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読書はライフワーク、映画鑑賞は人生の潤い、旅行は趣味にしたいなぁ♪日記は日々の覚書き。

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『卑しい肉体』

2013/05/02 22:28 ジャンル: Category:読書【ドラマ】
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イーヴリン・ウォー 著/ 横山茂雄・佐々木徹 責任編集/新人物往来社
アダムはフランスで自伝を書き上げ、ようやく故郷イギリスへ戻ってきた。しかし税関で自著を取り上げられ、入るはずの原稿料どころか前金の返済まで迫られる。なんとか窮地を切り抜けたものの、はずみで婚約したニーナとはこの先危うい状態だ。夜な夜な遊び呆ける『陽気な若者たち』に交じって、人生をたゆたうように生きるアダムは、ゴシップ記事のコラムニストとなって若者たちの姿を追う。しかし時代は移り変わり、世界は新たな戦争へと踏み出して・・・。

イーヴリン・ウォーとくれば、そりゃ読む(笑)。本作の雰囲気は、『大転落』と『回想のブライズ・ヘッド』の中間ぐらいね。P・G・ウッドハウスを崇拝していたというウォーが、ウッドハウスの世界に独自の切り口で迫ったという雰囲気が無いでもない。国書刊行会のウッドハウスシリーズの中だったと思うが、E・ウォーが書いた『ウッドハウスもどき』を読んだことがあるが、悲しいかな出来の悪い模倣に終わっていたように感じたものだが、そもそもこの方、作風がウッドハウスとはだいぶ違うのだから仕方がない。逆にウッドハウスには、『回想のブライズ・ヘッド』のような作品は書けなかったろうと思われる
更にウォーを擁護するなら、彼の生きた時代にあると言えるだろう。陽気な貴族社会は鳴りを潜め、戦争につぐ世知辛い世の中がお出迎えした時代。かつての陽気さも現代の万遍ない裕福さも無い時代とあっては、ウッドハウスを気取るのも辛いだろう。
そんな微妙な次期を巧みに切り取ったと言える本作。貴族社会の栄華の残り香を必死に掻き集めようとする若者たちの陽気さには一抹のもの寂しさがつきまとい、話題とも言えないゴシップにうつつを抜かす世間の人々。気楽に世を渡っているように見える主人公アダムにしても、陽気さに成り立つ日和見主義とは一線を画し、どこか必死に気取らない様を演じているように見える。
古き良き時代と現代の、いわば谷間のような世代をすくい取ったような本作。後書きの解説によれば、ウォー自身も山あり谷ありを乗り越えつつ書き上げた作品のようなので、いささか支離滅裂に感じる全体の雰囲気も、さもありなんという感じ。その先に危険や怠惰が待ち受けていると分かっていながら、若いということが当たり前にやめられない人々の姿。この危うさは実際の出来事がどうであれという以前に、抽象的な部分でまさに『若さ』そして『青春』なんである。飄々とした独特の語り口といささか奇想天外な物語ではあるが、これもまさしく『青春小説』に他ならない。

卑しい肉体 (20世紀イギリス小説個性派セレクション)卑しい肉体 (20世紀イギリス小説個性派セレクション)
(2013/03/14)
イーヴリン・ウォー、大久保 譲 他

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『ヴァレンタインズ』

2013/05/02 22:20 ジャンル: Category:読書【ドラマ】
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オラフ・オラフソン 著/岩本 正恵 訳/EXLIBRIS
幸せなはずのカップルを襲った、休暇旅行の雪山での小さな事故、幸せな花嫁になるはずの娘と、アメリカ男性の婿を巡る親子の話、突然の別れを告げられた夫は、別れの理由として告げられた妻の事実を受け入れられないでいた。故郷アイスランドからアメリカへ渡り、幸せな結婚をしたはずの女性は、落ちていく夫から離れて一人パリへと旅立つ。1月から12月、恋人も夫婦も、愛する物たちは日々物語を紡いでいる。季節ごとに縁取られた12の愛の物語。

