『戦場のピアニスト』

〔仏/独/ポーランド/英〕THE PIANIST (2002年)
監督:ロマン・ポランスキー
原作:ウワディスワフ・シュピルマン
脚本:ロナルド・ハーウッド/ロマン・ポランスキー
エイドリアン・ブロディ/トーマス・クレッチマン/エミリア・フォックス/ミハウ・ジェブロフスキー/エド・ストッパード/モーリン・リップマン/フランク・フィンレイ/ジェシカ・ケイト・マイヤー/ジュリア・レイナー/ワーニャ・ミュエス/トーマス・ラヴィンスキー/ヨアヒム・パウル・アスベック

ラジオのピアニストとして活躍していたウワディスワフ・シュピルマンは、激化する戦争と侵略してきたドイツ軍によって、家族共々ゲットーへの移住を余儀なくされる。一家揃って、帰りの無い収容所送りにされる直前、友人に命を助けられ、家族とは離れて生き残るウワディスワフ。一旦はまたゲットーに戻ったものの脱出に成功し、友人達の助けを得ながら、ポーランド開放の時を待ち続けた。そして、あるドイツ将校との出会いが、彼の生死を大きく分けて行くのだった。

なんだか急に、E・ブロディの映画が観たくなって借りてみた。実は私、E・ブロディの映画は1本まともに観た事が無いのだ。恐らく、『ダージリン急行』は観るだろうし、ベン・アフレックの演技がかなり良いらしいので『ハリウッド・ランド』も遠からず・・・、と思ったのがきっかけだ。だったらば、まずは彼を世界に知らしめた、かの大作を観てみようじゃないのよ、とね。
ちなみにR・ポランスキーに関しては、実際余り良い印象が無く、どちらかと言ったら・・・周囲が騒ぎすぎ?という失敬な気持ちが無いわけでも無く。しかも本作の規模、レベル、題材から言って、酷い出来であろうハズが無いという予測から、何となく観渋っていたのだ。
さて、率直に映画の感想は・・・?物語に対しては、今更色々言えるものでも無いよねというのが本音。というか、色々言いたくなるような真新しさは無く、かと言って『ありがち』だなどと切り捨ててしまえる軽い話でもない。ただもう、壮絶なまでのリアリティに苦しくなったというところかな。いかなる柔さでも包まれていない、この壮絶さは、自信もゲットーに入った事で有名な監督の、何だかの訴えなのか?それとも、単に真実を伝えたいという芸術的根性なのか?
原題タイトルも『THE PIANIST』であるが、これはあくまでも主人公がピアニストであったというだけだろう。強いて言うなら、ピアニストだった主人公の、他とは少し違う人脈によって救われた部分はあったかも知れないが、格別、音楽の為に生き抜いた、という強調は見られないと思った。
主人公がピアニストという枠を超越して、ただ生き残るためだけに生きたその時間。120分を超える長い映画ではあったが、やはり私は飽きもせず、食い入るように観てしまった。
驚くほどこの映画に関する評価はまちまちだ。拒否派は概ね『今更感』を強く感じ、かつ、何もせず幸運に委ねられたように生き残った主人公に憤慨しているようだが、いやそれはちょっと待ってよとね。確かに、ゲットーを脱出して叛乱に加わらなかった主人公に男気を感じられないかも知れないが、そうした事柄でこの映画を切り捨ててしまうなら、同じ立場に立たされたらどうするだろう?と言う他無い。謀反の計画を知っていても、助けてくれる友人の存在があったなら、果たして人はどういう決断を下すだろう?ああして生き延びた人は、当時大勢いただろうと思われる。それを安に責めるのは、口だけなら簡単だろうと思う。その裏にあった葛藤や苦悩などが、余り丁寧に描かれていなかったのがいけないのだろうか?
良い映画で安心感もあったので、色々と思考が散り散りになってしまった。例えば最近私は、こうした映画でドイツ兵の役を演じる人達のことを考えてしまう。過去の傷、過去の一部の人々が犯した罪を、今尚背負う人々。この辺は日本人も同じだと考えているので、いささか複雑な心境になる。常に悪役としての需要がある事実、反論する余地の無い悪という罪を、国全体で背負っている人達の胸の内は一体?。こんな時、私のこの考えに光明を与えてくれた、ベルンハルト・シュリンクの『逃げてゆく愛』の中の一遍を、いつも思い出してしまう。
その他では、東欧におけるユダヤ人迫害の実情。これは上手く描けていたのではないだろうか。さもすると、ドイツ国内の迫害と似たりよったりで判別が難しい作品が多いが、これは、迫害されながら、かつ迫害もした、ユダヤ人ではないポーランド国民や国の姿も上手く描けていた。
そこから繋がる『ワルシャワ蜂起』。これが蜂起の実態だったのかと。昨年チェコに行った際、ガイドブックを読んで触りを知った。蜂起の後、ドイツ軍に完膚なきまでに破壊された町並みを、ヒビの1本に至るまで再現したというワルシャワ市民の熱意。その逸話にいたく感動した。この映画のような地盤があって、その話に繋がるのかとしみじみ。破壊されつくしたワルシャワの町並みを、映画はCGながら壮絶な静けさと迫力を持って伝えてくれる。実際の姿も、その迫力に劣らない悲壮さを持ち合わせていたものと疑う余地は無い
実際まだまだ言いたい事はあるが(結局あるらしい(笑))最後に、E・ブロディはこの役にピッタリね。そりゃ絶賛されるはず。ちょっといやらしい顔をしているが(笑)、死と直面しながら健気に行きぬくウワディスワフを、まさに体現していた。良い役者かどうかは、これほどのはまり役からは推察できないが、とりあえず手続き完了!という気分かな。

戦場のピアニスト戦場のピアニスト
(2003/08/22)
エイドリアン・ブロディ、トーマス・クレッチマン 他

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ぽすれん『戦場のピアニスト』紹介
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