『父、帰る』 注!思いっきりネタばれ

監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ
脚本:ウラジーミル・モイセエンコ/アレクサンドル・ノヴォトツキー
イワン・ドブロヌラヴォフ/コンスタンチン・ラヴロネンコ/ウラジーミル・ガーリン/ナタリヤ・ヴドヴィナ

ずっといなかった父が、ある日突然帰ってきた。翌日から、兄弟は父と始めての旅に出かける。男らしく逞しい父は、同時に冷淡で威圧的。兄のアンドレイは次第に父親になついていくが、弟のイワンはぶっきらぼうな父に反感を募らせていく。写真でしか知らない父は、果たして本当の父親なのか?不安と猜疑心が苛立ちに変わり、旅は思いもしなかった方向へ進んでいく。

色々意味で、衝撃的な映画だった。まず第1の衝撃はラストだ。あっけなく不条理だが、やはり必然でもあったと思う。
第2の衝撃は、兄役のV・ガーリンが、ベネチア国際映画祭で栄光を手にする僅か2ヶ月前にこの世を去ったこと。15歳という年齢は、余りに若すぎ、映画の中の彼は、余りに生き生きしていた。『これからだったのに』と思わずにいられない。その存在が惜しくなるような、立派な演技でもあった。
虚構の中の父の死と、現実の役者の死。2つの死が、この映画に何らかの意味合いを加えた気がしている。この映画の完成度を、高めたようにも思える。
多くの疑問を残した映画でもある。主には父親に関して。でもそんな疑問は、この映画には必要ない。物語は父親が帰ってきた事から始まるのであって、それ以前の出来事は一切関係ないからだ。『帰ってきた』という事が何より重要。
弟イワンは余り可愛くない。我侭で捻くれてると思う。置かれた状況を考慮に入れても、ちょとどうかと思うのだが、まてよ?似た人間を知っている・・・そうなのだ、子供の頃の私の、ふてくされた態度にそっくり。。。
最後には、意地を張り続け、素直になれなかったイワンを追いかけた父が転落死をしてしまう。『誰のせい』では無いのだが、これも私は似たような状況を実生活で知っているので、イワンの抱える苦しみを思って辛かった。個人的にシンクロする部分が多かったので、我が事のように胸に痛みを覚えつつの鑑賞になった。
映画後半の山場は、父親が息子を殴るシーンだそうだが、これには全く気が付かなかった。私の子供の頃は、親からの体罰など当たり前だったし、学校でも当たり前だった。また当人も、仕方が無いと諦めていたので、それによって精神的苦痛を憶える事が無いからだ。
これほど心に重みを残した映画の、最大のポイントで共鳴できたとしたら、今頃私はどんな気分でいることやら?ちょっと受け止められそうもない気がしてしまう。
互いに愛情があったのに、伝え切れなかった父と息子達。お互いの嫌な部分をさらけ出して傷つけあっているように感じた。この映画に最も欠けていたのは、『思いやり』ではないだろうか。唯一それを垣間見せてくれたのは、兄のアンドレイだった。製作者が兄を『陰の主役』と言うのは、死者に対する敬意だけではないと思う。
個人的にロシア映画を見た経験が少ないので、家の雰囲気や旅する町の風景などの質素さが、真新しくもあり現実感がなく、この映画のイメージにピッタリときた。
父親役のK・ラヴロネンコは、まさに適役だった。存在することに意味があるような人で。語らないのに勢いがある。息子を見つめる視線の細かな演技からも、父親が息子を愛しており、反面、どう対応して良いのか戸惑っているのが良く解った。
父親の不在の理由や行動の謎を始め、細かなディティールの説明を省くことで、逆に物語の焦点が1つに絞られ、伝えたい事柄を浮き立たせている。さて、この映画が伝えたかったこととは何だろう?
私は、沢山の思いが胸に迫った。ただそれを、上手く言葉に出来ないでいるのだけど。ヴェネツィア国際映画祭、金獅子賞、新人監督賞、十分な資質を持った映画だ。ただし、見た後に明るい気持ちにはなれない、素晴らしい映画だが、もう一度見られるかどうか、自信はない。

父、帰る父、帰る
(2005/04/08)
コンスタンチン・ラヴロネンコ、ウラジーミル・ガーリン 他

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ぽすれん『父、帰る』紹介

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Category : 映画【ドラマ】 |

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