これって結構評判がよろしく、だからこそずっと読みたいと思っていた。タイトルと恋人達の話という紹介、様々な人が語る透明感があるなどという感想から、実に勝手に『温かい』物語を想像していた。結論としては、ああ・・そうきたのねと(笑)。私は至極単純なタイプだ。物事はそれぞれがもつステレオタイプな状態に収まっていて欲しいと時折思う。そして、私が思う恋愛のステレオタイプとは、やはり心が踊るような楽しいものなのだ。本短篇集に収められているもののほとんどが、アイスランドと聞いて思わず連想してしまうような、ピリリとした寒々しさがある。確かに、その寒さゆえに透き通った空気や、雪で覆われて輝く静謐な風景のように、語り口自体はとても美しいものがあると思う。ああ綺麗だなぁと、『読む』のではなく『眺める』ような感覚でな少々遠巻きに観察してしまう感じ。物語を1つ1つじっくり受け止めてしまったら、私的にはなんだか辛すぎる。人との付き合いは山あり谷ありが当然だけど、その谷の部分をそんなに掘り下げなくても・・・なんて(笑)。作品としては高い完成度だと思うが、個人的にはさらっと目を背けておきたい部分なものでして(笑)。

ヴァレンタインズ (エクス・リブリス)ヴァレンタインズ (エクス・リブリス)
(2011/04/06)
オラフ オラフソン

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『ナツメグの味』

2013/03/28 21:03 ジャンル: Category:読書【幻想・奇想・奇譚】
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ジョン・コリア 著/垂野創一郎 他 訳/ KAWADE MYSTERY
彼らの職場にやってきた新人は、おとなしく何かを秘めた雰囲気だった。彼の持つ意外な過去とは?マネキンに本気の恋をした青年の数奇な運命とは?少年には見えない友達がいた。父親はそんな息子に現実を教え込もうとするのだが・・・。アイルランドの旧家には、美しい馬に乗った美しい女性が住むという。壜に詰められた不可思議な物たち。中には絶世の美女や魔法使いなんてのもいて?滑稽な話、怖い話、真面目な話、色々あるけれど、どれも少し、不思議な話。

ナツメグの味/特別配達/異説アメリカの悲劇/魔女の金/猛禽/だから、ビールジーなんていないんだ/宵待草/夜だ!青春だ!パリだ!見ろ、月も出てる!/遅すぎた来訪/葦毛の馬の美女/壜詰めパーティ/頼みの綱/悪魔に憑かれたアンジェラ/地獄行き途中下車/魔王とジョージーとロージー/ひめやかに甲虫は歩む/船から落ちた男

紹介に『サキのような・・・』云々とあったので借りてみたが、全然違うじゃん(笑)。いわんとすることは分からなくもないのだが、簡単に言ってしまえば、サキはもうちょっとというか完全に地に足はついていたわけで(笑)。
本作の短編には、死神、妖精、悪魔、幽霊などなどが登場する。もちろん普通の人々だけが出てくる物語もあるのだが、大方の終わりはピリっとした恐ろしさがある。サキはもうちょっと温かいというか、ね?捻った面白さという点は確かに当てはまるが、それを言ったら大方の著名な作家の作品は当てはまってしまうのでは?なんて。
とは言え、十分好みの作品ばかり。世界各地を転々とした作者だからか、とらわれない舞台設定が面白い。ヨーロッパの各地の特徴を上手く生かした不可思議な物語もたくさんあって面白い。もちろんアイルランドも登場し(笑)、まるでアイルランドの作家が書いたのかと思うほどの重厚な霧をまとったような短編が紡がれる。
本当に背筋がゾッとするような結末もあるが、『魔王とジョージーとロージー』のように滑稽な作品があったり、『地獄行き途中下車』のように洒落た面白さの作品もある。どちらのテイストが良いか甲乙つけ難い。もちろん個人的には楽しい話の方が好きなのではあるが、『夜だ!青春だ!パリだ!見ろ、月も出てる!』のような素っ頓狂な(笑)作品も結構好きだし、『異説アメリカの悲劇』のように、少々人を喰ったようなサスペンス仕立ても面白いと思う。
多才な作家なのに、日本では余りまとまって読めないのが至極残念な作家なんである。とは言え、まだ何冊かは楽しめそうなので、それは追々その内に。

