『さよなら、星のむこうへ』

2008年06月10日 23:27

シルヴィア・ウォー 著/金子 ゆき子 訳/ランダムハウス講談社
クリスマスを翌週に控えたある日、11歳のトーマスは、故郷オーミンガット星へ帰ると父パトリックから告げられる。5年間暮らしたベルソープは、11歳のトーマスにとっては故郷も同然。大好きなお隣のダルリンブル夫人や親友ミッキーとの別れに動揺するトーマスだったが、父の行動には従わなければならない。しかし、宇宙船までの道中で交通事故に巻き込まれ、父子は離れ離れになってしまう!出発の時間が迫る中、トーマスは無事父親と再会する事が出来るのか?

このblogのカテゴリー分けを見ていただいても解るように、私はSFを殆ど読まない。時にサイエンス・フィクションと呼ばれる事もある『タイムトラベル』ものは好きなのだが、宇宙船だとか、宇宙人だとか、そういった類の話は殆ど読んだ事が無い。敬愛するレイ・ブラッドベリに於いても、SF関連の作品は巧みに避けているのがお解かり頂けるだろう。
まぁ、余り得意な分野では無いのだが、この作品はどちらかと言ったら普通の児童小説に近そうだったので試してみた。割と、私の苦手な記述ばかりが多くて苦労した。オーミンガット語とか、曖昧なオーミンガット星人の説明とか、宇宙船や宇宙旅行のこれまた曖昧な描写とか、そうした記述はどうも苦手なのだ。オーミンガットの人達が、地球人の生態を調べるために調査員を地球に送っているとか、トーマスとパトリックはその任務が終了したから星に帰るのだとか、そうしたプロットは気にならず、むしろ面白いと思えるのだが。
作品に描かれてる要素としては、本当の居場所とか親子の絆とか、親が子供に無意識に強いる事やその理不尽さ、子供の自由意志で正しい事柄を選ぶ重要さ、そうさせる親の寛大さや教育の方法、ウソをつかないという単純な道徳観、しかし人生において、悪意無いウソや必然性のあるウソもあるのだという、何だか灰色の部分等などが、やんわりと、祖母的目線で、面白おかしく、かつちょっと感動的にも描かれていると思う。実に盛りだくさんだ。
祖母的目線というのは、作者が単に本当の『祖母的年齢』という事ではなしに、上記した色々な事柄がしっかりと描かれているにも関わらず、全くもって説教臭くなく、しかも読了後には、云わんとしている事がしっかりと頭に残っているという感じ。まさに、大好きなおばあちゃんと、お話をした後のような心地良さなのだ。なんだか、おやつの甘い匂いも漂ってきそうだ(笑)。
健気で愛らしいトーマスが、自分の身の回りの大好きなものを再確認して、幾つかの大好きなものと別れる事を決意する、ちょっとホロ苦い少年の成長物語。このオーミンガット星の話はシリーズで、あと2作続いている。残念ながら早くも絶版なのだが、古本屋ではかなりの確立で出会うので、まぁ、またオーミンガット語と付き合う気になった時にでも、ボチボチ(笑)。3作目は、結構面白そうなんだけどなぁ?

さよなら、星のむこうへ (ランダムハウス講談社文庫)さよなら、星のむこうへ (ランダムハウス講談社文庫)
(2005/10/15)
シルヴィア・ウォー

商品詳細を見る

『エッグ氏,ビーン氏,クランペット氏』

2008年06月02日 22:47

P.G.ウッドハウス著/森村 たまき訳/国書刊行会
スタンリー・ファンクショー・ユークリッジは、売れない作家で友人のジェームズ・コーコランを巻き込んで一攫千金の夢を語り、ビンゴ・リトルは、愛妻ロージー・M・バンクスとの素敵な家庭を死守するために日々奔走中だ。フレディー・ウィジョンの恋はまたしても始まって、完膚なきまでの失態の積み重ねにより華々しく散っていく。ローンズ・クラブ番外編と言えそうなキャラクターを集めた、賑やかなウッドハウス・ワールド、シリーズの王道から少し外れたお楽しみを12編。

ユークリッジとママママ伯父さん/バターカップ・デー/メイベルの小さな幸運/ユークリッジのホーム・フロム・ホーム/ドロイトゲート鉱泉のロマンス/アンセルム、チャンスを掴む/すべてビンゴはこともなし/ビンゴとペケ犬危機/編集長の後悔/サニーボーイ/元気ハツラツ、ブライムレイ・オン・シー/タズレイの災難

