『僕のピアノコンチェルト』【一部ネタバレ注意!】
〔スイス〕VITUS (2006年)
監督:フレディ・M・ムーラー
脚本:ペーター・ルイジ/フレディ・M・ムーラー/ルカス・B・スッター
テオ・ゲオルギュー/ブルーノ・ガンツ/ジュリカ・ジェンキンス/ウルス・ユッカー/ファブリツィオ・ボルサニ/エレニ・ハウプト/タマラ・スカルペリーニ/ノルベルト・シュヴィーンテック/ダニエル・ロール/ハイディ・フォルスター/クリスティーナ・リコーヴァ
計測不能と言われる程の高いIQを持つ天才児ヴィトスは、同時にピアノでも素晴らしい才能を見せていた。12歳になる頃には高校に通っていたため、同年代の友達もおらず、厳しい母親に制圧される毎日だった。唯一祖父と一緒にいる間だけ、ヴィトスにとって子供らしい楽しみが感じられる時間だ。ある嵐の晩、マンションの外で倒れているヴィトスが発見される。どうやらベランダから飛び降りたらしいのだが、その事故の後遺症で、知能が普通レベルになってしまった。ようやく普通の生活を手に入れたヴィトスだったが、彼の様子を嘆く母、仕事が上手く行かない父、老齢になって弱っていく祖父など、周囲の様子には暗雲が立ち始める。かつては天才児だったヴィトスは、家族を助けるためにある行動に出るのだが・・・。
単に天才少年の苦悩を描くという大枠以上に、様々に毛色の違うエピソードが組み込まれ、結構盛りだくさんな内容だ。それでも、煩わしい印象や詰め込みすぎという感じは無く、むしろ天才という要素を上手く使い、意外な方向に物語が展開していくのが面白かった。
しかしその反面、もう少し短く出来るかな?と思わせる冗長さもあった。特に、ヴィトスが幼少の頃が不必要に長い気が・・・。子役も、可愛いのだが演技は微妙で、幼少時代はステレオタイプナまとめ方をしていただけに、少しだらけた印象が残ったのが残念。12歳のヴィトスになってからも妙な単調さは残ったのだが、上記したように物語も複雑になってくるので余り気にならなかったのだ。とにかく、ストーリーは良いが、テンポが悪いのよ。
それにしても、まずは12歳のヴィトスを演じた、映画初出演のT・ゲオルギューが凄い。映画初出演というのも凄いが、あのピアノ演奏も凄い。さすがに指がビックリするほど綺麗で、あの指で肩を揉んでもらったらさぞや気持ち良かろうな・・・と、妙な憧れを持ってみる(笑)。
そしてやはり、B・ガンツが良い、良すぎる。ほんの一瞬、『ベルリン・天使の詩』の頃の姿が見えてドキっとした(笑)。劇中では、ヴィトスの親友であり助言者でもあり、唯一ヴィトスを『天才』として扱わないおじいちゃんを、実に優しく好演していた。なんとも柔らかい表情が本当に魅力的。
全体としては、天才とは対極にある私でも、天才ゆえの苦悩が良く伝わってきた。望まなくても特別扱いされる、まるで自分が、何かの珍種にでもなったような気になる事だろう。私のように普通まみれの人間からしたら、良いのか悪いのか?やはり羨ましいと思ってしまうのだが(笑)。
ここからがネタバレになるのでご注意!『普通ではない』自分に悩み抜いたヴィトスは、結局は普通のフリをする事で、本来の自分を受け入れていく。ピアノへの熱意に気が付く一連の描かれ方が、無心で飄々としていて、まさにヴィトスという個性を表しているようで、とても印象的だった。
いくら天才でも、『人生』に関しては天才にはなれないのだろう。だからこそ生きる事とは、難しくも素晴らしいのだと考えさせられる。ヴィトスには天才だという自負が根底にあったから、解決できない『自分の人生』という問題に、必要以上に戸惑ったのかなぁ、なんて考えたり。
だからこそ、全ての問題が解決してヴィトスが向かった場所に、より一層の満足感と爽快感がある。本当に好きな事を、自分の意思で選び取る自由から生まれる充足感。観客としても、感無量だという気分になった。それゆえに、ラストの演奏会シーンは圧巻だ。実生活でピアノを学ぶT・ゲオルギューという素の少年と、劇中のヴィトスの気持ちがリンクしたように、制圧の無い渾身の演奏を披露してくれる。まだ子供らしい無心さを見せつつも、その技量はまさに天才。劇中の天才と本物の天才が、最後に舞台の上で1つになったかのような錯覚を覚えた。『喝采を送る』って、こんな気持ちの時に、使える言葉なのかも知れないな。
ぽすれん『僕のピアノコンチェルト』紹介
監督:フレディ・M・ムーラー