ナツメグの味 (KAWADE MYSTERY)ナツメグの味 (KAWADE MYSTERY)
(2007/11)
ジョン コリア

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『 俺の職歴 ゾーシチェンコ作品集』

2013/03/28 19:58 ジャンル: Category:読書【コメディ・その他】
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ミハイル・ゾーシチェンコ 著/ロシア文学翻訳グループクーチカ 訳/ 群像社ライブラリー
革命で社会主義となり、階級が消えて労働者が国を作る・・・はずのロシア社会。同士と共に底辺階級で働く人々は滑稽にペーソスたっぷりに日々を生きる。子守の子供をだしに物乞いをする老女、馴れないアジ演説で混乱を呼ぶ男、淑女気取りの女性に四苦八苦する紳士気取りの労働者、時は混乱のロシアで、人々は太く逞しく可笑しく生きていく。

こういう作品をただ「面白い」と言って読める世界だったら良かったのに。ってやはり思う。ロシア版ウッドハウスかと思うほどの滑稽さなのに、系譜はカレル・チャペックなんだよねぇ。この活き活きした切れ味の良い作品を書いた人が、のちにその舞台となった愛着感じる国にメッタ打ちにされてしまうなんて・・・口惜しいという以外に何を言えと?
社会主義の言論の制圧に翻弄されたこうした作家の足跡を辿ると、ウッドハウスがナチ擁護として弾劾された事実なんて、なにやら取ってつけたようにすら感じてしまう。
本作の中に詰め込まれた陽気さと労働者階級の人々に対する愛情、ただ楽しく読むことが、作者への最高の賛辞になると私は信じたい。今ロシアは変わった、これからも変わり続けて行くだろう。今の世界を作者が見て、新たな小咄を思いついてくれたらと思う。
そして人々は変わらない、愛すべき姿があるはずだ。出来れば私は、ゾーシチェンコの世界で生きる労働者でありたいと思う。最高の短篇集に出会えて感謝です。

俺の職歴―作品集 (群像社ライブラリー)俺の職歴―作品集 (群像社ライブラリー)
(2012/03)
ミハイル ゾーシチェンコ

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『シティ』

2013/03/05 21:18 ジャンル: Category:読書【ドラマ】
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アレッサンドロ・バリッコ 著/草皆 伸子訳/白水社
天才少年グールドは少々浮世離れしたシャツイ・シェルという15歳年上の女性とひょんなことから出会う。グールドの友人は巨人ティーゼルと無口?なプーメラン。シャツィを家政婦として雇ったが、軍人の父親は遠く離れた基地にいる。彼の住まいは家と大学。シャツィの夢は『ウェスタン』。クロージングタウンを舞台とした最高に格好良いウェスタンだ。グールドはトイレでラジオの中継を真似、天性の才能を持ったボクサー・ラリーの顛末を物語る・・・。

いや〜、久々に面白くて、ページをめくる手を止められなかった。A ・バリッコと言えば、少々難解という思い込みがあったのだが、良く考えてみれば『海の上のピアニスト』は小説、映画共に甲乙つけ難い面白さだったし、『絹』に関してが映画のみだが、世界観は大変好みだった。
面白く無いはずは無かったんだよね。これほどの厚みの本をもう夢中で読みふけり、それでも終わってしまうのが惜しいと思った。憎らしい程の才能とそれだけにとどまらない完成度の高さ。
3つの物語が交錯するのだが、どれをとっても一級品の面白さがありながらそれが1冊にまとめられている。なんて贅沢・・・そしてなんて勿体無い!シャツィの語る『ウェスタン』は罪や運命を軸にしてまさに埃っぽい砂塵が舞い上がるような男臭さ。ラストの格好良さは胸がじんじん痺れるほどだ。
グールドが語るラリーの物語もまた格好良い、そして物悲しく刹那的。それぞれの物語をシャツィとグールドが語ることにも意味があるのだが、そこを切り離しても作品としての価値は高い。作中作品とは言い切れない質の高さなのだ。
そして中心となるシャツィとグールドの物語。これもまた・・・切なくておかしくて、ずっと続いて欲しかったのにあっけなく放り出されるようなラストでなんとももう・・・。
グールドが辿り着いた先は驚くような場所だけど、そこにこそ彼の心の平安があったのだろうね。少々殻にこもってしまった印象が無いではないが、何しろ賢い少年のこと、その賢さと心が溶け合った時、彼はきっとそこから旅立って行くのだろう。
イタリア人が描いたアメリカの物語だが、随所随所にヨーロッパが潜んでいる。アメリカを知らない私だが、思わずニヤリとさせられること度々。グールドが辿り着いた先もヨーロッパ的なのだけど、ここにそのペーソスを持ってくるか!と最後にニヤリ。
グールドが決別できなかった親友との絆に、切なさを感じつつなぜか暖かさを感じてしまった。ここにシャツィがいたら?完璧な4人組のはずだったのにそこから旅立った意味とは?う〜ん、面白く読めて最後まで考えさせられる、小説にあるべき完璧な形がここにあったのか!という感じだ、ありがとう!

