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『週末』

2011/10/14 21:19 ジャンル: Category:読書【ドラマ】
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ベルンハルト・シュリンク著/松永 美穂 訳/CREST BOOKS
若き日に赤軍の重要人物だったイェルクは、事実上最後となった作戦で逮捕され、20年以上もの間刑務所に収監されていた。しかし奇跡的な恩赦のお陰で出所が叶ったその日、姉クリスティアーネは落ち着かない思いでパーティの準備をしていた。かつての戦友と言えそうな人々は、みな真っ当な人生を今は送っている。刑務所で変化を知らずに過ごしたイェルクは、上手く現在に順応できるだろうか?過去の亡霊を招き入れるような緊張感のある集まりが始まり、間にある時間という溝を埋めるかのように、ぎこちない会話が続いて行った・・・。

正式な本書紹介を見てみるに、イェルクを中心とした様々な人々のぎこちない集まりの週末を描いたもの・・・というニュアンスになるらしい、記者として成功したヘナーはかつてイェルクと近しい存在であった為に、現在において一番イェルクから遠くにいるような描かれ方をしている。彼らを取り巻いていたであろう女性陣は、牧師になったカリン、独身のまま充実した教師として人生を送ってきたイルゼがいるが、彼女らの存在はいささか曖昧として目立たない。歯科技師として成功したウルリッヒは家族を連れて天真爛漫という感じだが、友人としてのウルリッヒより、むしろこの『家族』の存在価値の方に意味があるようだ。
普通であれば『無害な』中年たちと思わしき人々の若き日を垣間見せるのだが、彼らにしてみれば『ほんの若気の至り』で片付けられた過去が、イェルクにとてっは現在であるという歪が巧みに描かれている。ちょっと反政府を気取って、何回かデモをして血を流して悦に入っていた若者だった友人たち、どっぷりと赤軍に浸かり、大義の為の殺人も犯したイェルク。国内でその恩赦が話題になるほど『重要人物』である。そんなイェルクや友人たちは何を思い、どんな会話をするのか?
うう~ん、なるほどなるほど、毎回本当に楽しませてくれる。これまでの作品に比べれば比較的薄く、言葉運びも物語も読みやすい。それなのに、その中に込められた思いは他の長編と比べても何ら遜色なく、むしろエンターテイメント性においては質が上がっているかも?と思わせる。
週末の出来事として短い時間を描いているが、作品としても短く、その中に十全の要素がガッチリ詰め込まれている。イェルクと友人らとの温度差、そこから生まれる確執、姉クリスティアーネの動揺と微妙な姉弟の関係。何となく不可思議なマルガレーテの存在が生み出す効果は面白く、この物語を読み解く上で必要な要素以外に、当然物語を彩る要素も抜かりない。なおかつ、イルゼが密かに描き溜めているかつての友人『ヤン』に関する物語。これがまた、劇中劇のくせにやたらと水準が高い。そしてラストに向けて本編と巧みに織り合わさって行き・・・、ふふ、読んで下さいませよ。
そんな劇中劇だけでは飽き足らず(笑)、現実の週末にも大きな出来事がある。僅か数日で、集まったそれぞれの人生が少しずつ変わっていく、大きくは無いけれど、むしろ歪んでいたものが根気良く徐々に平らに戻されていくかのような変化だ。
イェルクが恩赦を願い出た理由は、第一印象として納得がいかなかった。しかしじっくり考えてみて、このボリュームの作品に分りやすくすっきりとした動議付けを与えるのなら、あの展開が一番理に適っているのだろうと思い直した。イェルクがどれほどの赤軍派だったのか?それがイェルクの恩赦願いによって、より明解に示されたとも言えるだろうから、結果的には安直に思えてもベストな選択なのだ。
この著者の作品を読んでいると、作中の情景が古いフィルムを観ているように浮かび上がる。しかし今回は、朝霧に濡れる森の景色、土と緑の匂い、きりとした寒気に透き通る空気のような、はっきりとして穏やかな情景が脳裏に浮かんだ。半ば廃墟化した立派な屋敷が舞台なだけに、イタリアの森のようなイメージが強かったのかも知れないが、いつにも増して筆致が穏やかな感じで、そんな想像に拍車をかけたのかもしれない。
テーマは『赦し』だったのか、どうなのか?内証とも言えそうだが、個人的には『理解』が軸にあるような気がした。

週末 (新潮クレスト・ブックス)週末 (新潮クレスト・ブックス)
(2011/06)
ベルンハルト シュリンク

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