2008年05月05日 12:10
ジョン・マクガハン著/東川 正彦 訳/国書刊行会
アイルランドの小さな村、母を亡くしたマホニー一家は、厳格で暴力的な父に制圧された暮らしを送っていた。長男は成長し、奨学金を貰って家から抜け出そうと努力する。聖職者への道か、まだ何か、自分に可能な未来があるのか?彼は悩み、罪深い己を責める青春の日々を送る。やがて、大学への道が開けた時、彼の下した結論は、父との諍いの和解はあるのか?
いきなり回顧録『小道をぬけて』を読んでしまって、順序が逆じゃないか?という疑問があったものの、実際、最初に回顧録を読んでしまうのはそれなりに正しい方法だったような気がした。
これは、先の回顧録と重複する側面があり、回顧録では周囲の事に重点を置いた描き出しだったため、描かれなかった著者自身の成長を克明に表した作品である。
とはいえ、これは著者の第二作目にるので、著者と共に時代を生き、順序良く著者の作品を読まれた方達には、当然回顧録の存在は無かったわけだ。回顧録の存在を知って読むのと知らぬのとでは、受ける印象は大分違ったものになると思う。それなりに正しい方法とは言ったものの、回顧録を知らずに読めた場合に受けた印象、あるいは衝撃を、想像するしかないのはいささか寂しい気もするのである。
性的な父の暴力、神父から受けるこれまた性的な圧力、妹が受けた職場での性的な嫌がらせ、とかく、宗教に縛られたアイルランドでは、タブー視されていた話題の中心はその辺りだ。主人公が逃れられない性への目覚め、それによって感じる罪悪。聖職者への道、己の罪悪の行く末を考えるからこそ、その道に大いなる不安を感じる。この作品は、暗にであれ、公然とであれ、カソリックの抱える問題を誠実に問うている気もした。正常な人間としての心と体の繋がり、それを夢見て求めるのは、神の恩寵に包まれて、祝福された死を約束される人生と比べられるのか?果たして、どちらがより良いなどと、結論が出せるのか?私などは無宗教で、いかなる神の存在も、その後の天界の世界も信じていないので、答えはあっけなく出てしまうのだが、主人公にしてみれば、それは余りにも大きな問題だったことだろう。
そうした青春時代の『未来への不安』、誰もが抱える正しい道への渇望というのが、主人公を取り巻いた環境を巧みに影響させつつ、彼自身の強い思考と共に語られていく。文章は決して美しいとは言えないが、どこと無く漂う誠実さが当時の著者の真剣な思いを伝えているような気がした。
個人的な話ではあるが、私は人生を真剣に考えた事が無く、10代の頃も、自分が進むべき道をあっさりと、しかし熱烈に決めてしまっていた。この主人公のように、あらゆる事を精査したわけではない。主人公の行きつ戻りつする思考の流れをじっくり読んでいると、こうした試行錯誤は、人生を歩む上で非常に重要であると思えた。あらゆる可能性に満ちていたあの頃、私にもっと分別があったなら、なぜだか私は、そうした自分の過去を反省する気持ちが強く残った。
アイルランドの小さな村、母を亡くしたマホニー一家は、厳格で暴力的な父に制圧された暮らしを送っていた。長男は成長し、奨学金を貰って家から抜け出そうと努力する。聖職者への道か、まだ何か、自分に可能な未来があるのか?彼は悩み、罪深い己を責める青春の日々を送る。やがて、大学への道が開けた時、彼の下した結論は、父との諍いの和解はあるのか?
いきなり回顧録『小道をぬけて』を読んでしまって、順序が逆じゃないか?という疑問があったものの、実際、最初に回顧録を読んでしまうのはそれなりに正しい方法だったような気がした。
これは、先の回顧録と重複する側面があり、回顧録では周囲の事に重点を置いた描き出しだったため、描かれなかった著者自身の成長を克明に表した作品である。
とはいえ、これは著者の第二作目にるので、著者と共に時代を生き、順序良く著者の作品を読まれた方達には、当然回顧録の存在は無かったわけだ。回顧録の存在を知って読むのと知らぬのとでは、受ける印象は大分違ったものになると思う。それなりに正しい方法とは言ったものの、回顧録を知らずに読めた場合に受けた印象、あるいは衝撃を、想像するしかないのはいささか寂しい気もするのである。
性的な父の暴力、神父から受けるこれまた性的な圧力、妹が受けた職場での性的な嫌がらせ、とかく、宗教に縛られたアイルランドでは、タブー視されていた話題の中心はその辺りだ。主人公が逃れられない性への目覚め、それによって感じる罪悪。聖職者への道、己の罪悪の行く末を考えるからこそ、その道に大いなる不安を感じる。この作品は、暗にであれ、公然とであれ、カソリックの抱える問題を誠実に問うている気もした。正常な人間としての心と体の繋がり、それを夢見て求めるのは、神の恩寵に包まれて、祝福された死を約束される人生と比べられるのか?果たして、どちらがより良いなどと、結論が出せるのか?私などは無宗教で、いかなる神の存在も、その後の天界の世界も信じていないので、答えはあっけなく出てしまうのだが、主人公にしてみれば、それは余りにも大きな問題だったことだろう。
そうした青春時代の『未来への不安』、誰もが抱える正しい道への渇望というのが、主人公を取り巻いた環境を巧みに影響させつつ、彼自身の強い思考と共に語られていく。文章は決して美しいとは言えないが、どこと無く漂う誠実さが当時の著者の真剣な思いを伝えているような気がした。
個人的な話ではあるが、私は人生を真剣に考えた事が無く、10代の頃も、自分が進むべき道をあっさりと、しかし熱烈に決めてしまっていた。この主人公のように、あらゆる事を精査したわけではない。主人公の行きつ戻りつする思考の流れをじっくり読んでいると、こうした試行錯誤は、人生を歩む上で非常に重要であると思えた。あらゆる可能性に満ちていたあの頃、私にもっと分別があったなら、なぜだか私は、そうした自分の過去を反省する気持ちが強く残った。
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