『イタリア的、恋愛マニュアル』

2008年05月07日 21:13

〔伊〕MANUALE D'AMORE (2005年)
監督:ジョヴァンニ・ヴェロネージ
脚本: ジョヴァンニ・ヴェロネージ/ウーゴ・キーティ
シルヴィオ・ムッチーノ/ジャスミン・トリンカ/マルゲリータ・ブイ/セルジオ・ルビーニ/ルチャーナ・リッティツェット/ディーノ・アッブレーシャ/カルロ・ヴェルドーネ/アニタ・カプリオーリ/フランチェスコ・マンデッリ/ロドルフォ・コルサート/ダリオ・バンディエーラ

職なし恋人無しのトンマーゾは美しいジュリアと『出会い』、猛然とアタックをしかけるのだが?倦怠期の夫婦マルコとバルバラは、『すれ違い』を何とか修復しようと試みるが、事態は悪い方へと転がって・・・。オルネッラは自分達の結婚生活に満足していた。しかし偶然夫の浮気現場を目撃、彼の『よそ見』が許せないオルネッラはある行動に出る。妻に棄てられたゴッフレードは、余りのショックから立ち直れない。書店で見つけた『恋愛マニュアル』を購入するが、『すてられて』の章は余り彼には合っていないようだった。恋愛における4つの要素を軸に、4組の男女が恋愛マニュアルによって紐解かれていく。

イタリア映画の割りにはアクがなくて(笑)、無難に面白かったかな〜と言うところ。こういう無難さは安心できるのだが、強烈な印象が残る面白さには繋がらないのが残念。『ハリウッド以外で何か面白い恋愛映画は?』と聞かれた時に、迷わずお勧めできる作品ではある。十分にヨーロッパ的であり、面白さにそつもなく取り付きやすい、ラストも誰もが納得の展開だろうし。
万人受けする解り易さと面白さ、それでいて悪ふざけがすぎないコミカルさ、人間臭くてスマートな、実にイタリアらしい恋愛模様の描き方。このテイストは何となく馴染みがあるぞ?と思ったら、『踊れトスカーナ!』の脚本家・・・の監督(&脚本)作品!どおりで(笑)。
上記の映画で強烈に印象に残っている部分も、そのイタリアらしい恋愛テクニック。いやはや、クッションを抱きしめて、『きぃ〜っ!』となりながら観ていたものだ。特にイタリアに於いては、男性のテクニックの方が遥かに上だと思われる。というより、女性は男性に任せておける美しさがあるから良いのだ。だからコチラは、ただ見て『きぃ〜っ!』と、羨ましがるしかない(笑)。
イタリアの恋愛映画を見ていると時折思うのだが、あえて醸し出す人間臭さやドン臭さ、計算しているくせに、あたかも無計画なように見えるさり気なさがあると思う。気が強い女性が多いからなのか(笑)、どこと無く頼りなげな雰囲気を装いつつ、その実男性側の押しは、他のどの国より強い!愛情をアピールするにおいても、飽くなき赤裸々さがあると思われる。
その反面、『すれ違い』のエピソードに見られるように、ダメとなったら絡まない事この上ない。なんとも、感情に素直な国民性が窺える。浮気に関しても、男性なら実に85%も浮気すると!?映画で言ってしまうぐらいだから、それなりに筋の通った統計による数字なのだろうが・・・なんともはや。痴漢が文化な国だものねぇ・・・。浮気より遅刻の方が罪が重いと、アンケートで出ちゃうぐらいだものねぇ・・・。んで、『よそ見』における浮気夫の態度も、なんとも天晴れな開き直りの態度であるが、対する女性の仕返しも面白い(笑)。あそこまで出来れば、気も晴れそうだ。
やはり私は、ラストのエピソードが一番良かったかなあ?それと最初ね、若い恋♪そもそも『踊れトスカーナ!』では、その台詞の巧みさと、台詞と絡めた小粋な演出が堪らなかったのだが、その雰囲気を一番良く感じられたのが、このラストのエピソードだったのだ。
なんと言っても二度見返したくないぐらい悲惨なのは、第二章目の『すれ違い』。余りにも悲惨極まりなく感じたのは、私自信も似た経験を何度と無くしているから・・・。はぁ、身につまされる。
劇中は小ばかにされる扱いだった『恋愛マニュアル』。人間の気持ちが濃く深く関わる事柄に、マニュアルなんて馬鹿らしさの極み!というスタンスだったのだろうが、ラストから鑑みるに、これも中々捻りの聞いたオチに利用されていたのではないかと?
何にしろ、鑑賞後には、あのマニュアルを手元に置いておきたい気持ちになっていた。私の場合はやはり『出会い編』なのだが、今後のためにも、全編揃いでぜひとも(笑)。