シティシティ
(2002/01)
アレッサンドロ・バリッコ

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第85回アカデミー賞

2013/02/25 20:52 ジャンル: Category:2012年☆日記☆
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http://oscar.go.com/ 

アカデミー賞勝手に総括。良いの別に誰にも求められていなくても、書きたいだけwww。
獲ったね〜『アルゴ』。ちなみにあたしの大本命はこいつ。前作『ザ・タウン』を見た時に、いつかアカデミー獲っちゃうんじゃないの?と感想に書いたものだが、まさかこれほど早く獲っちまうとは!惜しむらくは監督賞がアンちゃんに持っていかれたことなんだが、『ライフ・オブ・パイ』の評判の高さと高潔な噂は聞き及ぶところなので納得。いい加減ラッセル監督に栄冠を?という気がしないでも無かった。ベン・アフレックが好き!となぜか大声で言えない雰囲気が根強いが、あたしゃこの方の才能に惚れてます。
大声で言えないっちゃあもう1人、アン・ハサウェイ。メジャーになりかけの頃は『目がデカイだけの大根役者』とか日本で言われ、『ブロークバック・マウンテン』の時も『なんであいつが?』的な声も多数聞いたけど、まさにこの作品で、この人デカイ女優になりますよ、とあたしは確信したんでした。あのデカイ目の動きだけで心の揺れ動きと確信を表現した秀逸なワンシーン、未だ忘れられないシーンの一つです。
さて、大方納得の仕上がりだった今回のアワードですが、ジェニファー・ローレンスとクリストフ・ヴァルツはどう?ジェニファー・ローレンスは単に、周囲が大騒ぎするほど良い女優と思っていないからで、あの無表情と下膨れぶりがなんとも・・・良いか?クリストフ・ヴァルツは稀有な役者だと思うけど、前回の受賞が余りに記憶に新しい。ってことでやはりどうかな?と。
主演女優はざっと見渡してみて確かに『これ!』という対抗馬が居ない。近年の名声と可能性を考えたら確かに彼女だよね。しかし助演男優は?アラン・アーキンがいるでしょ〜が!なんでここ外れちゃったかな(笑)。
その他ざっくり見てみると、確かに『本命不在』というのは分かる。全体的に小粒な作品が多いので、『その他の賞』ってやつが艶やかさに欠けるよね(笑)。ただし主要部門は堅実かつ大作が揃っていると思うので、近年の『なんでこの作品?』的疑問は感じなかった。
ただここ最近ずっと感じていたのだが、才能豊かな人が多いはずのハリウッドなのに、ノミネートも受賞も顔ぶれが似ていること。クリストフ・ヴァルツしかり、今回3度目の受賞となったダニエル・デイ=ルイスしかり。ただし彼の場合は、できちゃうんだからしょうがない(笑)。結局のところ『良くできた人』に与えられる賞なのだから仕方ないと言えばそれまでか?
ただし、アカデミーに愛される役者というのはいて、それはハリウッドに愛される役者とは別。例えば今回のヒュー・ジャックマン、ジョニー・デップ、ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、代表格はレオナルド・デカプ〜。そりゃ俳優休業しますわな(笑)。
アカデミーに愛される理由は明確には解らないが、アイドル的な人気の無い名優なんだろうな?とは思う。だから女性はその線引きが明確に解らないのだけど、この先もヴァンパイアの2人とかハリー一族とかは縁遠いだろうなとか、思うわけです。
反対にフィリップ・シーモア・ホフマンなんかは愛されまくり。監督もやはり、堅実な方が好まれるよう。今回ベン・アフレックがノミネートすらされなかったのはその辺に要因があるんでしょうかね?あくまでもアカデミー的な格を保ちたいのか?それはそれで良いのだけど、そういうのはヨーロッパ各地の映画賞にお任せして、思いっきりハリウッド的でも良いじゃない!なんて思った今回のアワードでした。

