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『回想のブライズヘッド 上 ・下』

2009/04/23 22:21 ジャンル: Category:読書【ドラマ】
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イーヴリン・ウォー著/小野寺 健 訳/岩波文庫
オックスフォード大学に入学したばかりのチャールズ・ライダーは、貴族階級のセバスチアン・フライトと知り合いになる。2人は固い友情で結びついていたかに見えたが、セバスチアンの特殊な家庭環境ゆえ、繊細な彼の心が蝕まれていくのを助けることはできなかった。セバスチアンの一家が所有する、田舎の壮麗な屋敷ブライズヘッド。フライト家との繋がりに引きずられるように何度もその地を訪れたチャールズは、その思い出を静かに回想してゆくのだった。

映画『情愛と友情』の原作、世界的に有名な作品である。映画では、チャールズとジューリアの恋愛が物語を動かし、恋愛が全体的に表面化していたように感じてしまうが、実際は、宗教対立や家族としての人間同士の理解や繋がりの難しさなどを踏まえ、人生が大きく変わっていく20代前半の『青春』を巧みに描いた原作の意図を、それなりに汲み取っていたのだと思った。
大きな違いは、セバスチアンの存在。その意義も含め、チャールズに依存する形に変形されていた。脚色の方向性上仕方がなかったとは思うが、魅力的で繊細なセバスチアンを薄い存在にしてしまったのは残念だった。ただそれだと、配役はベン・ウィショーであるはずも無く、個人的には結果オーライだったのかも。
概ね上手く脚色しているとは思うが、やはり、原作の意図を完璧に表現できてはいないし、複雑な人物描写や感情の交錯する展開などの緻密な構成は、文章だから可能と言えそうだ。簡略化された映画の話の後に原作を読むと、脚色の違いの面白さと共に、原作の深い意図に感心することしきりだった。
チャールズが翻弄されたブライズヘッド城、フライト家の有様は奇怪で近寄り難く、チャールズもまた、打算なのか知恵なのか解らない、冷めた姿勢が人物を覆っている。誰もが皆、ブライズヘッド城に於いて人間性が変形し、原因の根源は様々だ。しかし全員に共通していたのは、人間関係を繕おうとする冷徹さと距離感である。
そんな中、常に優しさや魅力を失わず、それゆえに崩壊していったセバスチアンは特筆の存在。原作においても扱いは希薄であったが、暗に含まれた存在感は抜群であり、作品を形成する核である。魅力的で脆弱で単純、複雑な人物像である。
表面的には、苦すぎる青春時代を回想する男の話で、読者は特別、過去によって人生を壊された男だとは最後まで思わないだろう。フライト家特有の、踏み込まないことで守りを固くする壁のように、物語も守られているからだと感じる。
この物語が近づけさせないもの、それは解りやすくもあり、理解不能な事柄だ。物語の裏には表面の物語性とは全く別の姿があり、その隠された根源を考えるに付け、自らの宗教観や愛について、人間関係の在り方などを照らし合わせつつ考えてしまうような、複雑な迷路が見えてくる。
チャールズやセバスチアン、マーチメイン夫人やコーデリアなど、全てのキャラクターの裏に人間の本質の顕著な特徴が潜んでいるように感じて、ある男の青春の思い出が、酷く深淵な、精神の崩壊と救済を描いた作品に思えて来た。
ラストでチャールズは、少し考えの変化が起こっている事を示している。だとするなら、彼が『一生分愛して失った』愛も、取り戻せるのかも知れないなんて、無理矢理ロマンチックな結末を用意してみた(笑)。

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