まず最初にこの作品、私にとっては記念すべき事に、図書館で貸し出し第1号になれた作品だ!予約第1号なんて、動きの遅い私には一生無理かと思っていたが(大袈裟?)嬉しい驚き。
さて肝心の本編は、王道からは少し外れているが、完膚なきまでに馬鹿らしく、圧倒的徹底的に間抜けな男たちの物語が詰まっていて、最高の短編集だった。シリーズ化されている作品では、一定の型が決まっていて安心して楽しめるが、その分どうしても遊びが少ないように思う。こうした制約の少ない短編では、それこそ有象無象の事件が、まるで温泉地帯の沸騰が、あっちでポコッ、こっちでボコッっと噴出しているかのように、色々な角度から楽しめる。私はどうやら、ウッドハウスの小振りな短編が1番好みに合っているようだ。
その為か、マリナー氏の短編集はかなりお気に入りだったのだが、本作には『アンセルム、チャンスを掴む』が収録されている。そしてそして、我が愛しのビンゴ!バーティーものの初期に登場して強烈な印象を残したからかも知れないが、私はバーティーの友人ではビンゴが最も好きである。結婚して落ち着いたか?長編には台詞以外で登場しなくなって悲しい限りだったのだが、こうしてちゃんと主役になって・・・しかも・・・『ビンゴ度』に拍車がかかり、愛妻の勢いも増しているような?とうとう愛息まで誕生しちゃって、ビンゴ・シリーズで1冊楽しめる自信ありだ。
そして、解説にあるように、かつてのビンゴを彷彿とさせるような恋多き男、フレディー・ウィジョンは結構好き(笑)。全く暢気で危機感ゼロで、実に爽快なくらいに抜けた男で楽しませてくれる。
冒頭の4編を飾るのはスタンリー・ファンクショー・ユークリッジだが、こちらはちょっと、他の作品とは毛色が違うと言えば違い、恋か金かと言えば『金儲け色』が結構強い気がした。2/4の確立で色恋沙汰がメインなのだが、とにかくユークリッジが救いようも無いほど貧乏なので、そんなイメージが強くなったのかも知れない。
そんなわけで、短編ならではの味わい豊かな作品の数々、かなり贅沢な楽しみ方ができるだろう。長編を好む方にはいささか物足りないかもしれないが、バラエティーの豊富さを楽しみたい、私のような方には最適な一冊。もし誰かが、誕生日に1冊ウッドハウスコレクションを買ってあげるよと言ったらば、私は迷う事無くこの一冊を選択するだろう・・・、なぜなら、最も気に入っているエムズワース卿の短編集は、もう既に持っているから〜♪

エッグ氏、ビーン氏、クランペット氏 (ウッドハウス・スペシャル)エッグ氏、ビーン氏、クランペット氏 (ウッドハウス・スペシャル)
(2008/04)
P.G.ウッドハウス

商品詳細を見る

『ジーヴスと恋の季節』

2008年04月26日 23:22

P・G・ウッドハウス著/森村 たまき 訳/国書刊行会
デヴリル・ホールの当主エズモンド・ハドックは、なんと!5人のおばさんと同居していた。そこに『ガッシー』として乗り込んだバーティー、『バーティー』として乗り込んだガッシー、ガッシー(バーティー)の従者ミドウズとして乗り込んだ、バーティーの旧友で俳優のキャッツミート。彼の妹コーキーはハリウッドの売れっ子女優、そしてハドックの導きの星にして、バーティー(ガッシー)の女神。と言う事は、ガッシーの婚約者アマンダは、ガッシー(バーティー)の元へ?しかもハドックは従妹であるガートルードに猛攻撃を仕掛けているらしい。キャッツミート(ミドウズ)はガートルードと恋仲だが、そんな不幸な間違いにより、ミドウズ(キャッツミート)として、デヴリル・ホールのメイドのクウィニーと婚約?かと思ったが、クウィニーは村のドブズ巡査と婚約していた。ガッシー(バーティー)の執事であるはずのジーヴスだが、デヴリル・ホールの執事は、ジーヴスの叔父でクウィニーの父であるチャーリー叔父さん。仕方なくジーヴスは、バーティー(ガッシー)の執事として乗り込んできた。