イタリア的、恋愛マニュアルイタリア的、恋愛マニュアル
(2008/01/25)
ジョヴァンニ・ヴェロネージ

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ぽすれん『イタリア的、恋愛マニュアル』紹介

『ウェイトレス 〜おいしい人生のつくりかた』

2008年05月07日 21:08

〔米〕WAITRESS (2006年)
監督:エイドリアン・シェリー
脚本:エイドリアン・シェリー
ケリー・ラッセル/ネイサン・フィリオン/シェリル・ハインズ/エイドリアン・シェリー/ジェレミー・シスト/アンディ・グリフィス/エディ・ジェイミソン/リュー・テンプル/ダービー・スタンチフィールド

道路沿いのダイナーでウェイトレスをしているジェンナは、パイ作りの天才。いつか自分の店を持ちたいと、漠然と思っていた。その前には、我侭で子供のような夫アールから逃げなくてはならないのに、あろう事か『妊娠』してしまった。それでも逃亡計画を辞めるつもりは無く、夫には内緒で産婦人科へ行くことにした。着任したばかりのポマター先生は誠実で優しい雰囲気で、ジェンナに特別な好意を感じたようだった。妊娠で問題が一気に膨らんだジェンナは、まるで逃避するように、ポマター先生と道ならぬ不倫の関係の深みにはまってしまう。

アメリカ公開時、口コミで広がって話題を呼んだ作品。『女性が作る女性のための』と冠が付きそうな作品ながら、素朴な雰囲気が好印象を抱かせた。この映画が持つ女性らしさ、根は強く逞しく、でもどこか自分に甘い憎めない人間性。世に多く受け入れられてきた女性像は多々あれど、これほど『等身大』の存在感も珍しい。尊敬に値する女性たちの姿を観て感動する場合もあれば、こうして、余りにも身近な存在に強い共感を覚える場合もある。大方の女性が持つであろう脆さと強さが、主人公ジェンナに対して程よく描かれている。
夫アールに代表される男性像も、極端ではあるが、女性の目を通した『等身大』の姿として細やかに描かれていた。アールは最悪亭主の代表、ポマター先生は、既婚者でなければ理想のお相手像だろう。アールはかなり極端な精神未発達の我侭男だ。他人への愛情には鈍感で、自分に向けられる愛情には敏感。きっと多くの女性が自分のパートナーに対して、『子供だなあ』と感じた事があるはず。無いと断言できる人がいるなら、その人はかなりの果報者だ(笑)。
ジェンナが成長するために、ポマター先生との『不倫』関係が上手く使われている。ラストでは、甘さを捨てるというよりも、ジェンナが自分の可能性に歩み寄ったと感じさせる素朴さがまた良い。出産によって『母』となる変化もコミカルに描いているから、受け入れ難いベタベタ感が無い。
男性によって変わってしまう愛し方、それは男性にしても同じだろうが、とりわけ女性はパートナーに左右されやすいのだろう。最高と最低を垣間見たジェンナ、ウェイトレス仲間の友人も色々と問題を持っているが、愛すべき明るさを持った女性たちだった。台詞も重すぎず軽すぎず、伝えたい事をしっかりと伝えている。時にこうした完成度の高い脚本に出会うが、それは脚本家が、長年頭の中であらゆる側面を考慮し、精査し、磨き上げ続けた結果だろうと思う。締め切りに追われる事も無く、『いつか』という夢を持ち続けて、脳内で描かれ続けた物語。
結婚して、妊娠して、母になる事、世間一般の『幸せ3拍子』を仏頂面で受け流す主人公。相手ありき、そして相手に左右される幸せや人生ではなく、自分自身で選択し、作り上げ、手に入れる幸せがあるのだという、ちょっと変わった表現でのメッセージだったのかも知れない。
私はこういう、明るくて前向きな才能の喪失に滅法弱い。こんなに素朴で真摯で、最高に楽しい映画を作れる女性が、その才能が失われた事に耐え切れない。この先もっともっと素敵な映画を作ってくれたかも知れないのに!と思うと喪失感に苛まれる。ヒース・レジャーしかり、失われてはいけない才能が、不慮の事故で失われていく・・・。監督のご冥福をお祈りいたします。
しかしね、この映画はこんな湿っぽい感じで締めてはいけない気がする。それだとこの映画も、監督の意志も貶めてしまう気がする!という事で、ジェンナが作るパイは猛烈に甘そうだったけれど、この映画の甘さは控え目。素材の味を存分に生かし、甘みも自然の素材から。飾りつけは控え目に、中身の充実にこだわった、シンプルだけど贅沢な雰囲気が漂う仕上がり。まさに、隠れた名店の至高の作品のような本作、その味わいをご家庭でどうぞ。

ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた (初回生産分限定“幸せなパイのレシピブック”付)ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた (初回生産分限定“幸せなパイのレシピブック”付)
(2008/03/07)
ケリー・ラッセル

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