗み、密かに潜伏している模様。
4.会計士ステラは、ユーリの金を盗むため、ワンツーとマンブルズに近付いた。
5.ワンツーと仲間達は、長年彼らを密告してきたヤツの正体を暴こうとしていた。

はい、G・リッチー作品!それ以外に何がいる?結局のところ、G・リッチーとして固定したこの雰囲気を楽しめばそれで良いでしょ。下手に普通になろうとしても、どうせ物足りないのだろうし。要するに、雰囲気が楽しめれば十分なのじゃないかと。
好みの役者を満載し、捻りすぎの物語、幾つかのぶっとい伏線を拠り合わせ、ラストに集結していく。映像も演出も好みの技をしつこいぐらいに全力投入し、もう鼻がひん曲がるくらいコテコテの格好良さを表面に塗りたくる。本作のラストなんてそりゃあもう、『くぅ〜カッコいい、もうやりすぎ腹痛い!』というぐらいなもので。
問題は、物語が捻り過ぎなことかな?『リボルバー』でかなり迷走したかと思ったが、それに比べればかなりマシではある。しかし捻り過ぎて詰め込むから、それぞれが離脱して全体が薄っぺらく感じるのよね・・・。
まぁ今回の話も、3つくらいに分離してもっと濃くすれば、それぞれ面白い映画が3本作れたろうに?と思わずにはいられない。『ロンドン3部作』とか言って(笑)。とは言え!G・リッチーと言えば、私好みの役者満載という最高の楽しみもある。
まず、G・バトラーはなんか合わないな。このスタイリッシュさに、スコティッシュの泥臭さが微妙にミスマッチ。T・ウィルキンソンの器用さには脱帽。T・ニュートンは大好き!大好きなだけにこの役は残念だ。キャラクターが合っていないというよりも、個人的にミスマッチ。J・ピヴェンはもちろん大好きだし、このテイストには合うと思うのだが、彼は余りにもアメリカン。コテコテのイギリス映画にはちょっぴり合わない。M・キング、ようやく観られた。あんた良いよ!
さて、T・ハーディー。このままずっと、G・リッチーとマシュー・ボーンに愛され続けていてください。久々のお目見えだったのだが、やはりこうした役にこだわっていて欲しいね。美形なだけに、余計こだわって欲しい。いや〜、相変わらず良い男だった♪ヴィクター役のD・ミカノヴィッチが余りに良い男で思わずつんのめった。『レイヤー・ケーキ』にも出てた?憶えてない・・・。
さて!もうずっと気になっていたT・ケベル。見つけて来るねぇ〜、良いところ突いて来る。あ〜、気持ち悪かった(笑)。思い返せば『レイヤー・ケーキ』でマシュー・ボーンもベン・ウィショーをこそっと使ってね、同じ系統の役者ね。ということで、もちろんかなり好みの役者だ。見方によっては格好良くすら見える。雰囲気良過ぎで最高なのだが、ある意味それでアクが強い。今後いかなる作品でお会いできるか?楽しみに追いかけたいと思う。ということで、本当にG・リッチー作品は隅から隅まで楽しめる(笑)。

ロックンローラ [DVD]ロックンローラ [DVD]
(2009/08/05)
ジェラルド・バトラートム・ウィルキンソン

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ぽすれん『ロックンローラ』紹介

テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

『ナゲキバト』
ラリー・バークダル著/片岡 しのぶ 訳/あすなろ書房
9歳の時、両親を事故で亡くして祖父に引き取られたハニバル。ポップと呼ばれて人々から親しまれた祖父は、両親の死で落ち込むハニバルを優しく救い出してくれた。そして、生と死を教え、人生を生きる意味すらも、教えてくれたのかも知れない。