なんだか、あらすじの新境地を開拓した気分(笑)。さてコチラ、ジーヴスもの最新翻訳!しかも、幾人かの有名なウッドハウス・マニアが、最高傑作と考えている作品だそうだ。(解説より)
とにもかくにも、お腹一杯!これぞウッドハウスの真骨頂と言えるのではないだろうか?真骨頂というか、『エムズワース物』に類似した、キャラクターの入れ替わりによる騒動による入り組んだ面白さ、それによってさらに混線の度合いを増す、恋愛模様が本作では4組にも上る。
これもまた解説からだが、ウッドハウスが戦争のためにフランスで暮らしていた頃の作品だそうだ。そのため、作品にかける時間がふんだんにあったとか。だからこれほど入り組んだプロットが可能になったのだろうと予想しているが、なるほどなるほど、余りにも緻密に展開するドタバタ劇に、笑いが絶える間もないぐらいだった。それに、いつもなら若干感じる無理矢理な展開が無く、いともスムーズにバーティーが窮地に落ち込んでいく。これは、じっくり考えられた物語ゆえ、と言えるのでないだろうか。
笑いと言えば、今回はとにかく、1行毎にも笑わせて頂いた。これはもう、圧倒的に翻訳者のおかげである。確実に、翻訳者森村氏の笑いのセンスは、向上の一途を辿っている事を、私としては、一点の曇りも無く疑わない事を表明するのにやぶさかじゃないのだ(真似してみた(笑))。
言葉選び、リズム感、文章であるのに表れる間合いの絶妙さ。ウッドハウスをかつて原書で読もうと無謀な挑戦をして、多用される引用でけつまずき、粋な言い回しに転倒し、よもや起き上がる事も出来なくなったのは、僅か5ページ目ほどだったか。何より、全く持って、面白いと思われるニュアンスを嗅ぎ取れなかったのだ。
やはりこうした言葉の上手い作家の作品は、同じくらい言葉遣いが上手く、原作者を深く理解し、適切な日本語に訳してくれるであろう、信頼の置ける翻訳者の方の作品を楽しむに越した事は無い。そういった面で私にとって、アガサ・クリスティに田村 隆一氏が欠かせないように、ウッドハウスには森村たまき氏が、よもや欠かせない存在だ。本当に、毎回深く感謝しております。
今回は(いやここ最近か?)ジーヴスの影が薄かったのが、若干残念ではある。もちろんバーティーは全開でスープに浸かりまくるし、個性豊かな友人連中も大活躍で・・・スープにまみれる。それでも、私がこのシリーズで何より好きなのは、バーティーとジーヴスの掛け合いなので、確かにこの面においては、お腹一杯とは良い難いかも。
今回のラストは、え!?次回に続くなの?と疑問に思う終わり方だった。あれで終わってしまうには、余りにも惜しい終わり方。ぜひぜひ、あの後のバーティーの顛末を知りたいものである。アガサ伯母さんと戦って、粉塵と化してしまっていない事を願って。

ジーヴスと恋の季節 (ウッドハウス・コレクション)ジーヴスと恋の季節 (ウッドハウス・コレクション)
(2007/12)
P.G.ウッドハウス

商品詳細を見る

『屍衣の流行』

2008年04月19日 00:48

マージェリー・アリンガム著/小林 晋 訳/ 国書刊行会
有名女優のジョージア・ウェルズは、3年前に婚約者が失踪し、現在ではサー・レイモンド・ラミリーズという男と結婚していた。有名ブランドのトップ・デザイナーであり、アルバート・キャンピオン氏の妹でもあるヴァル・フェリスは、重要な顧客でもあるジョージアを、複雑な思いで見つめていた。彼女が思いを寄せていた、航空会社の社長アラン・デルをジョージアに取られ、それでも尚親友であろうとするジョージアに、一種の嫌悪を持っているかに見えた。そんな折、ラミリーズが不穏な死を遂げる。妹のため、そして自らが追っていた事件の究明のためにも、キャンピオン氏は危険な賭けに出る。

