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『ボグ・チャイルド』

2011/02/25 23:27 ジャンル: Category:読書【ヤングアダルト】
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シヴォーン・ダウド著/千葉 茂樹 訳/ゴブリン書房
1981年のアイルランド、国境近くの村に住むファーガスは、大学進学のための試験を控えて、勉強の日々を送るはずだった。しかしその夏彼は、泥炭の中から少女の遺体(ボグ・ピープル)を発見し、兄のジョーは政治犯として刑務所暮らし、そんな兄を救うため、IRA暫定派の運び屋をやる羽目になった。発見したボグ・チャイルドのメルは鉄器時代の少女であることが判明し、そのせいかファーガスは、メルに不思議な魅力を感じて共鳴していく。現実では、メルの研究のためにダブリンから訪れた学者の娘コーラと恋に落ち、刑務所の兄はハンガーストライキを始めた。ファーガスの人生が変わった一夏、北アイルランドもまた、激しい戦いの中にあったのだ。しかしファーガスは、国境沿いで出会ったオーウェインというイギリス側の兵士と、対立を超えた友情を築いていく。しかし兄のストライキは進行し、一家には度重なるテロ以上の暗い影が忍び寄る。

当然のことながら、欲目満載でこの感想はお届けする。そりゃしょうがない、北アイルランドが舞台だもの。とは言え、例えアイルランド絡みでも、欲目が入り込む余地が無い作品だってある。本作は言い換えれば、欲目を大量投入したいと思える出来だった。
おかしな言い方かも知れないが、本作はまさに、私がアイルランドに興味を持つきっかけになった姿が描かれていた。自由への渇望、朴訥とした若者の複雑な心理、悲しく強い女性達、虐げられたものが持つ毅然とした誇りと強さ。深い仲間意識と故郷への愛、そして、どんなに辛くても、困難でも、前へ進もうとする粘り強さ。
カーネギー賞を受賞した本作は、18歳の若者ファーガスの、大学進学を目前にした、人生が変わる一夏を描いたものだ。こうした作品で頻繁に取り上げられる、『永遠に忘れられない特別な一夏』というやつだ。大抵は衝撃的な恋愛と家族問題の二本柱になるのだが、本作では北アイルランドらしく内戦が一本柱だ。ファーガスが抱えるほぼ全ての悩みは、この『内戦』に帰結して行く。中でも一番大きな影響を生むのは、当然兄ジョーのハンガーストライキだ。家族が崩壊しそうになる中で、ファーガスは必死で兄を理解しようとする。しかし理解することと受け止めることは別もの。ファーガスは何度も心の中で兄に問う、なぜ、死のうとするのかと。ファーガスが思うのは、アイルランド統一でもなく、大義名分でもなく、カソリック主義でもなく、もちろん英雄ボビー・サンズでもない。兄に死んで欲しくない、家族を崩壊させたくない、ただそれだけなのだ。北アイルランドの紛争の話を知らない人たちは、本作に時代錯誤な世界観を感じるかも知れない、戦争って?内戦って?一部では聖戦とも呼ばれるこの戦いにおいて、市井の人々の正直な胸の内が、ファーガスに垣間見えるのではないだろうか?大切な人に死んで欲しくない、罪のない人を死なせたくないという別離と暴力への恐怖。
ファーガスは偏見と差別の無い青年だ。というより、カソリックとプロテスタントを隔てる壁も、イギリスの制圧も、『そういうものだ』として受け入れている。だからと言ってそこに悪感情は無く、揉め事を避けたいだけらしい。だからこそオーウェインと打ち解けたのだろうが、この友情が私にはとにかく辛かった。小説には、記憶に残る棘があるほうが効果的だ。痛みの記憶の方が、より鮮烈に脳裏に残るからだろうか。それにしてもだ・・・この好青年2人の友情が辿った結末の悲惨さに、現実の痛みを感じた。
サブエピソードのボグ・チャイルド、メルのストーリーも重要だ。過去におけるメルの人生は、湾曲的に現在の北アイルランドに被さってくる。終わる事のない暴力と悪意。メルの語りによる過去のエピソードは僅かだが、メルの恋や家族との絆、悲惨な長い冬や無知からくる魔女狩りの恐怖などなど、十分に1つの物語としての読み応えがある。いやむしろ、本編である現在のアイルランドの部分を凌駕する出来だったかも?
著者シヴォーン・ダウドは、デビューから僅か2年余りで他界してしまったという。なんて・・・なんて逸材が失われてしまったことか。女性らしく多少感傷的な側面が強いのではあるが、紛れも無い語りの上手さ、筆致の巧みさ、素晴らしい作品をもっともっと描けたはずなのに。
翻訳もまた良かった。物語の持つ重厚なトーンを軽やかに包括する台詞や表現の軽いトーンが読みやすく、18歳の青年が持つ良い意味での淡白さが感じられた。さもすれば相当重みのある物語になり得ただろうが、この軽妙な文体がカーネギー賞らしく若者が読みやすい世界観を作り出している。
過去と現在を交錯させ、複雑な要素を軽妙に巧妙にまとめあげた本作。最終的に、過去から現在に蘇ったメルは、終わることの無い命の連鎖や、勇気と強さの尊さをファーガスに教えてくれたのだろう。久々に、飛ぶように読めた意味のある作品だった。

ボグ・チャイルドボグ・チャイルド
(2011/01)
シヴォーン ダウド

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