何度読んでも泣ける。ありがちな感動作だと普通、1度読んで号泣したら2度めは泣かないのだが、この作品は違うのだ。一見すると当たり前とは思えない無いような祖父の教えもあり、じっくり考えて、心の奥深くにヒットする深い深い事柄。曰く灰色がかった教訓ではあるのだが、そんな難しいことを、幼いハニバルにも分かるよう、ポップは噛み砕いて教えてくれる。
9歳のハニバルは、両親の死に健気に耐えながら、子供らしく天真爛漫で素直な様を見せてくれる。そして祖父の教えの1つ1つを、純粋に大事に受け止めていくのだが、その穢れなき様がまた泣かす・・・わ(笑)。
幾つかの『生と死』を通して、その選択の難しさや、生と死を左右する力の使い方、意識の持ち方、ひいては人生のコントロールの仕方や心構えなどを語るポップ。そんな彼にも、そうした事柄を身を持って知るためのある出来事が過去にあったのだが、そうしたドラマ性も『小説』として高く評価できると思う。
とにかく、ポップの言う事は酷く最もなのだが、幼いハニバルでなくとも納得し難い、というか、自分がそんなことを判断する立場には立ちたくないと痛烈に思う。ナゲキバトを打ち落としてしまったハニバルにしても、『銃はいけません』とか『猟も単なる殺生だ』とか、直接的な事を伝えるより遥かに身に染みて様々な事を知るだろう。大切なのは、事実をただ伝えることより、考えさせ、そして選択させることなのかも知れない。
この作品、子供さんに読ませたら捗々しい効果が(何とは言い難いが)あると思う。両親の死を考えて怯え、そしてその存在を尊く思うかも知れないし、人にしろ動物にしろ、その命の尊さ、自分の人生の歩み方などを、真剣に考えてくれるかも知れない。
単純に小説として楽しむのでも十分なクオリティだ。短くてあっと言う間に読み終わってしまうが、いつまでも読み続けていたいと思わせる、穏やかで真心のこもった作品だった。

ナゲキバトナゲキバト
(2006/04)
ラリー バークダル

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テーマ : 海外小説・翻訳本
ジャンル : 小説・文学

『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』
アントニイ・バークリー著/武藤 崇恵 訳/晶文社ミステリ
寄稿している有名誌『クーリア』の編集長から、ラドマス湾で起こった『不可解な自殺事件』の記事を頼まれたロジャー・シェリンガム。従兄弟を連れてバケーション返上で訪れた先には、スコットランド・ヤードの切れ者、モーズビー警部もやって来ていた。後ろ暗い過去がある夫人の転落死、一見すると自殺のようだが、彼女が握り締めていたボタン、その過去、周囲に現れる複数の男性の影、ロジャーは意気揚々と事件解決に乗り出したのだが・・・。

ひっさしぶりの伝統的(?)イギリスミステリ。大好きなA・バークリーの作品が知らぬ間に沢山翻訳されていて、懐かしくて借りてみた。やはり面白い、特にロジャー・シェリンガム・シリーズは面白いのだ。
過去に発売されたものは全部読んだのだが、何しろ20年くらい前なのでは・・・。それでも鮮明に覚えているのは、『毒入りチョコレート事件』の非鮮やかな(笑)謎解きの展開などが当時真新しく、ミステリに関する新たな目線を与えてくれたということ。
ロジャー・シェリンガムは鮮やかに事件を解決するものあり、本作のようにちょっぴり(いやかなりか?)どじなものありと楽しめる。探偵小説のシリアスさを逆手にとって、探偵小説ならぬコメディを描いていると思うのだ。さすが、P・G・ウッドハウスを慕った著者ならではの遊び心。
今回ロジャーは、女性の外見にかどわかされてしまう。シャーロック・ホームズなら笑止千万と言ったところだろうが、そんな人間臭さと悪意のなさがロジャーらしくて私は好きだ。事件の結末もさして意外なものではないが、このシリーズの場合ミステリの醍醐味らしい意外性よりも、全体の小気味良さや人間関係を楽しむのが本筋だろう。
初めてA・バークリーを知った時は、その翻訳作品の少なさに悔しい思いをしたものだが、現在では複数の作品が翻訳されている。これから少しずつ楽しんで行きたいとおもうが、、、ミステリ、、、多少飽和気味なのよね?

ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎 (晶文社ミステリ)ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎 (晶文社ミステリ)
(2003/04/01)
アントニイ バークリー

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テーマ : 海外小説・翻訳本
ジャンル : 小説・文学

『痛いほどきみが好きなのに』
〔米〕THE HOTTEST STATE (2006年)
監督:イーサン・ホーク
原作:イーサン・ホーク
脚本:イーサン・ホーク
マーク・ウェバー/カタリーナ・サンディノ・モレノ/ソニア・ブラガ/ジェシー・ハリス/イーサン・ホーク/ローラ・リニー/ミシェル・ウィリアムズ/フランク・ホエーリー/リン・コーエン /アレクサンドラ・ダダリオ

役者志望のウィリアムは、ミュージシャンを目指すサラと出会う。緩やかに始まった2人の恋は、やがて激しく燃え上がる。しかし辛い過去を持ち、自立を夢見るサラの意思で、永遠と思えた恋は突然終わりを迎えてしまうのだった。失恋の痛手から立ち直れないウィリアムは、何とかサラを取り戻そうとするのだが・・・。

待ちに待った!ようやく来たか!映画制作の話を聞いてから4年くらい経っているかな?全く・・・DVD化遅いですよ(笑)。期待していた理由は色々。まず主演のM・ウェバーが好きなのだが、日本では滅多にお目にかかれない。しかし、幾ら監督が惚れ込んだからと言っても、彼に21歳の役はちょっと違和感ある(笑)。撮影当時は実際25歳頃のはずだが、そもそも妙に年寄り臭い人じゃない?
C・サンディノ・モレノも好きだから。かっわいいわぁ〜相変わらず。しかしあれは・・・役のために太ったのか?確かに最近ぽっちゃりしてるな・・・とは感じていたのだが。まぁ良い、可愛いし良い女優だ。E・ホークも好きだから。最初に小説を見つけたのだが、映画化の話を聞いて、これは映画の方が良さそうだと小説を読むのは止めたのだ。もう1つ、音楽がJ・ハリスでおまけに出演もしているから!そりゃ観たい!
小説を読むのを思い留まった理由はもう1つ。E・ホークはこれまで脚本なども書いているが、あらすじを読んだところ、それでも期待できそうな膨らみのある話とは思えなかったからだ。小説だと小ぶりでも、映画なら楽しめそうという感じ。
実際本作は、大人と子供の境界線を漂う無軌道な青年が熱烈な恋に破れ、ただひたすらにその恋に溺れていく様を描いた作品だ。ただ恋に落ちて、失恋して、立ち直る、それだけ。でもね?それが痛い!一度でもこんな恋や失恋を経験したことがある人なら、この痛み、気恥ずかしさ、お分かりいただけると思う。
話がシンプルなだけに感情的に剥き出しで、ウィリアムの行動が赤裸々に語られる。父親とのエピソードは多少大仰しかったかな?とは思うが、あれが無ければ物語的にはかなり陳腐だし、仕方が無いか?とも。
サラがもったいぶり過ぎ、そのくせ冷淡で分かり易過ぎるとも思ったが、実際の恋愛を思い返してみれば・・・リアリティが無いとは言えない・・・。それにしても、こうした失恋に対処する様というのは、男女の別なく、人種の別なく、皆似たり寄ったりなのかと思った。いや〜、いったいなぁ・・・思い出した、若き日の失態のあれこれ(笑)。
私のように、ウィリアムと同じようなことをしちゃった経験の無い方は、果てしなく単調で実りの無いつまらない映画と思えてしまうだろうが、ウィリアムに共感できる思い出のある方は、あの辛さを如実に思い出し、甘酸っぱい思いをすることだろう。

痛いほどきみが好きなのに [DVD]痛いほどきみが好きなのに [DVD]
(2009/09/02)
マーク・ウェバーカタリーナ・サンディノ・モレノ

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ぽすれん『痛いほどきみが好きなのに』紹介

テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

『チャンス』
〔米〕BEING THERE (1979年)
監督:ハル・アシュビー
原作:イエジー・コジンスキー
脚本:イエジー・コジンスキー
ピーター・セラーズ/シャーリー・マクレーン/メルヴィン・ダグラス/ジャック・ウォーデンー/リチャード・ダイサート/リチャード・ベースハート/ジェームズ・ノーブル