アルバート・キャンピオン・シリーズ第2弾・・・と言うわけでも無く、言うなれば、今なら読めるシリーズ第2弾!と、何も無理やりタイトルを付けなくてもね(笑)。
前回読んだ『甘美なる危険』から約6年ほど経っているらしい、、、8年だったかな?あれ??前回でも活躍したアマンダ・フィットンが、淑女になって戻って来ている。前作で既に仄めかされていたように、キャンピオン氏にとって大切な人になるアマンダ。前作ではお転婆過ぎてちょっと・・・と思ったが、女性らしさが加味されてとても魅力的なキャラに成長していた。
もちろん、キャンピオン氏の複雑な恋心がまた良くて(笑)、周囲を欺くようなボケ面の仮面を被るキャンピオン氏が、素に近い姿を見せるのがアマンダなのだ。そのため、いささか魅力に欠ける描き出しをされている主人公に、人間味を添える役割も担っている事が良く解った。
さて前作では、推理小説というよりも多分に冒険小説風味で、派手なアクションなどは無いものの、秘密の機械なども使って中々活力ある出来栄えだったものが、今回は推理部分に焦点がずれていたため、盛り上がり、結末共に味わいは落ちる気味があった。
キャンピオン氏が時たま年齢の事を気にしてみたりするので、お年柄派手な冒険は控え目に・・・という配慮なのか?前作では『冒険家』と称されていたと思うが、今回はしっかり『探偵』と明言されていた。友人連中との楽しい絡みも無く、雰囲気としては大分違った感じかな。
とは言え、魅力的なキャラクターに彩られ、謎解きが力技だろうがなんだろうが、物語として面白い事に変わりは無い。シリーズ物の利点を生かして、余分な説明を省いても、読者の虚栄心をくすぐる演出も用意されている。
ただ残念だったのが、キャンピオン氏の本名があっさり明かされてしまう事。しかも本人の口から(笑)。妹も登場し、母の手紙も登場する。キャンピオン氏の素性は、公然の秘密として明かされないのかと思っていただけに、なんだか肩透かしを食らった気分だ。
今作では、女性作家らしく3人の目だった女性が活躍する。その全てが自らの魅力と才能を最大限に引き出せる特殊な仕事に就いており、女性の社会進出目覚ましかった時代感を感じた。
我侭だけど憎めない、あくまで女性らしい小悪魔的なジョージア、独立心旺盛だが、アーティストとしての繊細さに揺れるヴァル、独立心はもとより、素朴な人柄と堅実な育ちで実際的なアマンダと、働く女性という基盤の上に成り立つ性質は様々。女性を熟知したキャラクター構成の上手さを感じた。ただ、せっかく巧みなキャラクターを作り上げ同席させていながら、心の内を余り上手く利用できていなかったかな?というのが残念なところだ。
どうやら近所の図書館には、この作品の前作となる長編が眠っている模様。近い内チャレンジするつもりであるが、こちらは余りキャンピオン氏が目立たないらしい上に、アマンダも登場しないので、いささか気勢が殺がれてしまうのだ(笑)。

屍衣の流行 世界探偵小説全集 (40)屍衣の流行 世界探偵小説全集 (40)
(2006/09)
マージェリー・アリンガム

商品詳細を見る

『甘美なる危険』

2008年03月28日 22:36

マージェリー・アリンガム著/小林 晋 訳/新樹社
バルカン半島にある小国の王位継承者として旅をする、通称アルバート・キャンピオン氏とその一行、実は彼等、秘密任務の遂行中だったのだ。その小国の正式な継承者を探り出し、加えて戴冠に必要な書類や王冠を探し出さねばならない。鍵はポンティスブライト伯爵の末裔が住む村にあるらしい。しかし伯爵の末裔は水車小屋で暮らす貧乏貴族。その継承権も明らかにされていなかった。しかし次々と明らかになる事実、そして深まる謎に冒険家の血が騒ぐキャンピオン。伯爵の子孫でもある活発な娘アマンダを副官に、次々とやってくる悪漢に挑むのだった。

英国4大女流推理作家の内の1人だそうだ。という事で本国のみならず世界中で著名なのだろうが、日本では余り紹介されていない様子。私は初見だった。4大・・・?ドロシー・L・セイヤーズ(我が麗しのウィムジー卿♪)、アガサ・クリスティ(灰色の脳細胞は不滅です)、そしてこのマージェリー・アリンガム、はて、もう1人は?どうやらナイオ・マーシュというらしい。こちらに至っては全く・・・あら、、、アレン警部シリーズってのは知っている。何となくだけど(笑)。その作者なのね。
M・アリンガムはセイヤーズ、クリスティと同時期に活躍したらしいが、本作を読んで思ったのは大分新しい雰囲気があるという事。後書きに詳しいが、本作で初登場するヒロインのアマンダも、服装や話し方などが非常に現代風だ。確かにハリエット・ヴェインなども思いっきりフェミニストなのだが、この場合ピーター卿が妙に古風なので差し引きゼロというか、やはり古臭いイメージが付きまとう。ポアロもやはり、1930年代のイメージが強い。
こちらはアルバート・キャンピオン・シリーズ。世界を股にかける冒険家で、理知的で感情を余り表に出さないタイプ。恐らく爵位を持っていて、恐らく次男以下。使用している名前は本名ではなく、あくまでも素性は読者に隠されている。しかしふとしたところに育ちの良さを漂わせる辺り、著者の遊び心を感じさせる。
普段はボケた面で危険を感じさせない雰囲気をまとっているらしいが、いざともなれば頼りになりそうな表情を伺わせる辺りも、女性読者を十分に配慮した設定だろう。細かい描写は少ないが、それから推察するにスラリと細身の長身。目を引くハンサムではないが、金髪で劉とした顔立ち、まさに良家の血筋がスラリとした鼻筋から推察されそうな凡庸な美男子と言ったところかな。
仲が良くチームワークも良い友人達と事件を解決するので、一匹狼の気は無いが、集団の中にいてどこか孤立感を感じる描き出しだったのが興味深かった。そして、こうしたシリーズに欠かせないワトソン役、ヘイスティングズ、いや、愛しのバンター、、、いや、どちらかと言ったら粗野なジーヴスのような主従関係の執事もいる。ヘイスティングズ役ならガフィーが適役。
物語は幾つもの謎解きと、悪漢との戦いという冒険要素が満遍なく。村医者のエピソードはちょっと余計だったかなと思いつつも、野心的な著者の意気込みも感じられたように思う。魅惑の小国を巡る数々の危機、壊れかけた水車小屋、キャンプを張る悪漢たち、強敵と思われる大物の存在などなど、魅力的要素は満載だ。
個人的には幾分ステレオタイプ過ぎて個性に欠けるか?とも思ったが、次作は既に入手済み(笑)。今後もこのシリーズ、楽しんでいく事に決めた。