脚本:ペーター・ルイジ/フレディ・M・ムーラー/ルカス・B・スッター
テオ・ゲオルギュー/ブルーノ・ガンツ/ジュリカ・ジェンキンス/ウルス・ユッカー/ファブリツィオ・ボルサニ/エレニ・ハウプト/タマラ・スカルペリーニ/ノルベルト・シュヴィーンテック/ダニエル・ロール/ハイディ・フォルスター/クリスティーナ・リコーヴァ
計測不能と言われる程の高いIQを持つ天才児ヴィトスは、同時にピアノでも素晴らしい才能を見せていた。12歳になる頃には高校に通っていたため、同年代の友達もおらず、厳しい母親に制圧される毎日だった。唯一祖父と一緒にいる間だけ、ヴィトスにとって子供らしい楽しみが感じられる時間だ。ある嵐の晩、マンションの外で倒れているヴィトスが発見される。どうやらベランダから飛び降りたらしいのだが、その事故の後遺症で、知能が普通レベルになってしまった。ようやく普通の生活を手に入れたヴィトスだったが、彼の様子を嘆く母、仕事が上手く行かない父、老齢になって弱っていく祖父など、周囲の様子には暗雲が立ち始める。かつては天才児だったヴィトスは、家族を助けるためにある行動に出るのだが・・・。
単に天才少年の苦悩を描くという大枠以上に、様々に毛色の違うエピソードが組み込まれ、結構盛りだくさんな内容だ。それでも、煩わしい印象や詰め込みすぎという感じは無く、むしろ天才という要素を上手く使い、意外な方向に物語が展開していくのが面白かった。
しかしその反面、もう少し短く出来るかな?と思わせる冗長さもあった。特に、ヴィトスが幼少の頃が不必要に長い気が・・・。子役も、可愛いのだが演技は微妙で、幼少時代はステレオタイプナまとめ方をしていただけに、少しだらけた印象が残ったのが残念。12歳のヴィトスになってからも妙な単調さは残ったのだが、上記したように物語も複雑になってくるので余り気にならなかったのだ。とにかく、ストーリーは良いが、テンポが悪いのよ。
それにしても、まずは12歳のヴィトスを演じた、映画初出演のT・ゲオルギューが凄い。映画初出演というのも凄いが、あのピアノ演奏も凄い。さすがに指がビックリするほど綺麗で、あの指で肩を揉んでもらったらさぞや気持ち良かろうな・・・と、妙な憧れを持ってみる(笑)。
そしてやはり、B・ガンツが良い、良すぎる。ほんの一瞬、『ベルリン・天使の詩』の頃の姿が見えてドキっとした(笑)。劇中では、ヴィトスの親友であり助言者でもあり、唯一ヴィトスを『天才』として扱わないおじいちゃんを、実に優しく好演していた。なんとも柔らかい表情が本当に魅力的。
全体としては、天才とは対極にある私でも、天才ゆえの苦悩が良く伝わってきた。望まなくても特別扱いされる、まるで自分が、何かの珍種にでもなったような気になる事だろう。私のように普通まみれの人間からしたら、良いのか悪いのか?やはり羨ましいと思ってしまうのだが(笑)。
ここからがネタバレになるのでご注意!『普通ではない』自分に悩み抜いたヴィトスは、結局は普通のフリをする事で、本来の自分を受け入れていく。ピアノへの熱意に気が付く一連の描かれ方が、無心で飄々としていて、まさにヴィトスという個性を表しているようで、とても印象的だった。
いくら天才でも、『人生』に関しては天才にはなれないのだろう。だからこそ生きる事とは、難しくも素晴らしいのだと考えさせられる。ヴィトスには天才だという自負が根底にあったから、解決できない『自分の人生』という問題に、必要以上に戸惑ったのかなぁ、なんて考えたり。
だからこそ、全ての問題が解決してヴィトスが向かった場所に、より一層の満足感と爽快感がある。本当に好きな事を、自分の意思で選び取る自由から生まれる充足感。観客としても、感無量だという気分になった。それゆえに、ラストの演奏会シーンは圧巻だ。実生活でピアノを学ぶT・ゲオルギューという素の少年と、劇中のヴィトスの気持ちがリンクしたように、制圧の無い渾身の演奏を披露してくれる。まだ子供らしい無心さを見せつつも、その技量はまさに天才。劇中の天才と本物の天才が、最後に舞台の上で1つになったかのような錯覚を覚えた。『喝采を送る』って、こんな気持ちの時に、使える言葉なのかも知れないな。
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ぽすれん『僕のピアノコンチェルト』紹介
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