『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
〔米〕THERE WILL BE BLOOD (2007年)
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
原作:アプトン・シンクレア
脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
ダニエル・デイ=ルイス/ポール・ダノ/ケヴィン・J・オコナー/キアラン・ハインズ/ディロン・フレイジャー/バリー・デル・シャーマン/コリーン・フォイ/ポール・F・トンプキンス
1900年代初頭、石油を掘り当て、着々と事業を大きくしてきたダニエル・プレインヴューは、ポールという青年から、自分の村には石油が眠っているという情報を買った。早速西部へ出向き、有望そうな土地を買い占めたダニエル。これが成功したら、これまでは比べ物にならない程の収益が入る見込みだ。小さな町には住人の信頼を集める牧師イーライがおり、彼はあのポールの兄弟だった。怪しい宗教活動には取り合わなかったダニエルだったが、油田は開始早々幾つかの不運に見舞われ、ダニエルの義理の息子H.Wは、爆発を起こした油井の衝撃で耳が聞こえなくなってしまう。苦難を乗り越えて着々と西部での基盤を築くダニエル、彼の行く手には如何なる障害も無いように思えたのだったが・・・。
まず最初に、この作品に原作(『石油!』)がある事を全く知らなかった。恐らくはこの映画のおかげだろうが、80年ぶりに復刊を果たしたそうだ。今から80年前に既に翻訳されていたとすると、小説の方は、作品の舞台とほぼ同じ時期に書かれた、当時なら『現代小説』だったのだろう。
しかも原作者を調べてみると、ますます興味深い。社会主義者としての視点から多くの作品を描いたそうで、そうなると・・・?究極の資本主義の体現、自由経済の申し子みたいなダニエルは、一体どういう描かれ方だったのだろう?これはもう、映画も全く違った見方が出来てしまうかも。
おまけに、巻末(だと思う)には柴田元幸氏のエッセイも付いてるとな?19cmで707ページ、さほど厚い作品でもないし、何より先月発売されたばかり、図書館でも綺麗♪借りる決定!
という事で映画の感想(笑)。残念ながら、私には主人公ダニエルという男が、全くもって理解できなかった。従って、ダニエルの人生を描いたこの作品は、全体的にいまいち理解不能だったという事になる。前回の『バベル』と良い、色々考えなくちゃならん映画は正直疲れる!
今回は友人と一緒に行ったので、鑑賞後に色々と検討できたのは面白かった。人の考え千差万別、実に色々意見の食い違いがあるものだ。いつも1人で悶々と考えて結論を出すので、むしろ映画より実り多い体験だったかと。
私の場合は、ダニエルが結構良い奴に見えたのだが、それはきっと、演じるD・D=ルイスへの賞賛と固定概念の成せる技なのじゃないかと。ダニエルがそもそも、完全なる悪であるなら、この映画もすんなり落ちるのではある。ただし、そうであるなら落としたくない・・・という、偽善的精神も無いわけじゃない。原作者のプロフィールを知ってみれば、映画はこのダニエルを、大分静かに落ち着いた描き出しにしていたのじゃないか?という懸念が湧き上がってきた。
物語に対する感想は、原作を読むまでお預けかな?
と言う事で映画として、音楽が良かった(笑)。音楽と言うか、今回のは簡潔に『音』だよね。まさにスクリーンと音が一体化して、1つの情感として画面から流れ出てくるようだった。冒頭の、押し殺したようなリズムだけが目立つ暗い音、これでこの映画が、全く感動的でも楽しいものでもない事が伝わってくる。伝わってくるだけじゃないのね、脳髄に叩き込まれる感じ。
場面ではダニエルが可愛い赤ちゃんとほのぼのと食事をしていたりするのだが、こちらの気持ちには全くそんな穏やかさは喚起されないの。音と映像の共鳴というか競演というか、音楽の持てる力の広域さを改めて思い知った感じだ。個人的にはヒッチコックの作品を思い出した。臨場感を盛り上げる、素朴だが的確に画面にマッチした巧みな曲使い。音楽によってストーリーが見えてくるのよね、ヒッチコックの作品って。
役者に関してはまずD・D=ルイス。この人ホント・・・何なんだろな。恐ろしく自然体で演技をしているからか、観客としてはつい騙されちゃうのよね(笑)。自然体なのは、役柄に入り込みすぎているからなのか?演技の境界線が見えない。だから今回も、迫力あるシーンでは思い切りビビらせて頂きました。嫌味な台詞を言うシーンでは、心底腹が立った、それこそ鳥肌が立つほど。対したP・ダノは、精神的に大丈夫だったのだろうか・・・。
んでP・ダノ。キワモノ過ぎ(笑)。そっちきちゃったか。個人的に一押し若手俳優、このblogでも何度か書いてきているが、今やハリウッドでも、、、一応?注目株。目指せ性格俳優路線になってきた感があるが、キレ系の演技のとき、何故か瞳に羞恥が見えた気がした(笑)。頑張れポール!完璧にキレる演技が出来るその日まで・・・、いや違うな、普通の俳優になって欲しい。
もう1つ、個人的に嬉しかったのはC・ハインズが出ていた事。ダニエルの腹心の部下といった役どころか、またこういう影のような役も良く似合う。いや〜、良いよね、1つの画面で渋いおじさんをまとめて堪能できるのって、本当に素晴らしいよね(笑)。
物語としての感想は持ち越しなので、映画としてはこんな感じで。音楽の使い方は良かったのだが、全てのネタが出揃うまでに1時間強を費やし、これで物語も勢い良く転がるか?と期待したら、その後もまだ2転ほど・・・。最終的に出揃った感が満たされたのはほぼ1時間30分を経過しており、そこから物語が始まった・・・と言えそうな構成。長かった・・・、長すぎた、私には。
