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『顔のない軍隊』

2011/05/24 23:24 ジャンル: Category:読書【ドラマ】
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エベリオ・ロセーロ著/八重樫 克彦・八重樫 由貴子 訳/作品社
コロンビアで暮らすイスマエルは、長く教師をやってきて、今は引退して長閑な余生。豊かに実った庭のオレンジをもぎ取る振りをして、隣家のセクシーなヘラルディーナを覗き見ては、自らの老いや人生について考える。自国は内戦が続き、テロ組織や民間の軍隊などがあちこちで戦闘を繰り広げるが、長閑な彼の庭は別世界だった、ある日の朝を迎えるまでは。その日家を出たイスマエルは、軍隊の襲撃を受ける。混乱した街中を必死に家に辿り付いてみると、妻のオティーリアはイスマエルを心配して探しに出た後だった。緊迫する空気が充満する中オティーリアを探すイスマエルだったが、人々は誘拐され、惨殺され、いよいよ混乱の度合いが高まっていく。愛する妻は誘拐されたのか?それともどこかで・・・?裕福だった隣家にも悲劇は迫り、ヘラルディーナの夫と息子も誘拐された。情況は逼迫し、よもや妻よりも自分の身を案じなければならなくなったイスマエル。顔の見えない軍人の存在が徐々に大きくなり、遂に堪えられなくなったとき、老いてなお闘志であるイスマエルは、いかにして立ち向かってゆくのだろうか?

各国で大絶賛されたという本作、確かに、読み応えがあってマンネリに陥らず、いささか偏屈なイスマエルという老人の語りを通した文章は稀有な存在感があり、飄々としていながら痛切であり、なんとも言えない雰囲気を醸し出している。
冒頭の長閑な雰囲気から一転して、あっという間に物語は深刻さを増していく。妻は行方不明、隣家は悲劇に見舞われ、瓦解していく町の中で平静を装おうともしない主人公イスマエルの姿は、異様な印象すら与える。翻訳の印象も強いとは思うが、イスマエルの語りが下町のおやじ風で力強く、ぶっきらぼうな印象が物語のトーンが深刻になりすぎるのを防いでる。果たして、この効果は作者自身も狙っていたものか否かは図りかねるが、個人的には効果的であったと思う。
コロンビアの内戦は、日本では余り良く知られていないのではないだろうか?もちろん詳しい方もおられるだろうが、一般的でないのは悲しいかな事実だろう。しかし、内戦というのはいずれでも同じもの、一般市民を苦しめる。悪政から救われるはずが、様々な軍隊や組織によってより大きな苦渋を舐める。本作では、コロンビアに蔓延る資金集めの誘拐、市民組織の横暴、頼りにならない軍隊、コロンビア人であれば当たり前に認識されているという複数の戦闘組織の姿を描いている。それらを『顔の無い』軍隊として漠然と描いているのであるが、そこのところの衝撃、というか深い印象が余り無いのが残念だ。
イスマエルのキャラクターと、その言動や心理状態などはとても興味深く描けている。長年連れ添って、情熱的な愛情はすっかり消えた妻オティーリアに対する深い思いと、引き裂かれた2人の運命を全編に散りばめた筆致は上質である。愛では無いが固執してしまうヘラルディーナという女性の描き出しも深く、彼女とイスマエルの触れ合いも胸を打つ。
物語を精査し、最終的に半分にまで削ったという本作は、確かに著者が描きたかったエピソードの核がずっしり詰っている感じだが、いささか削り過ぎたか?という未消化な感じが残る。ラストにおけるイスマエルの決断、行動、その思いは非常に毅然として力強いのではあるが、もう少し読ませていてくれたら、ラストで感じる衝撃や読後の感慨はより深いものになっていただろうと思えるのだ。
出し切った、という印象を与えるまさに『著者渾身の一作』という作品だ。未熟さはあるのだろうが、十分に読ませてその価値を見出せる作品でもある。次作、もう少し肩の力が抜けた作品で著者の力量が本当に測れるだろうと確信させるので、是非とも、新作の翻訳を期待したい。

顔のない軍隊顔のない軍隊
(2011/01/25)
エベリオ・ロセーロ

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