あるお屋敷の庭師として働くチャンスは、いつからかそこに住み、外の世界はテレビでしかみたことが無かった。しかし突然のご主人の死によって、チャンスは突然外の世界に放り出されてしまう。当てもなく町をさ迷っていたチャンスは、財界の大物ベンジャミン・ランドの妻であるイブの車と接触し、イブに請われてランドの屋敷で治療することになる。病気で衰弱した当主ベンジャミンは、朴訥として飾らないチャンスを気に入り、財界の大物たちもまた、隠喩めいたチャンスの庭の話に勘違いした感銘を受ける。財界や政界で次第に存在感を増していくチャンスだったが、彼の経歴は大統領が探しても不明のままだった・・・。

そうねぇ?シニカル、ブラック・ユーモア、風刺、乗せられやすい知識人に対する警鐘、この辺の言葉で全てを表せそうな作品。主に槍玉に上がっているのは政治家や財界の大物、メディアの人々。そんなところにあざとさを感じたりもするのだが。
残念なのか笑えば良いのか、己が知識にあぐらをかいて安穏としている人に限って、その無知や理解力の無さを感じると虚勢を張る様が妙にリアルだ。チャンスが語る庭の話を勝手に政治状況に置き換えて満足する姿は、確かにある種の悲哀をもって滑稽である。
そうした身勝手な興奮を表す人々を尻目に、唯一その勘違いを寛容に受け止めさせたのは、御大ベンジャミン・ランド。彼の場合は、チャンスに見出した文字通りチャンス、そして純粋さ、そこに見出せる希望にすがっただけなのじゃないかな?常態なら疑ってかかるはずの機敏さを押し留めて、チャンスをあるがまま以上に受け入れたかったとか?儚さと豪胆さが入り混じった役者の演技も素晴らしかった。
チャンスの語る庭の話、映画といえど、そこにはギリギリの言葉遊びが詰っている。チャンスの語る言葉は、微妙なラインで正常に受け入れられる。大げさな勘違いのおかしさを引き出す直前で手綱を引き締めたような言葉遊びの面白さがあった。
色々な方の感想を調べて見ると、結構多いのが『ラストがいまいち』。そこは私の同感。なかなかこった質の高いブラック・コメディと思わせておいて、製作者は更なる高みを目指したのか?何が言いたかったか?と問われれば、2〜3の解釈も捻り出せるだろうが、あえてそこまで考え込むほどの作品か?という感じだ。
本作でアカデミー主演男優賞にノミネートされたP・セラーズ、こちら噂に違わずという感じ。淡々とした演技で世間知らずのチャンスを演じきっていたが、笑わせようという意図以前に、その飄々とした目に見えない純朴さが笑いを誘う。この作品で主演男優賞は難しかったか・・・とも思うが、助演男優賞を受賞したM・ダグラスの方がやはり上だったかな。

チャンス [DVD]チャンス [DVD]
(2001/07/06)
ピーター・セラーズシャリー・マクレーン

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ぽすれん『チャンス』紹介

テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

『素数たちの孤独』
パオロ・ジョルダーノ著/飯田 亮介 訳/ハヤカワepiブック・プラネット
天才的な数学の才能を秘めたマッティアには、幼い頃に亡くした妹がいた。しかも妹の事故に直接の関係があったマッティアは、自らを許すことが出来ず、厚い殻に自分を閉じ込めたまま成長した。大嫌いなスキーを無理矢理父親に押し付けられていた少女アリーチェは、そのスキーがもとで事故に遭い、以来片足が不自由になってしまう。父親を責め、拒食症になったアリーチェもまた、心に深い傷を負いながら成長した。10代になった彼らは出会い、傷ついた心が慰めあうように近付いていく。必然とも思える2人の出会い、友情は途切れる事無く続き共に大人になっていくのだが、それぞれの心の傷がまた、2人を引き裂くナイフとなって静かに横たわっていた。