『 居心地の悪い部屋』

2013/02/19 22:30 ジャンル: Category:読書【幻想・奇想・奇譚】
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岸本佐知子 編訳/ ブライアン・エヴンソン 他著/角川書店
犯人に従う死を前にした男、少女の頃の痣の思い出。戦場で頭を撃たれた友との時間、見知らぬ男に助けを求めたカップルの男の憤慨。深夜、寝ている間に部屋にいるのは?どこか変、何かがおかしい?唐突に始まって唐突に終わる奇怪な物語。日常か非日常か、果たして?

『ヘベはジャリを殺す』ブライアン・エヴンソン/『チャメトラ』ルイス・アルベルト・ウレア『あざ』アンナ・カヴァン/『来訪者』ジュディ・パドニッツ/『どう眠った?』ポール・グレノン/『父、まばたきもせず』ブライアン・エヴンソン/『分身』リッキー・デュコーネイ/ 『潜水夫』/ルイス・ロビンソン/『やあ! やってるかい!』ジョイス・キャロル・オーツ/『ささやき』レイ・ヴクサヴィッチ/『ケーキ』ステイシー・レヴィーン/『喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ』ケン・カルファス

これは居心地が悪い!なんだろう、不可思議で奇怪な物語は好きなのでこれまでだいぶ読んで来たとは思うが、本作に収められた作品たちはそのどれとも違う、というか、個々に見ればそれなりに受け止められるのかも知れないが、こう集団でまとめられると・・・休む暇も無いという感じ(笑)。
冒頭の『ヘベはジャリを殺す』からしてもう・・・。物語はタイトルのまま。ある意味では特に捻りも無く、ヘベはどうやらジャリを殺すらしいのだ(笑)。思わず目を背けたくなるような描写に加え、なんとも居住まいの悪いような落ち着かなさを感じる作品。
中には『潜水夫』や『ささやき』、『やあ!やってるかい!』のようなサスペンスタッチの割合と普通の物語もあるのだが、連続して読む逼迫感のお陰で妙な解釈をして薄ら寒くなる。ああ、相乗効果って恐ろしい・・・いや、狙い通りなのか?
ラストの『喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ』などは急に毛色が変わった気がしたが、不条理という線でつながっていると思えば多様な作品を楽しめる短篇集のラストとしては相応しいのかな?
個人的には『チャメトラ』が一番好きかな。不可思議な中に哀愁と焦燥と、不思議にもラストには密かな希望が隠れている気がして、短いながらも深みがある作品だった。J・C・オーツは以前から読みたいと思っていたので、意外なところで短編『やあ!やってるかい!』を読めて良かった。筆致も普通の作品らしく、それでいて何が起こるのか?どうなるのか?という疑問を持たせ、一気にラストまで読ませる展開はやはり見事だなと思う。
それぞれが本当に短いのであっという間に読み終わってしまうが、このぐらいのボリュームが丁度良い。これ以上盛り沢山だったら少々鬱にでもなってしまいそうな作品集だった(笑)。

居心地の悪い部屋居心地の悪い部屋
(2012/03/27)
岸本 佐知子

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『手紙』

2013/02/14 21:26 ジャンル: Category:読書【ドラマ】
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ミハイル・シーシキン 著/奈倉 有里 訳/ CREST BOOKS
若いワロージャとサーシャは恋人同士。ワロージャは1900年の中国の戦場へ赴き、サーシャは現代のロシアに残る。2人は手紙を交わし続け、それぞれの日常と想いを綴っていく。しかしなぜ?時を超えた2人の恋は褪せること無く、ワロージャは戦場で過酷の日々を生き、サーシャは様々な『人生』の問題に翻弄されていく。結婚や流産を乗り越えて成長するサーシャと、苛烈な戦場で濃密な瞬間を生きるワロージャ、お互いが再び出会うその日まで・・・。