甘美なる危険 (新樹社ミステリー)甘美なる危険 (新樹社ミステリー)
(2007/12)
マージェリー・アリンガム

商品詳細を見る

『想像もつかない物語』

2008年02月18日 00:30

ポール・ジェニングス著/谷川 四郎 訳/トパーズプレス

瀕死の男を助けたら、その男の刺青が乗り移ってしまった少年、ごみ捨て場に現れた幽霊が探していたのは、可愛い孫に似た双子かそれとも?空を飛ぶ未確認飛行犬の正体は!?巨大なクジラ、その始末を依頼された親子の活躍。ねずみになってしまった伯父さんを助ける少年。生き物をビデオのように操作できるリモコンがあったなら?海辺で見つけたトランクの中には、邪悪なサーカスの衣装が入っていた。

根がかり/幽霊ごみ捨て場/冷凍動物/UFD/ぶちこわし/グリーンスリーヴス/ねずみ男/スパゲッティむさぼり食い/お見とおし

先日読んだシリーズ第1弾『ありえない物語』に続き・・・いきなり第4弾(笑)。仕方ない、見つけ次第買っているので。とは言え、短編集だし、順番に読むことにはさしたる意味は無いと思われる。
さて今回も、中学校の放課後に、少年達が(少女ではない!なぜなら少女は男子より格段にませているから(笑))廊下の片隅か階段辺りに集まってクスクス笑いながら話しているような内容。臭いもの、汚いものに加え、今回は幽霊の話が多かったかな。
UFD辺りは本当、子供達が喜びそうな話(笑)。これがこのシリーズの謳い文句通り、大人にも大人気!というのはちょっと納得しかねるけど、まぁサクっと読めて楽しめる作品ではあるのね、疲れている時になんか丁度良い。
『グリーンスリーヴス』なんかは、大人でもホロリと出来そうだし、『お見とおし』はちょっとサスペンスタッチで毛色が違う。個人的には1話目の『根がかり』が面白かったな。『スパゲッティむさぼり食い』は、某映画とネタが酷似。果たしてどちらが先だったのか?いずれにしろ、使い方違えばこうも、、、子供らしい展開になるかと(笑)。
ボチボチ、第2弾、第3弾も見つけ次第読みたいと思う。最近疲れているから、こういう話が憩いの時間になってくれる(笑)。

想像もつかない物語 (PJ傑作集)想像もつかない物語 (PJ傑作集)
(1995/02)
ポール ジェニングス

商品詳細を見る

『パンプルムース氏とホテルの秘密』

2008年01月19日 22:55

マイケル・ボンド著/木村 博江 訳/創元推理文庫
頃はシーズン開始直前、パ氏は編集長から、またしても窮地に陥りそうな任務を言い渡される。編集長の家にかつていた美しくも危険、それでいて料理の達人でもあるイギリス娘エルシーが、あろう事か『ル・ギード』の調査員になりたいと言い出したのだ。彼女の研修のお目付け役件ダメ出し係りとして、パ氏が選ばれたのだった。出かけた先は砂丘、しかもホテルでは殺人事件の気配までし始めて、なにやら困った予感は的中したようだった。

