『甘美なる危険』

  • 2008/03/28(金) 22:36:29

マージェリー・アリンガム著/小林 晋 訳/新樹社
バルカン半島にある小国の王位継承者として旅をする、通称アルバート・キャンピオン氏とその一行、実は彼等、秘密任務の遂行中だったのだ。その小国の正式な継承者を探り出し、加えて戴冠に必要な書類や王冠を探し出さねばならない。鍵はポンティスブライト伯爵の末裔が住む村にあるらしい。しかし伯爵の末裔は水車小屋で暮らす貧乏貴族。その継承権も明らかにされていなかった。しかし次々と明らかになる事実、そして深まる謎に冒険家の血が騒ぐキャンピオン。伯爵の子孫でもある活発な娘アマンダを副官に、次々とやってくる悪漢に挑むのだった。


英国4大女流推理作家の内の1人だそうだ。という事で本国のみならず世界中で著名なのだろうが、日本では余り紹介されていない様子。私は初見だった。4大・・・?ドロシー・L・セイヤーズ(我が麗しのウィムジー卿♪)、アガサ・クリスティ(灰色の脳細胞は不滅です)、そしてこのマージェリー・アリンガム、はて、もう1人は?どうやらナイオ・マーシュというらしい。こちらに至っては全く・・・あら、、、アレン警部シリーズってのは知っている。何となくだけど(笑)。その作者なのね。
M・アリンガムはセイヤーズ、クリスティと同時期に活躍したらしいが、本作を読んで思ったのは大分新しい雰囲気があるという事。後書きに詳しいが、本作で初登場するヒロインのアマンダも、服装や話し方などが非常に現代風だ。確かにハリエット・ヴェインなども思いっきりフェミニストなのだが、この場合ピーター卿が妙に古風なので差し引きゼロというか、やはり古臭いイメージが付きまとう。ポアロもやはり、1930年代のイメージが強い。
こちらはアルバート・キャンピオン・シリーズ。世界を股にかける冒険家で、理知的で感情を余り表に出さないタイプ。恐らく爵位を持っていて、恐らく次男以下。使用している名前は本名ではなく、あくまでも素性は読者に隠されている。しかしふとしたところに育ちの良さを漂わせる辺り、著者の遊び心を感じさせる。
普段はボケた面で危険を感じさせない雰囲気をまとっているらしいが、いざともなれば頼りになりそうな表情を伺わせる辺りも、女性読者を十分に配慮した設定だろう。細かい描写は少ないが、それから推察するにスラリと細身の長身。目を引くハンサムではないが、金髪で劉とした顔立ち、まさに良家の血筋がスラリとした鼻筋から推察されそうな凡庸な美男子と言ったところかな。
仲が良くチームワークも良い友人達と事件を解決するので、一匹狼の気は無いが、集団の中にいてどこか孤立感を感じる描き出しだったのが興味深かった。そして、こうしたシリーズに欠かせないワトソン役、ヘイスティングズ、いや、愛しのバンター、、、いや、どちらかと言ったら粗野なジーヴスのような主従関係の執事もいる。ヘイスティングズ役ならガフィーが適役。
物語は幾つもの謎解きと、悪漢との戦いという冒険要素が満遍なく。村医者のエピソードはちょっと余計だったかなと思いつつも、野心的な著者の意気込みも感じられたように思う。魅惑の小国を巡る数々の危機、壊れかけた水車小屋、キャンプを張る悪漢たち、強敵と思われる大物の存在などなど、魅力的要素は満載だ。
個人的には幾分ステレオタイプ過ぎて個性に欠けるか?とも思ったが、次作は既に入手済み(笑)。今後もこのシリーズ、楽しんでいく事に決めた。

甘美なる危険 (新樹社ミステリー)甘美なる危険 (新樹社ミステリー)
(2007/12)
マージェリー・アリンガム

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