This Archive : 20080526

『不完全なふたり』【ラストがネタばれ!】

〔仏/日〕UN COUPLE PARFAIT (2005年)
監督:諏訪敦彦
構成:諏訪敦彦
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ/ブリュノ・トデスキーニ/ナタリー・ブトゥフ/ジョアンナ・プレイス ナターシャ/ジャック・ドワイヨン/アレックス・デスカス/レア・ヴィアゼムスキー/マルク・シッティ ローマン/デルフィーヌ・シュイロット アリス

周囲の憧れのカップル、マリーとニコラは結婚15年目。完璧な夫婦だと思われていた2人だったが、実情は寂れ切っていた。離婚を決意した2人は、長年暮らしているリスボンから故郷フランスへと、友人の結婚式のために戻ってくる。旅行と言う新密度から逆に、無用な緊張状態に晒された2人は、言い合い、突き放しながら、今までの、そしてこれからの関係を見つめ直していく。

ヨーロッパで絶大な人気を誇るという諏訪監督、『パリ、ジュテーム』でも、唯一の日本人監督として参加を果たしている。その監督が、完全フランス・ロケ、ヨーロッパの役者を使い、全編フランス語の台詞で挑んだ本作、興味だけがやたらと先立っての鑑賞だった。
脚本は無く、その場のリハーサルによって展開を作っていくのがスタイルだそうだ。某中国人監督さながらだな・・・。だからなのか、いや間違いなくそうなのだろうが、余りにも典型的なこじれたカップルの姿が全編に溢れている。なんとも、胸が痛いやら居住まいが悪いやら(笑)。主演のV・B・テデスキは結構好きな役者なのだが、そうか、彼女もこういう典型的にこじれた恋愛を経験しているのね・・・とニヤリ。
お互い言いたい事を言い切るだけで、『話し合い』にはなっていない2人。怒鳴り合いにはならず、どちらかの言い分が激しい時は、不必要なほど相手は冷静で、だからこそ言いたいことは言えるのだが、全くスッキリしないのだ。不満はいや増すばかり。相手のことを思うから、愛は冷めてはいないから、気持ちを受け止めて欲しいのに・・・、どうしてあなたは聞いてくれないの?どうしてお前は弱さを見せないんだ!?・・・ああ・・・・・まどろっこしい!!!
まぁだから結局、そういう2人の物語。そんな作り方だから、格別捻りも深淵さも無い。この作品を観て、大方の観客が最も強く感じるのは、『思い出したくない過去』なのじゃないだろうか?女性はマリー、男性はニコラに己の姿をダブらせて、なんだか嫌な汗でもかいてしまいそう(笑)。
ラストは嫌いじゃない、むしろ好きな雰囲気と展開だ。しかしこれほど先の展開を予測させ、また『一時的』としか思えないハッピー・エンドも珍しいのでは?個人的には、最後までマリーとニコラが『話し合い』をしなかった事が気にかかった。
お互い愛情があるのは解るのに、不満をぶつけるだけ。周囲にとって理想のカップルだった2人だが、そうであり得たのは、間違いなくお互いのプライドの高さからだったのだろう。自分たちの傷を頑なに隠そうとするプライド、そのプライドは、そのままお互いの関係に大きな楔を打ち込んで、結局2人は、その邪魔なものを取り除ける努力を一切していない。
表面的な失態はあったかも知れないが、心底から人間らしい醜態は見せていないのよ。プライベートで、たった2人だけであっても、演技するかのように『自分』を曝け出さなかった2人。だから彼等はこれからも演技を続け、『危機を乗り越えた2人』を演じ続けるのだろうが、いずれまた鬱憤は溜まる。そしてまた、自分は見苦しくはならないけれど、相手にだけ曝け出す事を求める諍いが始まるのだろう。。。不毛だなぁ、マリーとニコラ。面白く興味深く観られたし、演技も良かった。演出や映像も雰囲気にとても合っていたのだが、なんとも不毛な愛の姿だなあと、妙な後味の悪さがあることは否めない。

不完全なふたり不完全なふたり
(2008/02/08)
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ

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ぽすれん『不完全なふたり』紹介
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Category : 映画【ロマンス】 | Thema : DVDで見た映画 | Genre : 映画 |

