* WanderLust *=memorandum for me=

読書はライフワーク、映画鑑賞は人生の潤い、旅行は趣味にしたいなぁ♪日記は日々の覚書き。

スポンサーサイト

--/--/-- --:-- ジャンル: Category:スポンサー広告
TB(-) | CM(-)Edit

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『ミスター・セバスチャンとサーカスから消えた男の話』

2011/03/24 19:18 ジャンル: Category:読書【幻想・奇想・奇譚】
TB(0) | CM(0) Edit

ダニエル・ウォレス著/川副 智子 訳/角川書店
大恐慌の混乱が襲うアメリカで、裕福だったウォーカー家は財産を失い、幼いヘンリーは父の働くホテルの従業員部屋で生活を始める。表舞台の華やかな世界を自由に密かに探検するヘンリーは、ある時ミスターセバスチャンと名乗る不思議な男と出会う。彼からマジックの基礎を学んだヘンリーは、その世界に魅了されていく。大恐慌を黒人のマジシャンとして生き抜き、第二次大戦に従軍し、その後幾つもの名前を持ったマジシャンとなり、伝説的なショーをし、最後にはサーカスの一団となる。そして1954年のある日、忽然と姿を消してしまうのだった。とある探偵が彼を捜し出そうとするが、ヘンリーを取り巻く人々も風変わりな人ばかりで、彼等から語られるヘンリーの物語は幻惑的で実態が掴めない。しかしただ一つヘンリーが追い求めた真実は、彼の失われた妹への愛だった。

映画『ビッグ・フィッシュ』の原作者の作品ということで、なんとなく楽しみにしていた。『ビッグフィッシュ』に関しては、映画が私にとって完璧だったので、原作はあえて読まないようにしてきたのだ。全体の感想としては、プロットや本書あらすじから考えるともう少しファンタジックな展開かと思わせたが、むしろ現実的という印象を受けた。現実とファンタジーの境界があいまいな感じは、確かに『ビッグフィッシュ』に通じるところがある。幻想か現実か?というより、嘘か真か?という感じもまた似ている。現実という基盤をはっきり定義しているので、その上で展開する物語は果たして何なのか?という疑問を抱えさせる感じは面白い。
この疑問が、『ビッグフィッシュ』では幸せな現実という結末に落ち着いたのだが、罪と憎しみを背負ったヘンリーの人生は、どこまでも鬱積していて物悲しい。その裏に隠された真実は、ヘンリーが自らを虚構で装飾したことが、むしろ救いだったと思わせるほどあっけなくいたたまれなかった。
ヘンリーが語り、サーカスの団員達によって脚色された彼の物語では、憎しみも悲しみも結果として糧に変えてゆく暗い魅力を持ったヘンリーが描かれる。自らの『色』すら自在に操り、個人を完全に脚色してしまう。それゆえにヘンリーは自らを見失い、それゆえにヘンリーだったのだろう。
それはまるで、死者を蘇らせるというヘンリーの魔術のように、不可侵への探求という魅力を湛えたマジックのようである。そうしたマジックの裏にはタネ明かしがあり、それが明かされてしまうと、一気に色あせた面白みのない装置が残る。本作はまさにそういうラストが用意されており、小説という虚構の世界を楽しむ醍醐味も、同時にそぎ落とされてしまう。それでも本作を面白かったと思えるのは、ヘンリーがラストにおいて現実の中で血と肉を持った骨格ある人間として描かれたことで、ファンタジーを越えたドラマとしての膨らみがあったから。それは僅かな描写で完成されているが、その控えめな感じもうまいものだなと思う。
私たちはページを開いた瞬間から、ノスタルジックなマジック・ショーの観客席に座り、およそ現実ではあり得ない出来事を目の当たりにする。タネはなんだろう?トリックはどうなっているのかしら?などと考えつつ、嘘だとわかっていながら驚嘆し、虚構の世界にのめりこんでいく。物語のラストでは幕が上がり、同時にタネまで明かされてしまう。私たちはきっと多少白けつつも、結果としてはヘンリーの生み出した虚構のほうを記憶に留めようとするだろう。ヘンリーが最後に見出した人間らしさと、本当の色を思い出しつつ。

ミスター・セバスチャンとサーカスから消えた男の話ミスター・セバスチャンとサーカスから消えた男の話
(2010/04/22)
ダニエル ウォレス

商品詳細を見る

コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック:
この記事のトラックバック URL

プロフィール

hiyo

  • Author:hiyo
  • たった二つの趣味、映画と読書を中心に、日記を書いてみたいと思います。
    最近、自分の時間を充実させたいな、と結構真剣に思っていたりして。文章を書くのも結構楽しいし、誰かが通りすがりに読んでくれたら、嬉しいかな、とか思っている。
名言・格言集
Now on-line
現在の閲覧者数:
Thanks for visiting
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
ブログ内検索
googleで検索
2011年読書記録更新中!
今はこんなところ・・・
hiyo07さんの読書メーター
携帯でも、読みたいですか?
QR
Blog Ranking
ちょっと登録してみたよ?


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。