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『ウェイトレス 〜おいしい人生のつくりかた』
- 2008/05/07(水) 21:08:23
〔米〕WAITRESS (2006年)
監督:エイドリアン・シェリー
脚本:エイドリアン・シェリー
ケリー・ラッセル/ネイサン・フィリオン/シェリル・ハインズ/エイドリアン・シェリー/ジェレミー・シスト/アンディ・グリフィス/エディ・ジェイミソン/リュー・テンプル/ダービー・スタンチフィールド
道路沿いのダイナーでウェイトレスをしているジェンナは、パイ作りの天才。いつか自分の店を持ちたいと、漠然と思っていた。その前には、我侭で子供のような夫アールから逃げなくてはならないのに、あろう事か『妊娠』してしまった。それでも逃亡計画を辞めるつもりは無く、夫には内緒で産婦人科へ行くことにした。着任したばかりのポマター先生は誠実で優しい雰囲気で、ジェンナに特別な好意を感じたようだった。妊娠で問題が一気に膨らんだジェンナは、まるで逃避するように、ポマター先生と道ならぬ不倫の関係の深みにはまってしまう。
アメリカ公開時、口コミで広がって話題を呼んだ作品。『女性が作る女性のための』と冠が付きそうな作品ながら、素朴な雰囲気が好印象を抱かせた。この映画が持つ女性らしさ、根は強く逞しく、でもどこか自分に甘い憎めない人間性。世に多く受け入れられてきた女性像は多々あれど、これほど『等身大』の存在感も珍しい。尊敬に値する女性たちの姿を観て感動する場合もあれば、こうして、余りにも身近な存在に強い共感を覚える場合もある。大方の女性が持つであろう脆さと強さが、主人公ジェンナに対して程よく描かれている。
夫アールに代表される男性像も、極端ではあるが、女性の目を通した『等身大』の姿として細やかに描かれていた。アールは最悪亭主の代表、ポマター先生は、既婚者でなければ理想のお相手像だろう。アールはかなり極端な精神未発達の我侭男だ。他人への愛情には鈍感で、自分に向けられる愛情には敏感。きっと多くの女性が自分のパートナーに対して、『子供だなあ』と感じた事があるはず。無いと断言できる人がいるなら、その人はかなりの果報者だ(笑)。
ジェンナが成長するために、ポマター先生との『不倫』関係が上手く使われている。ラストでは、甘さを捨てるというよりも、ジェンナが自分の可能性に歩み寄ったと感じさせる素朴さがまた良い。出産によって『母』となる変化もコミカルに描いているから、受け入れ難いベタベタ感が無い。
男性によって変わってしまう愛し方、それは男性にしても同じだろうが、とりわけ女性はパートナーに左右されやすいのだろう。最高と最低を垣間見たジェンナ、ウェイトレス仲間の友人も色々と問題を持っているが、愛すべき明るさを持った女性たちだった。台詞も重すぎず軽すぎず、伝えたい事をしっかりと伝えている。時にこうした完成度の高い脚本に出会うが、それは脚本家が、長年頭の中であらゆる側面を考慮し、精査し、磨き上げ続けた結果だろうと思う。締め切りに追われる事も無く、『いつか』という夢を持ち続けて、脳内で描かれ続けた物語。
結婚して、妊娠して、母になる事、世間一般の『幸せ3拍子』を仏頂面で受け流す主人公。相手ありき、そして相手に左右される幸せや人生ではなく、自分自身で選択し、作り上げ、手に入れる幸せがあるのだという、ちょっと変わった表現でのメッセージだったのかも知れない。
私はこういう、明るくて前向きな才能の喪失に滅法弱い。こんなに素朴で真摯で、最高に楽しい映画を作れる女性が、その才能が失われた事に耐え切れない。この先もっともっと素敵な映画を作ってくれたかも知れないのに!と思うと喪失感に苛まれる。ヒース・レジャーしかり、失われてはいけない才能が、不慮の事故で失われていく・・・。監督のご冥福をお祈りいたします。
しかしね、この映画はこんな湿っぽい感じで締めてはいけない気がする。それだとこの映画も、監督の意志も貶めてしまう気がする!という事で、ジェンナが作るパイは猛烈に甘そうだったけれど、この映画の甘さは控え目。素材の味を存分に生かし、甘みも自然の素材から。飾りつけは控え目に、中身の充実にこだわった、シンプルだけど贅沢な雰囲気が漂う仕上がり。まさに、隠れた名店の至高の作品のような本作、その味わいをご家庭でどうぞ。
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ぽすれん『ウェイトレス 〜おいしい人生のつくりかた』紹介
ジャンル:
- 映画
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