『灯台守の話』

2008年05月16日 23:45

ジャネット・ウィンターソン著/岸本 佐知子 訳/白水社
幼いシルバーは母と2人暮し。崖に斜めに突き刺さった家に暮らしていたから、母は滑り落ちて亡くなってしまった。孤児となったシルバーは、灯台守のピューに引き取られた。灯台には話が付き物と、ピューが語ってくれる幾つもの話。次第にシルバーは、自らも語る事を憶えていく。とりわけピューの話で興味深いのは、町の司祭だったダークの話。二重生活を送るダークの、心の闇を覗き見るシルバー。果たして、彼女がダークの人生に見たものとは?

本屋で偶然見かけて、粗筋を読んでみると中々面白そうだったので借りてみた。私の固定概念として、灯台はドラマ性があるのだ。なんかこう・・・灯台の存在意義が、その外観から与える印象が、特異な生活様式、あらゆる要素何もかもがドラマに繋がる気がする。灯台自身が多くの物語を生み出すとは常々感じて来たし、灯台は、かなり使い勝手の良いアイテムだと思う。だから『灯台』絡みの作品は、何でも大抵面白いはずだという、私の『灯台理論』。
この作品は、雰囲気が3つのパターンに別れていたように思う。まるで児童小説のような語りと精神性を持ったシルバー部分、ゴシック調で主人公の心理状態を深く抉り、物語調の強いダーク部分、この2つの物語を繋ぐのがピューと灯台の存在だ。そして時折、著者自らの語りのような、文学的雰囲気の強いパートが差し挟まれる。何となく、著者の気持ちのままに、描きたいように描いたと感じさせるが、それでも、絶妙なバランスでまとまっているところが凄いと思う。
まず第1には、どん底からの再生と誕生の物語だ。主人公シルバーは何も持たず、何も与えられず、結果的に文字通り『自らの力』だけで大人になっていったと言える。シルバーが与えられたのは唯一、『物語る』ことだった。読書中何度も、この話は『著者自身である』と思えた。そしてこの物語の中で、灯台は様々な役割を担い、あらゆる事柄に繋がるものとして形を変える。
そして2種類の、『愛すること』という主題が含まれている。バベル・ダークという二重生活者の、ただ純粋なる男女間の愛。シルバーが得る事になる、人生における様々な『愛』。愛し方と、その愛の行方を追う姿勢の違いが、交差し、突き放されつつ語られるシルバーとダークの物語の、結末の大きな違いを導き出したのだろう。
私は単純だから、いや違うか、単にロマンチストだから(笑)、ダークの物語により興味を惹かれた。ダークの持つ二面性、それゆえに人間らしいと思える男ダーク。奇麗事ばかりではなく、シルバーのように屈託ないままでもいられない。あらゆる人に備わっているだろうこの二面性を、率直なまでに表現してしまったダークの苦悩、なんとも魅力的な男に感じた。
最も私の心に強い印象を残したのは、その言葉遣いの上手さだ。流麗と言うほど華美ではなく、女性的と言い切るほど甘ったるくも無いのだが、非常に綺麗な言い回しをする作家だ。単純な描写に於いても、時折はっとするほど印象的な文章に仕立てていて、文学作品に特有の回りくどい描写を感じさせない、私にしては珍しい感想だが、非常に音楽的な文章を書く人だと感じた。
不協和音から始まって、徐々に融和を見せる交響曲のような流れ、最後には主旋律だけが静かに残り、爽やかさと一抹の切なさを残す、印象的で綺麗な結びへと運んでいく。短いが満足の行く時間を過ごせた気持ちになる、優れた作品だった。

灯台守の話灯台守の話
(2007/11)
ジャネット・ウィンターソン

商品詳細を見る

話題の2人?この勝手な見解(笑)

