『ラム氏のたくらみ』

  • 2008/04/09(水) 23:38:13

キャリー・ブラウン著/堀内 静子訳/早川書房
イギリスの小さな村ハーズリー、村の郵便局長ノリス・ラムは、これまでの人生、女性に縁は無かったが、概ね満足なものだった。ところが、人類が初めて月面着陸した日、ラム氏の55回目の誕生日のその晩、彼は月夜に照らされて踊る美しい女性ヴィーダに恋をしてしまう。村の有力者の息子マンフォードは知恵遅れの青年で、ヴィーダは20年以上もマンフォードのナニーとして暮らしてきた。そんなヴィーダに激しい恋をしたラム氏、中年になって初めて知った恋の威力に戸惑いながらも、何とかヴィーダの心を掴もうと奮闘する。


う〜ん??癒しとかホロリとする恋物語とか・・・。誇大宣伝という気がしないでもないなぁ。私にはかなり冗長な作品だった。ラム氏とヴィーダの出来事が交互に語られるのだが、同じ輪の中をぐるぐる回っているような感じで、物語が中々進まないイライラ感があった。
ラム氏は大方ヴィーダの事で頭が一杯で、その行動も思考もヴィーダ一色なのだが、当のヴィーダの方はマンフォードの事や異国に暮らす叔父の事、これまでの人生やこれからの人生などなど語るべき要素は色々用意されていた。
それでも第一には、マンフォードに対する愛情に関する言動が多いのだが、いかにマンフォードを慈んで育ててきたかという、似たような(ほぼ同じ?)記述が延々と続くのね。子供の頃にマンフォードがどうしたこうしたというエピソードは良いが、結果的にヴィーダが戻っていく感情や行動に変化が無いために、何度も同じ結論、同じ行程を読まされている気がして、最後の方はもう解ったからと、ヴィーダはマンフォードを愛しているのね!と、ハイ次行って!とね(笑)。無条件の母性的愛情は確かに感動的なものだが、何事も過剰は無駄を生む。
ラム氏が行動を起こすまでも長い、かと言ってヴィーダの何が良いのかとか、狂いそうなほどの慕情を表しているのではなくて、、、なんだかグルグルと、『55歳になって初めて恋を経験した』という戸惑いを、手を変え品を変え語っていただけに思えた。こちらもこちらで、戸惑っているという感覚を繰り返すだけで、だからどうしたという行動論は、物語も後半遅くまで語られない。
例えばそれが、雑踏を忘れるほど巧みな文章で描かれていればまぁまだしも、格別際立った筆致でもなかったのが残念。ラストはそれなりに安心感と希望のある展開だったと思うのだが、そこに至るまでが精神的に長すぎて、感銘を受けるほどの心の余裕が無くなっていた感じ。
ダラダラと続く中途半端な記述を読みながら、ずっと脳内で考えていた事がある。それはこの小説の配役。何故か、マンフォードの外見の描写を読んだら頭に浮かんだ(笑)。ズバリ、ギャスパー・ウリエルならピッタリだ!そう考えると、ヴィーダはエミリー・ワトソン、ラム氏はジョン・タトゥーロで決まり。個性的過ぎますか?濃いですか?

ラム氏のたくらみラム氏のたくらみ
(2001/02)
キャリー ブラウン

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