いや〜、ひっさびさに大ヒット!著者はトリノ大学大学院博士課程に在学、専攻はもちろん物理。若干25歳頃に本書を上梓し、2008年の発売と共にベストセラー作家になったのだとか。いや、納得、なんである。
文章は簡潔で飾り気がなく、その文稚拙と取れなくも無いのだが、著者自身本分としている数学世界を緻密に描かれても興醒めだし、その複雑な要素を噛み砕く手法としては、物語をよりシンプルに語るほうが好ましいと言える。
物語は、心に深い傷を負った若者の話なのだが、無駄に陰鬱としておらず、かといってロマンスに偏ってもいない。このバランス感の良さも、文章の簡素さに原因があると思われる。魂で惹かれあっているようなマッティアとアリーチェの不器用な姿はいじらしくイライラさせ(笑)、2人が成長し、別々の人生を歩むかのような展開もまた・・・うまいなぁ、、、と感心してしまう。
こうした複雑な主人公だと、大抵は完璧に他人事的な不自然さが感じられるのだが、本作に関してはそうした不自然さが感じられず、もしかしたら自分達も持っているかも知れない心の闇のように協調できる。全体的に不自然な流れが無いのが凄い。複雑ではあるけれど、彼等の痛みがとても身近に理解できるのだ。
何しろ閉鎖的な主人公なので登場人物は少ないが、それぞれがしっかりと個性を持って描かれており、とりわけマッティアとアリーチェの人物像が当然のように際立ち、それでいて周囲にしっかり溶け込んでいる筆致も素晴らしい。
以前、その名も(邦題だけど)『素粒子』という映画を見たが、その時の主人公と、心の傷は別としてディティールが良く似てる。素粒子物理学者ってみんなこんな感じなのか?と。もちろん、著者の事を調べてみると、明らかに全然違うタイプだけど(笑)。
とにかく良かった、ラストがまた清々しくて。簡単に考えればロマンチックに持ち込んでとっとと決着をつけてしまっても良かったのだろうが、あのラストを持って、著者が描きたかったのは『運命の出会い』というロマンスではなく、『複雑な思春期を経た人生賛歌』なのだと思える。こうした希望を見出せる人生賛歌は、やはりイタリア文学(文化)の流れをしっかりと汲んでいるのかな?とも思えたり。
伏線も、多少ベタだが上手いこと処理されていて、これで処女作ねぇ・・・。頭が良いと何でも出来るのか?と思いたくなる(笑)。これほど優れた処女作を映画化して欲しい!と思うと同時に、だからこそ文章のままであって欲しいとも思うのだが、こちら映画化が進行中。ちなみに私の脳内では、マッティアはリッカルド・スカルマッチョだったのだが、これは大ビンゴ!我ながら深い洞察力と自画自賛(笑)。ちなみに親友はエリオ・ジェルマーノで決まりなのだが、こちらはまだ配役されていない模様だ。しかしこの美しい物語、イタリア製作なら相応しく美しく作り上げてくれることだろうと期待大。

素数たちの孤独(ハヤカワepiブック・プラネット)素数たちの孤独(ハヤカワepiブック・プラネット)
(2009/07/16)
パオロ・ジョルダーノ

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テーマ : 海外小説・翻訳本
ジャンル : 小説・文学

『イン・グッドカンパニー』
〔米〕IN GOOD COMPANY (2004年)
監督:ポール・ワイツ
脚本:ポール・ワイツ
デニス・クエイド/トファー・グレイス/スカーレット・ヨハンソン/マージ・ヘルゲンバーガー/デヴィッド・ペイマー/クラーク・グレッグ/フィリップ・ベイカー・ホール/セルマ・ブレア/フランキー・フェイソン/タイ・バーレル/ケヴィン・チャップマン

スポーツ雑誌の広告営業マンのダンは、会社が大手企業に買収されたために部長職を追われてしまう。新しく就任した上司は、買収企業の若手のホープ、若干27歳のカーターだった。カーターの実際の父親より年上というダンは、人情を大切にする堅物男、大してカーターは、業績第一の新人類だった。しかしカーターも離婚を経験し失意のどん底、そんな彼の救いとなったのは、なんとダンの長女アレックスだった。