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
原作:アプトン・シンクレア
脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
ダニエル・デイ=ルイス/ポール・ダノ/ケヴィン・J・オコナー/キアラン・ハインズ/ディロン・フレイジャー/バリー・デル・シャーマン/コリーン・フォイ/ポール・F・トンプキンス
1900年代初頭、石油を掘り当て、着々と事業を大きくしてきたダニエル・プレインヴューは、ポールという青年から、自分の村には石油が眠っているという情報を買った。早速西部へ出向き、有望そうな土地を買い占めたダニエル。これが成功したら、これまでは比べ物にならない程の収益が入る見込みだ。小さな町には住人の信頼を集める牧師イーライがおり、彼はあのポールの兄弟だった。怪しい宗教活動には取り合わなかったダニエルだったが、油田は開始早々幾つかの不運に見舞われ、ダニエルの義理の息子H.Wは、爆発を起こした油井の衝撃で耳が聞こえなくなってしまう。苦難を乗り越えて着々と西部での基盤を築くダニエル、彼の行く手には如何なる障害も無いように思えたのだったが・・・。
まず最初に、この作品に原作(『石油!』)がある事を全く知らなかった。恐らくはこの映画のおかげだろうが、80年ぶりに復刊を果たしたそうだ。今から80年前に既に翻訳されていたとすると、小説の方は、作品の舞台とほぼ同じ時期に書かれた、当時なら『現代小説』だったのだろう。
しかも原作者を調べてみると、ますます興味深い。社会主義者としての視点から多くの作品を描いたそうで、そうなると・・・?究極の資本主義の体現、自由経済の申し子みたいなダニエルは、一体どういう描かれ方だったのだろう?これはもう、映画も全く違った見方が出来てしまうかも。
おまけに、巻末(だと思う)には柴田元幸氏のエッセイも付いてるとな?19cmで707ページ、さほど厚い作品でもないし、何より先月発売されたばかり、図書館でも綺麗♪借りる決定!
という事で映画の感想(笑)。残念ながら、私には主人公ダニエルという男が、全くもって理解できなかった。従って、ダニエルの人生を描いたこの作品は、全体的にいまいち理解不能だったという事になる。前回の『バベル』と良い、色々考えなくちゃならん映画は正直疲れる!
今回は友人と一緒に行ったので、鑑賞後に色々と検討できたのは面白かった。人の考え千差万別、実に色々意見の食い違いがあるものだ。いつも1人で悶々と考えて結論を出すので、むしろ映画より実り多い体験だったかと。
私の場合は、ダニエルが結構良い奴に見えたのだが、それはきっと、演じるD・D=ルイスへの賞賛と固定概念の成せる技なのじゃないかと。ダニエルがそもそも、完全なる悪であるなら、この映画もすんなり落ちるのではある。ただし、そうであるなら落としたくない・・・という、偽善的精神も無いわけじゃない。原作者のプロフィールを知ってみれば、映画はこのダニエルを、大分静かに落ち着いた描き出しにしていたのじゃないか?という懸念が湧き上がってきた。
物語に対する感想は、原作を読むまでお預けかな?
と言う事で映画として、音楽が良かった(笑)。音楽と言うか、今回のは簡潔に『音』だよね。まさにスクリーンと音が一体化して、1つの情感として画面から流れ出てくるようだった。冒頭の、押し殺したようなリズムだけが目立つ暗い音、これでこの映画が、全く感動的でも楽しいものでもない事が伝わってくる。伝わってくるだけじゃないのね、脳髄に叩き込まれる感じ。
場面ではダニエルが可愛い赤ちゃんとほのぼのと食事をしていたりするのだが、こちらの気持ちには全くそんな穏やかさは喚起されないの。音と映像の共鳴というか競演というか、音楽の持てる力の広域さを改めて思い知った感じだ。個人的にはヒッチコックの作品を思い出した。臨場感を盛り上げる、素朴だが的確に画面にマッチした巧みな曲使い。音楽によってストーリーが見えてくるのよね、ヒッチコックの作品って。
役者に関してはまずD・D=ルイス。この人ホント・・・何なんだろな。恐ろしく自然体で演技をしているからか、観客としてはつい騙されちゃうのよね(笑)。自然体なのは、役柄に入り込みすぎているからなのか?演技の境界線が見えない。だから今回も、迫力あるシーンでは思い切りビビらせて頂きました。嫌味な台詞を言うシーンでは、心底腹が立った、それこそ鳥肌が立つほど。対したP・ダノは、精神的に大丈夫だったのだろうか・・・。
んでP・ダノ。キワモノ過ぎ(笑)。そっちきちゃったか。個人的に一押し若手俳優、このblogでも何度か書いてきているが、今やハリウッドでも、、、一応?注目株。目指せ性格俳優路線になってきた感があるが、キレ系の演技のとき、何故か瞳に羞恥が見えた気がした(笑)。頑張れポール!完璧にキレる演技が出来るその日まで・・・、いや違うな、普通の俳優になって欲しい。
もう1つ、個人的に嬉しかったのはC・ハインズが出ていた事。ダニエルの腹心の部下といった役どころか、またこういう影のような役も良く似合う。いや〜、良いよね、1つの画面で渋いおじさんをまとめて堪能できるのって、本当に素晴らしいよね(笑)。
物語としての感想は持ち越しなので、映画としてはこんな感じで。音楽の使い方は良かったのだが、全てのネタが出揃うまでに1時間強を費やし、これで物語も勢い良く転がるか?と期待したら、その後もまだ2転ほど・・・。最終的に出揃った感が満たされたのはほぼ1時間30分を経過しており、そこから物語が始まった・・・と言えそうな構成。長かった・・・、長すぎた、私には。
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