なんで時代が違うんだ?一体いつ2人は一緒だったんだ?どうやって手紙は届いているんだ?という疑問は誰もが感じるだろう。そして、ほとんど全ての読者が、途中からそんなことはどうでも良くなっていくだろう。
若く無邪気な恋人だったワロージャとサーシャは、一方で戦場という過酷さによって急速に、一方では長い人生によって緩やかに成長していく。それでもお互いにかける想いは色褪せることなくとうとう最後には・・・ふふ、まぁ言わぬが花ですな。
とは言え、あのラストは?個人的には『人生のその先』なのではないかと思ってしまう。雪で生まれた娘、亡くなったはずの父親、何もやることのない穏やかな休日、幻想的な語り口に変わるワロージャの手紙・・・。ワロージャは戦争によって命を落としたと考えられるが、サーシャはなぜ?とは思うのだが、それでも2人がようやく出会うはず旅路には、どこか霞がかかったような幸福感が漂っている。
読んでいるこちらもいよいよか、とうとう会えるのね!と胸が高鳴る思い。一応、腐りかけでも女ですから(笑)
あとがきにも、主人公達の成長を描いているとある。当たり前に人生によって成長するサーシャと、戦場で成長するワロージャ。ロシアが隠したい戦争の話であるとも言っている。幾つもの側面を持つ本作は、戦争を語るシリアスな物語であり、愛し合うカップルの時間を追った恋愛物語であり、1人の女性の人生の物語でもある。明確な区別は付けられないが、読後はそれらが絶妙に相まっているようでなんとも不思議な感じがした。
普通なら3つに分けても良いような物語を、ワロージャとサーシャの時空的に隔てられて不思議な恋愛を軸にして巧みにまとめている。普段は難解な作品が多いと言われる著者の、その難解さが大衆的に生かされた作品なのではないだろうか?

手紙 (新潮クレスト・ブックス)手紙 (新潮クレスト・ブックス)
(2012/10/31)
ミハイル シーシキン

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『リスボンへの夜行列車』

2013/02/13 21:41 ジャンル: Category:読書【ドラマ】
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パスカル・メルシエ 著/浅井 晶子 訳/ 早川書房
大学中で敬意を集め、地味ながら人気のあったライムント・グレゴリウスは、橋の上である女性と出会う。ポルトガル人らしきその女性に導かれるように古書店へ行ったグレゴリウスは、アマデウ・デ・プラドという男が書いた書籍に出会う。ほとばしるような感性に裏打ちされた精密な文章に強烈に惹きつけられたグレゴリウスは、それまでの完璧な人生を捨てて1人ポルトガルへと向かう。アマデウの足あとを憑かれたように辿るグレゴリウスは、ますますアマデウという人に魅入られ、同時に彼の中に眠るこれまでには無い『何か』に気付きはじめるのだった。