親子ほども歳が若い上司を迎える羽目になった男が、そのジェネレーションギャップに喘ぎ、歳若いがやり手の上司と切磋琢磨するドタバタコメディーなのかと思っていたが、意外な展開だったな。この作品が宣伝されていた頃は、コメディ扱いだったように思ったが、違ったか?
ダンとカーターの目に見える衝突は余り描かれておらず、2人はなんとか歩み寄ろうとするのだ。立場的に辛いダンではあるが、家族のためにも全てを放棄することが出来ない。仕事第一のカーターにしても、高慢な男ではまるでなく、むしろ道理の分かった気持ちの良い青年なのだ。
コメディ色よりは遥かにドラマ性が強いのだが、いじればとことんドタバタに出来るプロット。ジャド・アパトー辺りが手にしたら、それこそとことんやれそうな・・・。そういう側面から見ればかなり『奇麗事』に感じてしまいそうな作品なので、そこが残念かな。
個人的には大変満足。コメディやロマンスというよりも、歳の差を乗り越える男の友情の話。昨今では似たような状況が多くある社会だろうが、仕事ではどれほど上位に立とうとも、『人間』としては年功序列は否めない。
ダンとカーターという主役2人の人間像が少し間抜けで憎めない、曰く人間臭い描き方だったのも良かった。カーターはダンから『人生』のちょっとした世界を学び、ダンはカーターから何かを学んだとは言えないが、望んでいた息子そのものを手に入れる事ができたのではないかな?
単なるロマンスに終らせないように捻られたラストだったと思うが、そこがあざとく見えなくも無い。かといって、あれ以上のラストは望めないかな?という感じ。すみません、どっちつかずで(笑)。
ロマンスやコメディに頼らずドラマよりになったのであれば、もう少し盛り上がりが欲しかったか?と思いつつ、期待しないで観れば意外な良作に出会ったと満足できそうな作品・・・、褒めてます、本当に、褒めているんです!!!

イン・グッド・カンパニー [DVD]イン・グッド・カンパニー [DVD]
(2006/10/12)
デニス・クエイドスカーレット・ヨハンソン

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ぽすれん『イン・グッドカンパニー』紹介

テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

『さよなら。いつかわかること』
〔米〕GRACE IS GONE (2007年)
監督:ジェームズ・C・ストラウス
脚本:ジェームズ・C・ストラウス
ジョン・キューザック/シェラン・オキーフ/グレイシー・ベドナルジク/アレッサンドロ・ニヴォラ/マリサ・トメイ/メアリー・ケイ・プレイス

ホームセンターで働くスタンレーには、現在のところ娘2人と暮らしていた。かつて所属していた軍で出会った妻は、イラクに出征していたのだ。そしてある朝、その妻グレイスの訃報が届く。失意に沈むスタンレーだが、娘たちに事実を伝えなければならない。長女ハイディばしっかりしているがまだ12歳、無邪気な次女ドーンは8歳だ。なすすべも無く家を出た3人は、ドーンの希望を受けてシカゴからフロリダの遊園地に向けて衝動的に旅に出る。

とても静かな物語。静かな中に、反戦という大義の他に、もっと身近に、人として生きる兵士の姿、その家族の苦悩をしっかりと反映させていた。軍隊に希望を見出し、その夢を軍隊によって砕かれた寡黙な男スタンレー。信じるものから拒絶されたという事実だけでも辛いのに、信頼の置けない無為な戦いによって最愛の妻をも奪われる。
それでも彼の中にはきっと、揺らぐことの無い忠誠心があったのだろう。だから余計に、妻を求める気持ちに整理がつかない。娘たちに対する軍隊的な規律、しかし溢れんばかりの愛情、そして母の死という事実に対する憐憫。とにかくあらゆる苦悩を一身に背負ってしまったスタンレーが、なすすべも無く留守電に向かう姿が余りに切ない。
最後に留守電に向かったとき、スタンレーから溢れ出る本心がまた・・・もう・・・。そんな厳格で寡黙で不器用極まりないスタンレーを、J・キューザックが好演。この役のためにわざと太ったのか、最近ちょっぴり太り気味だったのがさらに膨張したのか、その辺は突き詰めないで置こう・・・うん。
娘2人もまた良い。12歳らしくおませで、時折妙に子供らしい素顔を見せるハイディ。ただひたすらに無邪気なドーン。飾ることの無い作品なので、演技の本質が浮き彫りになるような本作で、子供らしさを存分に活かした良い配役だったと思う。
演出がまた良い。静かで鷹揚は無いが、じわじわと物語の真意が伝わってくる。それによって生まれる感動は、遂に辿り着いた遊園地での穏やかな一日と、それに続く帰途で最高潮を迎える。特に説明らしいことは余り無いのだが、スタンレーの人物像が徐々に固まっていく様は、脚本の上手さと役者の表現力の素晴らしい科学反応だったのだろう。
素晴らしい兵士、国に貢献した英雄。失ったのはそんな存在だったのかも知れないが、また一方で、優しく大切な母、愛しそして愛された一人の女性であり妻だった。『お国のために』、そんな言葉は家族には向かない。そこにある普通の、そして深く純粋な『人間』に対する悲しみを秀逸に描いた作品だった。