さて、この作品も8作目。前作『パンプルムース氏の晩餐会』で盛り返しを期待していたが、盛り返しどころか、ミステリ小説として確固たるスタイルを確立した模様だ。ミステリ部分も中々凝っており、歴史的事実も盛り込んだ内容の深いもの。そこに、エルシーという小悪魔的要素が再登場!御年81歳という著者だが、エルシーのような魅惑的な女性は、著者の創作意欲を活性化させるのだろうか(笑)。
それにこのエルシーだが、実は『外国人』じゃない。作品の上では外国であるイギリス娘であるが、著者はれっきとした『イギリス人』である事から、エルシーの語るイギリスの食文化などは、実は著者の本心の表れなのじゃないかと面白くなる。例えばチョコレートサンドとか、彼女が作るヨークシャーという名のプディングとか(笑)。イギリスのパンは保存期間の長さが何より重要という話と、パ氏が感心する実際の保存期間の長さ。合理的なイギリスのパンに対して、焼きたてを推奨するフランス人パ氏の反応も面白い。
編集長は相変わらずだし。思うにこの方、映画化したら1番面白いキャラクターになるのじゃないだろうか。布団にずっといたかのような彼の頭痛と、そのお惚けぶりは今回も最高。私が密かにファンである(笑)ドゥーセットは今回かなり陰が薄い、その上かなり理性的だったが、そんな姿もなんだか素敵で格好良い。
何となく思ってしまったのだが、著者M・ボンドは、もしかしたら物凄く優しい人なのかも?または、高齢なその年齢からも、凄惨な描写に嫌気が差してしまっているのか?物語のそうした悲惨な部分の描き出しが、いつも非常にソフトだ。
例えばそれは犯人にも対しても同じ事で、そのせいで結末がちょっとばかりあやふやに感じてしまう。今回はもしかしたら犯人は・・・あの人?という二重の謎を残した形になっているので、逆にベテランならではのお遊びというか、上手さが見えたような気もしたが・・・果たして?
さてさて、グルメ描写も好調。残念なのは、パ氏が泊まったホテルが最悪だったという事で、いつもよりは控え目ではあったが。様々な小さな謎に加えて、2件の殺人の疑惑が持ち上がる。そしてパ氏のいつも以上の混乱振り、これはかなり笑える(笑)。ポムフリットの傍観的な態度も笑えるのだが、そのせいで逆に存在が目立たなかったかな〜?と思うとちょっと残念。重要な鍵は握っているんだけどね(笑)。

パンプルムース氏とホテルの秘密 (創元推理文庫 M ホ 5-8)パンプルムース氏とホテルの秘密 (創元推理文庫 M ホ 5-8)
(2007/05)
マイケル・ボンド

商品詳細を見る

『ハリスおばさんパリへ行く』

2008年01月16日 14:14

ポール・ギャリコ著/亀山 竜樹 訳/講談社文庫
ロンドンの通い女中、アダ・アリスことハリスおばさんは、得意先のお屋敷でクリスチャン・ディオールの素敵なドレスを見つけてしまう。それ以来、何は無くともディオールのドレスが欲しくなったおばさんは、運命すら見方に付けて何とか小銭を溜めていく。そしてとうとう、憧れのドレス分のお金が溜まった。目指すは花の都パリ。度胸と人情なら誰にも負けない、ハリスおばさんの珍道中は、女性の憧れディオールを舞台に暖かくもおかしく展開していく。