いや〜、頑張った、読むのにどれぐらいかかったろう?って、そういう感想(笑)。言葉・言葉・言葉の奔流で実際の重さ以上に重さを感じた。実際もだいぶ重いのだけど(笑)。
自分の考える通りに、堅実に人生を重ねて来たグレゴリウス。勉学に全てをそぎ取られて冴えない風貌で、娯楽というものからはかけ離れ、なおかつ自らもその堅物ぶりを良しとしていたような男だ。しかし面白いと思うのは、普通若者からは疎んじられるタイプの初老の学者が、大学内では大変な人気者。とは言え、本人に準えるように、その人気は深い敬愛を持って静かに染み渡っている。
派手さは無いが、誰もが望む人生。それを捨ててしまう。1人の女性ととある1冊の本によって。最初は激しく『勿体無い!』と思ったのだが、後に彼は帰れるのだと思った。長年築き上げた敬愛は、そう簡単には取って替わられることはない。
しかしだ、読み終わる頃には、元の生活に戻るのは勿体無いと激しく思った。堅実に賢く地味に生きてきた男は、アマデウという、本質的には同じで、しかし熾烈に生きた男の人生を辿ることで、アマデウと同じように、しかしあくまでも自分らしく『生きる』ことを学んだのだから。
人間何が賢くて何が幸せなのか解らないものだな・・・とつくづく思った。平凡で冴えない人生を歩む私には、アマデウの知性も財力も、グレゴリウスの堅実さもこれまた知性も、共に羨ましいと思う。しかしアマデウはその知性と地位に苦しみ葛藤し、後にグレゴリウスを突き動かす魂の言葉を生み出す。そしてグレゴリウスは、これまで完璧だと思ってきた自らを内省し、やはり何十年もの重みに押し潰されそうになる。
私なんかにしてみれば、その悩みすら羨ましい。彼らの高尚な葛藤なんて縁が無いどころか資格が無いような気がして(笑)。
冗談はさておき、綿密に積み上げられた言葉の奔流は、本作に稀有な重厚感を与えている。哲学書と紹介にあったが、さもありなんという気はするが、誰でもとは言わないまでも大衆に読ませる哲学書ではある。これを一気に数日で読めてしまう人がいるとは個人的には信じられないが(笑)、出来ればじっくり読んで、著者が生み出した重厚な言葉の波に溺れて欲しい・・・かな?

リスボンへの夜行列車リスボンへの夜行列車
(2012/03/23)
パスカル メルシエ

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『 ぼくらは小さな逃亡者』

2013/02/06 22:29 ジャンル: Category:読書【ヤングアダルト】
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アレックス・シアラー著/奥野 節子・佐々木 ひとみ訳/ダイヤモンド社
退屈な冬休み、デーヴィとマイクの楽しみは、貯めたお小遣いで買った花火をやること。爆弾花火を無人のビルに投げ込んでみたら、なんとそのビルが爆発を起こしてしまった!たかが花火のはずが大事件になってパニックを起こした2人は偶然通りかかったヴァンに乗ったカップルに助けられる。山小屋で休暇を過ごす予定のカップルは、暫く身を隠すようにデーヴィとマイクを諭し、4人はまるで家族のように数日を過ごすのだが・・・?

シアラーおじさんにはいつも癒される。癒されると同時に、時々なにか、心のどこかにちょっとした痛みが残る。でも個人的には、そんな作品の方が好き。だって、大人ですもの!(笑)。
本作もまさにそんな感じ。大人たちが抱える、冷酷で血の流れる絶えない諍いと、子供たちが抱える、不出来な親の切ない問題。どちらにとっても重要なことなのだろうが、子供たちは純粋な包容力で全てを乗り越えようとする。そんなシアラーおじさんの優しい目線が、だから余計に切なさを増すのねぇ。
ラストは予想したよりキリっと痛みがあって、自然の雄大さがもうほとんど詩的な感じで迫ってくる。当たり前なのだけど、文才の研ぎ澄まされた作家なのだと改めて実感させてくれる。いつか、いつでも良いから、1冊で良いから、大人向けの物語を書いてくれないかなぁなんて、またしても叶わぬ思いが込み上げた。
少年たちが大人になって、幼い頃の柔軟さや優しさは失われてしまったのかも知れないが、彼らの中に残った『何か』が、最後にそれとなく示される。それは山小屋での楽しかった一時か、命をかけてくれたことへの尽きない感謝なのか、大人の事情を知ったからか?
限りない優しさと、現実の厳しさを融合させた作風。稀有な作家シアラーおじさんの真骨頂を感じられる作品ではないかな?
ぼくらは小さな逃亡者ぼくらは小さな逃亡者
(2007/06/01)
アレックス シアラー

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プロフィール

hiyo

  • Author:hiyo
  • たった二つの趣味、映画と読書を中心に、日記を書いてみたいと思います。
    最近、自分の時間を充実させたいな、と結構真剣に思っていたりして。文章を書くのも結構楽しいし、誰かが通りすがりに読んでくれたら、嬉しいかな、とか思っている。
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