『白夜』

フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー著/小沼 文彦 訳/角川文庫
ペテルブルクで暮らす青年は深い孤独の中にあり、人々や物との付き合いを空想の中に見出し、次第にその深みに埋没していた。しかしある夜、彼はナースチェンカという女性を助ける。それをきっかけに2人の友情は深まっていくものの、彼は募る思いを打ち明ける術を持たなかった。そしてナースチェンカは、遠くにいる恋人の秘密を打ち明け、彼に助力を求めるのだった。

もう今更この著者の作品に至っては、私如きがとやかく言う事も無いだろう。長いこと『カラマーゾフの兄弟』が読みたいなぁ・・・と思っている。『罪と罰』に至っては、かれこれ3年ほど前から手元にある。・・・いぃ〜の!!!私はロシアの巨匠の、こういう小ぶりな作品が好きなのだ。
静謐とも表現できそうな落ち着き、余計な飾りを排除したような朴訥な文章。それゆえに短く、しかし中身の濃い短編に仕上がっている。奔放さと純粋さを兼ね備え、かつての繁栄を僅かにに匂わせ、それでいて庶民らしさが満ちている物語の世界。私自身が『ロシア』に対して抱いている印象がかなり大きく手伝ってはいるのだが、どこか閉鎖的な印象があり、そのぶん幻想的な味わいもある作品が多い、、、ような気がする(笑)。
とまぁね、なんだかんだ小奇麗にまとめようと思いつつ、主人公は『空想癖』の大分進行した男だ。空想のし過ぎで現実生活の記憶がぶっ飛んでる、現実逃避を乗り越えて、よもやトリップ状態。はっきり言わせて頂くと、単なる『妄想』だよね、まずヤバイんですってば。
それなのに、ああ、それなのに、どこまでも清純で胸が痛む程の美しさを感じるこの片思い。『妄想』を、確実に正当化できる高みに引き上げる筆致の巧みさ。己の妄想を延々と語る青年の言葉の奥に、彼が無意識に耐え忍んできた孤独が強烈に見えてくる。
生身の愛する相手を手に入れた青年が、程よく生気に満ちて現実に立ち戻っていく様、ナースチェンカに対する溢れ出る愛情を一心に、しかし絶望的に語るその気持ち。様々な恋愛小説を読むが、こうした古典の率直さや純粋さに勝る切なさは無い。
大体ねぇ・・・私もかなりの妄想癖所持者だから(笑)、主人公には妙な親近感よ。さすがに現実生活の記憶が無くなるほどではないし、現実社会への満たされない憧れを、妄想で回復させようとリアルな想像を張り巡らしたりはしないが、いや、でも解るよ(笑)。
この妄想・・・じゃなくて『空想癖』というのは、ドストエフスキーの作品では重要な人物特徴の一環らしいのだが、この作品に至っても、罪の無い空想を通して主人公の孤独を描き出し、しかしその空想に安らぎも感じさせ、必要不可欠な存在であると読者に認識させながらも、、結果的にはやはり、主人公には空想を持たない常人よりも痛烈な孤独が迫ってくる事を感じさせる。
隠喩的使い方でも無いのだが、その内容では無しに、空想するという行動自体よって、主人公の置かれた立場や存在感が幾重にも変わるように感じた。しかしその根底に根ざして、決して薄れる事の無い孤独というものが、何故かこの物語に美しさと現実感の無さを与える。はぁ〜、やっぱり良いよねぇ、時代に淘汰され、今尚読み継がれる巨匠の名作というのは、とにかくじっくり楽しめる。古のロシア、白夜の夜に、遠く橋の欄干にもたれ掛かる1組の男女。時刻は遅いはずなのに、いやに明るく見える彼等の姿・・・。そんな幻想的な風景を想像しつつ、最近の倦み疲れた私の脳には、実に有意義なエクササイズ効果があった。巨匠サンキューなのだ。

白夜 (1958年) (角川文庫)白夜 (1958年) (角川文庫)
(1958)
ドストエフスキー

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  • Author:hiyo
  • たった二つの趣味、映画と読書を中心に、日記を書いてみたいと思います。
    最近、自分の時間を充実させたいな、と結構真剣に思っていたりして。文章を書くのも結構楽しいし、誰かが通りすがりに読んでくれたら、嬉しいかな、とか思っている。


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