2008.05.16 Fri
『灯台守の話』
幼いシルバーは母と2人暮し。崖に斜めに突き刺さった家に暮らしていたから、母は滑り落ちて亡くなってしまった。孤児となったシルバーは、灯台守のピューに引き取られた。灯台には話が付き物と、ピューが語ってくれる幾つもの話。次第にシルバーは、自らも語る事を憶えていく。とりわけピューの話で興味深いのは、町の司祭だったダークの話。二重生活を送るダークの、心の闇を覗き見るシルバー。果たして、彼女がダークの人生に見たものとは?
本屋で偶然見かけて、粗筋を読んでみると中々面白そうだったので借りてみた。私の固定概念として、灯台はドラマ性があるのだ。なんかこう・・・灯台の存在意義が、その外観から与える印象が、特異な生活様式、あらゆる要素何もかもがドラマに繋がる気がする。灯台自身が多くの物語を生み出すとは常々感じて来たし、灯台は、かなり使い勝手の良いアイテムだと思う。だから『灯台』絡みの作品は、何でも大抵面白いはずだという、私の『灯台理論』。
この作品は、雰囲気が3つのパターンに別れていたように思う。まるで児童小説のような語りと精神性を持ったシルバー部分、ゴシック調で主人公の心理状態を深く抉り、物語調の強いダーク部分、この2つの物語を繋ぐのがピューと灯台の存在だ。そして時折、著者自らの語りのような、文学的雰囲気の強いパートが差し挟まれる。何となく、著者の気持ちのままに、描きたいように描いたと感じさせるが、それでも、絶妙なバランスでまとまっているところが凄いと思う。
まず第1には、どん底からの再生と誕生の物語だ。主人公シルバーは何も持たず、何も与えられず、結果的に文字通り『自らの力』だけで大人になっていったと言える。シルバーが与えられたのは唯一、『物語る』ことだった。読書中何度も、この話は『著者自身である』と思えた。そしてこの物語の中で、灯台は様々な役割を担い、あらゆる事柄に繋がるものとして形を変える。
そして2種類の、『愛すること』という主題が含まれている。バベル・ダークという二重生活者の、ただ純粋なる男女間の愛。シルバーが得る事になる、人生における様々な『愛』。愛し方と、その愛の行方を追う姿勢の違いが、交差し、突き放されつつ語られるシルバーとダークの物語の、結末の大きな違いを導き出したのだろう。
私は単純だから、いや違うか、単にロマンチストだから(笑)、ダークの物語により興味を惹かれた。ダークの持つ二面性、それゆえに人間らしいと思える男ダーク。奇麗事ばかりではなく、シルバーのように屈託ないままでもいられない。あらゆる人に備わっているだろうこの二面性を、率直なまでに表現してしまったダークの苦悩、なんとも魅力的な男に感じた。
最も私の心に強い印象を残したのは、その言葉遣いの上手さだ。流麗と言うほど華美ではなく、女性的と言い切るほど甘ったるくも無いのだが、非常に綺麗な言い回しをする作家だ。単純な描写に於いても、時折はっとするほど印象的な文章に仕立てていて、文学作品に特有の回りくどい描写を感じさせない、私にしては珍しい感想だが、非常に音楽的な文章を書く人だと感じた。
不協和音から始まって、徐々に融和を見せる交響曲のような流れ、最後には主旋律だけが静かに残り、爽やかさと一抹の切なさを残す、印象的で綺麗な結びへと運んでいく。短いが満足の行く時間を過ごせた気持ちになる、優れた作品だった。
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| 読書【ドラマ】 | 23:45 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑
