子供の頃は全く本を読めなくて、学校指定の推薦図書などには大分苦労した。1冊読みきるというのがとにかく苦手。子供の頃に読んだ本は、恐らく両手の指が余る程。しかもその殆どを憶えていない。そしてこの作品も、本屋でたまたま文庫を見かけて、子供の頃の記憶がどぉ〜っと蘇った。ああ、高級ドレスを買いたいという奇妙なおばさんのお話だ!!と(笑)。
児童書として本作の『抜粋』を読んだに過ぎないのだが、当時の感想としては、貧乏なハリスおばさんが、あろう事か高価なドレスに全財産を果すだなんて!その虚しさと見苦しさに胸が痛くて、ハリスおばさんが不憫で不憫で仕方が無かった。
両親が洋服屋さんで、子供の頃からパリコレなどに親しんで育った。その分野においてはかなり早熟な子供だったのだ。だから、ハリスおばさんが欲しいと言うドレスの雰囲気も、意味も、価値も、十分に理解していた事から、こうした感慨が生まれたものと思われる。
余りにも分不相応な事に熱意を燃やすハリスおばさんを面白いと思うどころか、なんだかこちらの方が気恥ずかしい思い。しかも新宿で生まれて育った身としては、都会育ちならではの荒んだ心配をしながらの読書だった。要するに、読んでいる間中心休まる時も無く、読み終わっても何か後味が悪い。そんな感想だけが残った。
今、全てを読み返してみると、いや、正しい全文を読んでみると、当時の私の感想は大きく逸れて、それこそ月の方までぶっ飛んでしまっていた事が良く解る。
おまけに、既に絶版の文庫を購入したのだが、そこには著者の名前が『ガリコ』とあり、誰だそりゃ?という思いだった。後書きを読んで納得。ポール・ギャリコの事だったのね(笑)。ギャリコと言えば、中々食指が動かない作家だった。何度か読もうと思ったものの、いまだに手を出せずにいたのだが、なんだ・・・小学校低学年の頃に既に読書済みだったのね(笑)。
なんだか思い出話ばかりになってしまったが、このユーモアは最高。ロンドンの通い女中をギャリコが表わす時に、それは日本の下町のお袋さんを髣髴とさせる。なんと言うか、こういうタイプの女性は、世界各国共通なんだなぁ〜と面白くなった。
戦争を経験し、夫を早くに亡くし、他の誰にも頼らずに、ただ親友とだけ助け合いながら地道に生きてきたハリスおばさん。さもすれば愚痴や嘆きだけに彩られそうな人生だが、その独特の人生観と良い、世の中に楽しみを見出す姿勢と良い、見習いたいと思わせる強さと面白さが満載だ。
子供の頃は不憫に思えたハリスおばさんの行動も、読み返してみれば理解が出来る。これは、ドレスが欲しい!とハリスおばさんが思う事から始まるドラマであり、ドレスだろうがなんだろうが良いわけだ。例えば、何をも欲しがらなくてもこの物語は成立するだろう。一流のシニカルなユーモアであり、子供には、いまいち掴み辛い上級さがあったわけだ(笑)。
またハリスおばさんの人間味溢れる様に、どうしようもなく愛着を感じる。全くもって完全じゃないハリスおばさん。楽天的で、賭け事が大好き。ウソをつかないという独自の解釈は面白いが、有名人に弱くてショービズ界に抗い難い魅力を感じてしまう。おばさんの欠点は言うなれば『見得』なのだが、その辺を修正していくために、このパリ旅行があったのだ。
嫌味な人は出てこないし、あっけらかんとしたハリスおばさんの人柄が、多くの人を幸せに導く。結果として、ハリスおばさんにも大いなる安らぎと幸せと、かけがえの無い人との繋がりがもたらされる。ラストでは惜しみなく感動の展開が用意されており、とにかく泣かせる思い切りの良さが心地良い。
遠まわしと言う言葉はハリスおばさんには無い。そのストレートさもまた気持ち良く、奇麗事を感じさせない下町魂というか、気風の良さがとにかく良い。ギャリコの代表作とも謳われる本作、長い間離れていたが、今更ながらに虜になった。

ハリスおばさんパリへ行く (fukkan.com)ハリスおばさんパリへ行く (fukkan.com)
(2005/04)
ポール ギャリコ

商品詳細を見る

『鉤爪の収穫』

2008年01月12日 00:45

エリック・ガルシア著/酒井 昭伸 訳/ヴィレッジブックス
ハーブ中毒からも何とか脱し、過去の傷も癒えた探偵のヴィンセント・ルビオは、一般社会に順応した日々を送れるようになっていた。そんな折、やむを得ずマフィアの片棒を担ぐ羽目になる。道連れは、何度と無く窮地を助けられた女探偵グレンダ。獲物を追って辿り着いたのはマイアミ。しかも、雇われたマフィアと敵対関係にあるマフィアのボスは、ヴィンセントの昔の親友ジャックだった。その妹は・・・ヴィンセントとちょっとばかり深い中にあった女性。久方ぶりの再会に押されるように、両マフィアの二重スパイとなってしまったヴィンセント。しかしその裏には、計り知れない陰謀が込められていた

