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『兵士はどうやってグラモフォンを修理するか』

2011/10/03 21:49 ジャンル: Category:読書【ドラマ】
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サーシャ・スタニシチ著/浅井 晶子 訳/EXLIBRIS
1990年代前半の町ヴィシェグラード、少年だったアレクサンダルは大好きな祖父スラヴコの死を経験する。魔法使いになっておじいちゃんを蘇らせる事はできなかったけれど、『語り続ける』ことだけは約束したアレクサンダル。プラム祭や友人たちとの気ままな遊び、有名なサッカー選手との交流・・・そんな時は突然経たれ、ユーゴ紛争が始まっていく。叔父は戦地に赴き、一家は地下室での集団生活を余儀なくされる。そんな中アレクサンダルは、イスラム系の少女アシーヤと知り合い、全てを隠さなくてはならない彼女を守ろうと決意する。しかしその後間もなく一家はドイツへと逃げ、アシーヤの消息は絶たれてしまう。大人になったアレクサンダルは、『なにもかも大丈夫だったころ』という作品を書き上げ、まるで忘れ物を捜すかのように故郷へと戻っていく。

こういう作品は、どう感想を書いたら良いか戸惑う。素晴らしい出来だったとは思うのだけど、処女作という作品ならではなのか、まだ30歳そこそこの著者によるからか、瑞々しいというか青々しいほどの雰囲気が感じ取れる。どこかで読んだような、それでいて真新しいような文体と世界観もまた、そんな雰囲気に拍車をかけるよう。
そんな青さを語りたいし、それこそがこの物語の良さだと思うのだけど、それを上手く表現する言葉が私には無い。そしてこの作品の持つ悲惨さ、その悲惨さを覆い隠す真実を知る人間が描きたかった『真実』も、なんだか色々あり過ぎてやはり上手く表すことができない。
戦争を知っている人は、その悲惨さ以外の事を描ける。実際に戦争を体験した人は多くの事を体験し、様々な事を記憶しているものだ。母の第二次大戦時代の話を聞いていても、つくづくそう思わせられる。それが痛みや苦しみと直結していようとも、それ以外の要素を色濃く覚えていたりする。
この著者は、あえて悲惨さを削ぎ落としたのかも知れないし、それよりも語りたい思い出や物語が多かっただけかも知れない。友人達との思い出は楽しげで屈託なく、大人たちとの思い出は複雑で子供らしく、傷つけられた出来事はやんわりと、それでいて容赦ない。上手いものだなとつくづく思う。激しい暴力を抜きにして、傷跡の深い戦争の思い出を描いている。
思うに彼は、戦争を成長過程で得る1つの要素として、『自分自身』に対する回顧と、移民とその後の人生から得た『自分自身』の中の変化を見つめて、それを描きたかったのではないかと。ドイツで緩やかに暮らす自分と、それでも捨て去れない故郷への思いとか、何かそんなようなもの。心の成長とかそういう事では無くて、ただただ整理したかったのかなとか。読者としては、赤裸々に作者サーシャ・スタニシチの心の中を覗いてるような、だけどやはり、物語を読んでいるんだという相反する感情が常にあったように思う。
余りユーゴ紛争の話は知らないのだが、実際に語った人の話を比べると、『受け止める』という精神が強いように感じる。戦争なんて馬鹿げてる、下らない、死にたくない、そんな思いが誰にもあって、でも止められない理不尽。だからもう、『受け止める』しかないという、ある意味で達観した悟りのような心理が感じられるのだ。一生逃げて泣いて恨んで暮らしても良いけど、だったらどこかで腹決めて向かい合おうじゃないかという強さ、かな?なんだかアイリッシュの諦めと受け入れの精神に似ている気がするが、似て非なるものというか、やはり圧倒的に『違う』何かがあると思うのだけれど。ああ、上手く語れなくてもどかしい・・・。休戦期間のサッカーのエピソードなんて、良く表れていると思う。
嫌なものは見ない、という子供時代から大人になって、物語のトーンが大分重苦しくなる。『現実』の中でもがく主人公が得た最後の奇跡は、思い切り物語らしくて個人的には大変好み。単なる自叙伝ではなく、物語として昇華させようという著者の思いが感じられた。
著者のもつ全てとは言わないまでも、書ききったと言える充実の作品だったと思うので、次回はぜひ、純粋な創作物語を読んでみたい。なかなか素敵な物語を生みだしそうな人だから。『語り続ける』その奥深くを覗いてみたい気がした。

兵士はどうやってグラモフォンを修理するか (エクス・リブリス)兵士はどうやってグラモフォンを修理するか (エクス・リブリス)
(2011/02/11)
サーシャ スタニシチ

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