さよなら。いつかわかること [DVD]さよなら。いつかわかること [DVD]
(2008/11/07)
ジョン・キューザック

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ぽすれん『さよなら。いつかわかること』紹介

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ジャンル : 映画

『レイチェルの結婚』
〔米〕RACHEL GETTING MARRIED (2008年)
監督:ジョナサン・デミ
脚本:ジェニー・ルメット
アン・ハサウェイ/ローズマリー・デウィット/ビル・アーウィン/トゥンデ・アデビンペ/マーサー・ジッケル/アンナ・ディーヴァー・スミス/アニサ・ジョージ/デブラ・ウィンガー/ロビン・ヒッチコック/シスター・キャロル・イースト/ボー・シア

姉のレイチェルの結婚式のために、更正施設から一次帰宅を許されたキム。麻薬に溺れ、一家を不幸な事件に巻き込んでしまった彼女は、自分を腫れ物のように扱う家族に憤っていた。しかも姉のレイチェルは、結婚に関する様々なことを隠しており、キムの憤懣は募るばかり。一方家族側も、問題児のキムの態度にハラハラしながら、徐々に彼等の被っていた傷心の皮膜を剥がして行くのだった。

なるほど!こういうことだったか!と(笑)。最後まで観て、ちょっと考えて、なるほど上手いと納得した。最初は、手持ちカメラのブレブレの映像が煩わしかったが、このホームビデオさながらの映像が、ある部分では必要以上に活きていた。
レイチェルの結婚が、まるで親戚のもののように身近に感じる。そして引き込まれるように、彼等の抱える『問題』までも、余りにも身近に迫ってくるのだ。結婚式の慌しさ、高揚感、反比例する家族の問題の根深さや悲壮感が、小奇麗に加工されていないフィルムの通り、剥き出しになって訴えかけてくるようだ。
キムは必死に、家族に『セラピー』をしようとしていたのではないだろうか?問題を直視しようとせず、悲劇の張本人キムを労わろうとする家族。そうする内に、家族の心の傷は深くなり固まってしまうのだろう。さらにはキム本人も、罰せられることを望んだのではないだろうか?まず罰せられなければ、贖罪は完成しないとでも言うように。だから母親の態度は、キムにとっては辛かったかも知れないが、未処理で終わってしまったのはとても残念。あれでは母親も、単に矮小な人間としか見えないのだが、もしかしてそれが狙いか?
大きな悲劇的な事故を根底に、その罪に対する家族のありようを描いた作品だ。それぞれの抱える問題、心の傷などが次第に浮き彫りになって行く様は痛々しいが、結婚式という華やかさがその問題を適度に緩和していく。
完全に克服は出来なかったが、ラストはとても清々しく、希望に溢れる展開だ。姉妹の絆というのも、とても微笑ましいなぁと思った。姉妹は親友!的な描写も多々あるが、この2人のように、どこかで切れない絆を保っているだけの2人もいる。何しろウチがそうだから(笑)。そんな2人が、大きな問題を乗り越えて互いへの愛情を確認し、静かに映画も幕を閉じた。秀逸な締め方だと個人的には大満足。
さてさて、難しい役キムを演じたA・ハサウェイ。私は好きなんです!『ブロークバック・マウンテン』での印象的な瞳の演技を観て以来、演技派という印象を持つに至った彼女。本作でのアカデミー主演女優賞ノミネートには納得だ、しかし残念ながら、受賞に至らなかったのも納得なのだ。まぁ間違いなく、いずれ受賞することだろう。