2008年05月16日 23:42

現在行われているカンヌ国際映画祭。私の苦手な映画祭(笑)。いやいや、ここ最近は、結構好みの作品が選出されたりしているので、個人的注目度も増している。
さて今回、フェルナンド・メイレレス監督の『ブラインドネス』がオープニング作品とコンペ部門で参加。18年ぶりとなる、オープニング作品の日本人参加が話題になっている。しかし・・・日本人参加というだけなのに、日本のマスコミの騒ぎようは・・・如何なものかと。日本人が主役の映画と勘違いしてしまいそうな報道、必死だな・・・。

しかも、記者会見に於いて話題の2人が、『一切日本語を使わなかった』とニュースに載る。ううむ・・・、世界で活躍する多くの俳優達は、例えどこの国出身でも英語くらい話せますってば。スポーツの世界でもそうなのだが、日本人は世界を舞台にしていても、語学が追いついていない場合が多い。日本の英語教育の薄弱さを感じると共に、私自身も、英語も話せないのに海外にのこのこ出かけていくので、偉そうな事は全く言えない(笑)。

さて、木村佳乃さん。私この方好きです(笑)。デビューした頃から、知的な感じの美人だなぁと思っていた。あの、達観した雰囲気も結構好きだ(笑)。確かドイツ生まれとか、話題になっていなかったか?帰国子女扱いで、語学能力の話題は兼ねてからあった気がする。その演技は余り見た事はないのだが、確か結構落ち着いた演技をする方だったような?狂騒的な芸能活動とは一線を画し、順調に女優としてのキャリアを積んでいる印象のある方だ。
対する夫役の勢谷友介さん、以前から、実は、この方の話を日記に書こうと思っていた・・・。いえね、あのガムのCM。あれは酷いよね、名前よりあのCMの印象が強く残っている方、多いのではないだろうか?以前会社で、『ガムのCMに出てる口臭い人』と言ったら秒速で理解した友人。以来ずっと『口臭い人』と言ってしまうが、母に言っても、通じた。
しかぁし!時折DVDの予告編集で見かける彼の演技は中々良さそうな雰囲気で、あのCMはいまいちだが、良く見りゃ結構男前。こちらも、周囲の雑踏は気にせずに、確かな道筋を目標を持って歩いている、といった印象だった。その彼が、米国留学していたとは、なるほどね。
そんな訳でこのお2人に関しては、知的そうな印象とそれを裏付ける根拠、加えて、周囲の騒ぎには乗じないマイペースさがあるような気がしていた。自分の求めるものがはっきりしているのかも知れない、選択の正しさも、それを証明しているのではないだろうか。

前回が余りに酷すぎたせいか、今回は出るべくして出た日本の若い力、という気もしている。とは言え前回だって、河瀬直美監督が『殯の森』で審査員特別大賞を受賞しているし、同監督はやはりカンヌで、10年前にカメラドールを受賞しているというのに、、、、サルだとか弁護士とか大きい日本人とか、騒ぐ場所が違うのよね。。。

さてさて、そんな話題のお2人は、私生活でも話題を提供されているそうで。交際が発覚!?良いじゃないですかぁ。余りゴシップには興味が無いが、こういう、才能に惹かれあったような若い2人を見ていると、なんだか無性に羨ましくなる(笑)。
先に書いた勝手な見解から、非常に似たところのある2人のように感じるのだが、道理の解った真っ当な大人という雰囲気も、また好ましいのだ。頭のネジが数本足りないような若いカップル(中年もたまにいますよね)が、お茶の間を騒がせる事には全く興味が無いが、こうした理知的なカップルが話題になることには興味がある。お互いそうして高いところを目指すと言うのも、なんだか微笑ましい・・・いや、羨ましい・・・。
とにかくこの2人なら、日本の演劇界を多少は世界に認知させられる、有望な存在になってくれるのじゃないか?と、勝手に期待しつつ(笑)、更なる活躍をお祈りしている。
それにしても・・・同じ道を志すその姿勢、才能が呼応する関係・・・羨ましいなぁ(しつこい?)


最近の記事