恐竜・・・です。この作品の主人公は恐竜(笑)。シリーズで前2作は既に読書済み。感想はかつてやっていたHPに書いてある。その抜粋・・・というか要約は、
『恐竜絡みの話かと思ったら、主人公が本当に恐竜だった奇抜な作品』
『しかも主人公1人が隠れた恐竜なのではなくて、人間社会に紛れて、実は恐竜社会が存続していたという突飛な内容』
『別に恐竜じゃなくても良いんじゃない?と思いつつ、要するに人間が主役であっても十分に面白い内容』
『恐竜社会の描写も細かく、奇天烈な発想なれど実に細かく練られた構想』
『ハードボイルドだが、水面下で思いっきりハードボイルドをおちょくっているようなパロディが満載。言い換えれば“ハードボイルド風”小説』
『1作目より2作目の方が完成度が高いと思う』
『実は映画『マッチスティック・メン』の原作者だ!』
以上。
という事で待望の3作目だ。手に入れるまで大分かかったが、何としてでも読みたいと思っていた続編だ。期待通りの面白さ、そして今回は、『恐竜』が全面に押し出され、主人公及びその他恐竜達が、人間の皮を被っている事をほとんど忘れてしまった。何しろ『ヒト』がほとんど出てこないので、人の扮装をしている必要が感じられなくて。恐竜描写に重きが置かれるのは良いが、本末転倒?という気がしないでもない(笑)。
段々と、現実味のある世界が舞台だとは思えなくなってきた、一種のファンタジーだ。とは言え、そもそも恐竜が主人公だから、ある意味十分ファンタジーなのだけど(笑)。映画にしたら面白いだろうに?といつも思うのだが・・・TVMになっていた!しかも2作目だ、観たい(笑)。
この作品でいつも思うのは、次は書きたくないのか?と訝りたくなるぐらい、主人公ヴィンセントに襲い掛かる悲劇がシリアスな事。相棒アーニーの死もそうだが、気が付くと、かなりの悲劇をヴィンセントは真っ向から受け止めている。その悲劇のどれもが、準主役級のキャラクターに関わっているから、次はもう無いのかな?と思ってしまう。それでも、そんな悲劇を感じさせないぐらい、物語の語り口がコミカルかつライト。まさに『ハードボイルド風小説』。
適度な軽口、適度なアクション、物語性も程よく高く、ラストでは意外な展開というより、じっくりと練られた完成度の高い作品だったと思わせてくれる。しかも登場人物がほとんど登場恐竜だし(笑)。展開もリズム感が良く、全体を通して中だるみする部分がほとんど無い。
今回はヴィンセントの過去がかなり多く語られ、ヴィンセント・ルビオがいかにして出来上がったか?という趣旨も感じる。グレンダとの出会いも描かれ、アーニーとヴィンセントという繋がり以外の関係を深く語り、ヴィンセントというキャラクターの肉付けを強固にした印象だ。
今回はマフィア絡みの抗争にまきこまれるヴィンセントだが、そのヤクザ振りがいささか古いような気がして、翻訳がちょっと・・・(笑)。サスペンスやミステリというよりは、心理操作を利用した巧みなドラマに仕上がっているように思った。
ハードボイルドは苦手だが、このぐらいなら丁度良い。何しろヴィンセントのキャラが憎めなくて気に入っている。大事な人を次々失ってしまうヴィンセントだが、次回はとうとう、新たなる『大事な存在』を見つける事を願って!楽しみに待ちたいと思う。次回作があるのなら?

鉤爪の収穫 (ヴィレッジブックス)鉤爪の収穫 (ヴィレッジブックス)
(2005/08)
エリック ガルシア

商品詳細を見る

『ありえない物語』

2007年12月23日 22:57

ポール・ジェニングス著/吉田 映子 訳/トパーズプレス
言葉の最後に『シャツも着ないで』とどうしても言ってしまう少年の話。怪しい商品を売り歩く男が出会った奇跡の空飛ぶ機械。外便所に現れる悲しげな幽霊の正体は?つければ絶対に女性にキスされる不思議なリップスティックの話。牛糞で作られた強力な肥料が起こした大事件。灯台に現れる幽霊は金曜の夜毎に音楽を奏でる・・・。不思議な力を持つアイスクリームと天才少年の戦い。穿くと100万馬力のパンツとは?
子供も大人も夢中になっているという、オーストラリアのベストセラー作家の短編集。

シャツも着ないで/取りつけ式飛行器具/外便所の骸骨/ラッキー・リップ/牛糞カスタード/灯台のブルース/スマート・アイスクリーム/ワンダーパンツ

子供騙しの陳腐で薄っぺらい児童書はもうイヤだ!という息子の意見を聞いて、初めて小説を書いたという方らしい。確かにこちらは、物語の裏にそれなりの指摘や教訓なども含まれているし、いささかダークな終わり方をする短編も含まれている。
反面、『牛糞カスタード』などは、とにかく下ネタに大笑いする小中学生辺りが、大喜びしそうなお話なんである。良い大人の私としては、イヤにリアルに匂いなぞ想像してしまって・・・しかもお昼時に読んでいたものだから・・・ウプ!
適度に子供の側に立ち、それでいて親も納得。世論では大人も楽しんでいるベストセラーなのだとか。その意見に反論するつもりは無いが、どっちつかずで相殺し合い、ちょっとばかり個性が弱いような気がしてしまったのだ。
ただ短編としては一話一話非常に良くまとまっており、物語の結末が解り易過ぎる作品ばかりでも無いので、想像する範囲を残してうまくまとめている辺りも実に上手いと思う。こうした作品を多く読んで育った子供達はきっと、読書する楽しみも覚え、想像する余地のある、言い替えれば釈然としないラストにも馴れ、もっと奥深い『文学』に親しむ事になるのだろう。
そう考えると、こんな『文学初歩』的で、しかも奇想天外な物語の数々が楽しめる今の少年少女達は羨ましいなぁと(笑)、思ってしまう。読書は苦手だ!という大人の方も、きっと楽しめる作品集だろう。他の作品集も是非読んでみたい。

ありえない物語 (PJ傑作集)ありえない物語 (PJ傑作集)
(1994/10)
ポール ジェニングス

商品詳細を見る


最近の記事