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『ダブリンで死んだ娘』

2009/07/15 21:51 ジャンル: Category:読書【ミステリ・サスペンス・犯罪】
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ベンジャミン・ブラック著/松本 剛史 訳/ランダムハウス講談社文庫
1950年代のダブリン、聖家族病院の病理医クワークは、ある看護婦の送別会があった夜、兄弟のように一緒に育ち、同じ病院の腕利き産婦人科医でもあるマルが、運び込まれたばかりの女性、クリスティン・フォールズの資料を見ているところに出くわす。一方、送別会で送り出された看護婦は、秘密裏に1人の赤ちゃんを預けられていた、子供の名前もクリスティーン。ボストンとダブリンを結ぶ暗い絆、最初は秘密だとすら気付かなかったことが、次第にクワークを追い詰めていくのだった。

アイルランドが生んだブッカー賞作家の1人、ジョン・バンヴィルの別ネームでの作品だ。『あの』作家がミステリ?なぜ書いたのかという経緯も、後書きにあっさり紹介されている。要するに、簡単な読み物が書いてみたかったらしい。
確かに冒頭から暫くは、『あの』作家が書いたとは思えないほど、俗っぽく分かりやすい文章運び、そして展開だ。いや~、誰が書いてもミステリとはミステリになるもんだねぇと、かなり意味不明な自己哲学に感じ入る。
しかし物語も後半に差し掛かると、どんどん『ジョン・バンヴィル』になっていく。そして読後真っ先に思ったのは、『これミステリじゃないじゃん!』という(笑)。私個人のミステリの定義・・・というか根本的に求めるものは、解き明かされるべき謎の深さと、解決の過程の鮮やかさ、真相を知った後の爽快感である。
本作も『ミステリ』だと思って読んでいたので、『謎』自体がいつ現れるのかと待っていたら最後まで・・・。どこに『ミステリ』があったの?大体ね、主人公クワークが謎に巻き込まれている必然性が分からない、固執する重要性も見えない。仮に主人公の生い立ちを考えて、予め答えを想定した上でクワークが動いていたというなら(多分きっとそうなのでしょう)、やはりこれはミステリとは言い難い。
しかしその分、ジョン・バンヴィルらしい緻密に確立された構成の重厚さは存分に感じられ、主人公クワークの心の闇をずいっと奥まで覗き見る深淵さがある。人間のドラマとしては十分な素質がある。ミステリと捉えずに、ジョン・バンヴィルの線上にあると捉えれば、また違った面白味があるのかも知れない。
前に2作、ジョン・バンヴィルとしての『文学作品』を読んだことがあるが、両方に共通していたのが『己の存在意義を追及する』という、いささか暗く重苦しい姿勢。本作でもその流れは健在で、『自分は何者であるのか?』という大きな問いに、主人公が辿り着くまでの物語でもある。
本作では主人公のみならず、姪フィービ、マルと父親の微妙な親子関係、幼いクリスティーナとその養父母などを通して、生まれや育ちから得るもの、生まれるまでの過程や周囲の存在など、アイデンティティの脆さと強固さの両面を感じられる。
もう1作クワークが主人公の作品があるそうで、本作で曖昧に語られず、しかし十分指示されたクワークの表面的で人間臭い問題に、もう少し焦点が当てられるのだろうか?と、少なからぬ興味あり。

ダブリンで死んだ娘 (ランダムハウス講談社文庫 フ 10-1)ダブリンで死んだ娘 (ランダムハウス講談社文庫 フ 10-1)
(2009/04/10)
ベンジャミン ブラック

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