レイチェルの結婚 [DVD]レイチェルの結婚 [DVD]
(2009/11/04)
アン・ハサウェイローズマリー・デウィット

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ぽすれん『レイチェルの結婚』紹介

テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

『マイ・ファミリー/遠い絆』
〔仏〕NE T'EN FAIS PAS JE VAIS BIEN (2006年)
監督:フィリップ・リオレ
原作:オリヴィエ・アダム
脚本:フィリップ・リオレ
メラニー・ローレン/カド・メラッド/イザベル・ルノー/ジュリアン・ボワッスリエ/アイサ・マイガ/クリストフ・ロシニョン

1ヶ月のスペイン留学を終えて帰国したリリは、双子の兄ロイックが数日前に家出したと知らされる。何も心配していない様子の両親に腹を立て、連絡の無いロイックを心配する余りに病気になってしまったリリ。そんな彼女の元に、ロイックから手紙が届き始める。兄の家出をきっかけに、自立の道を歩み始めるリリ。学校も辞め、都心に出て1人暮らしを始める。ロイックは父親と諍いをしたために家出をしたと信じるリリだったが、実はその裏に、意外な秘密が隠されていたのだった。

う〜ん・・・、なんだか・・・むつかしい家族・・・。両親の取った行動は十分に理解出来るものの、劇中のトーマスの1言に尽きる。『おかしいですよ』。
娘を心配する余り、子供達を愛する余り・・・、とても良く分かるし、それゆえに彼らが取った行動が、どれほどの苦悩を彼等に引き起こしていたか?真実を知った後にその苦痛にいささか胸が痛かった。ただし、その原因を考えると、、、やはりおかしい。特に父親の自虐的な後悔、娘に対する密やかな助言、辛過ぎますねぇ、お父さん。
もちろん、両親のある決断と行動がなけれ成り立たなかったお話。その行動が個人的に理解したくない類なだけで、その行動から生まれる展開は非常に重みもあって上手いと思える。リリの急激な心の変化、両親に対する思いの変化。そして、兄に対する気持ちの変化。推測ではあるが、ラストでリリは全てを知ったのじゃないかな。そして両親を許し、無言で全てを受け入れたのでは?とにかくね、両親が切な過ぎて、何だか可哀想だったのだ。
だって結果的に、あのままではロイックもリリも結局は不幸になる。どこかで真実を告げるなら、早いに越した事は無いと思うのだ。言い辛い真実であれば尚のこと、家族なのだから正直に話して、支え合うべきだと私は思う。美しい家族愛というよりは、偽善の充満した形だけの家族になってしまう。その始まりを見てしまった思いだ。
仮に、それが本作の意向だとしたら、う〜ん・・・だったら何故、そんな救いようの無い話を描いたのか?と。ラストの展開からは、僅かな希望と愛情が映し出されていたような気がしたので、これはやはり、私の受け止め方の違いと言えるのかも知れない。

マイ・ファミリー/遠い絆(ユニバーサル・セレクション2008年第11弾)【初DVD化】【初回生産限定】マイ・ファミリー/遠い絆(ユニバーサル・セレクション2008年第11弾)【初DVD化】【初回生産限定】
(2008/11/13)
メラニー・ロランカド・メラッド

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ぽすれん『マイ・ファミリー/遠い絆』紹介

テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

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hiyo

  • Author:hiyo
  • たった二つの趣味、映画と読書を中心に、日記を書いてみたいと思います。
    最近、自分の時間を充実させたいな、と結構真剣に思っていたりして。文章を書くのも結構楽しいし、誰かが通りすがりに読んでくれたら、嬉しいかな、とか思っている。
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