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『湖畔』

2011/12/03 22:34 ジャンル: Category:読書【ドラマ】
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ジョン・マクガハン著/東川 正彦 訳/国書刊行会
ロンドンから夫の故郷アイルランドの静かな湖畔の家に移住したラトレッジ夫妻。近隣には噂好きのジェイムジーとその妻で優しく人好きのするメアリ、牧場の使用人だったビル・エヴァンス、女好きのジョン・クイン、ラトレッジの叔父で商才に恵まれたシャー、何でも屋で気難しいパトリック・ライアンなど、個性豊かな人々が暮らしていた。穏やかな自然に囲まれて、人々は生命を紡ぐ。湖畔での素朴な人々の生命を切り取り、情景豊かに描いた物語。

アイルランドの著名な作家の1人ジョン・マクガハン最後の作品。『円熟』という言葉をこれほど感じる作品は珍しい。多くの作家は完成された作品を世に出し続け、その作風は往々にして初期から完成度が高く良い意味で変化が無い。
J・マクガハンにしても作品の完成度は初期の頃から高いが、作風に関しては著者自身の心の成長のままに描かれているように感じる。若き日々の反抗や対抗心を切々と描いた過去の長編や短編、思い出を綴った回顧録、これまで読んできた作品は著者の『痛み』や『苦悩』が根底に敷き詰められており、その影響を感じずにはいられなかったが、本作はその鋭利な部分が昇華され、人生を豊かに生きた人の感情や深みが見事に現れている。それでも、過去の作品に見られるような切れ味の鋭さは多分に含まれているのだが、傍観者のように、一歩引いた目線で客観的に語られているように思えた。
何より私が嬉しく感じたのは、著者のアイルランドに対する愛着だ。過去の作品で私が強く感じたのは、著者にとってのアイルランドが父親に反映されているというもの。第一は父親に、第二にはやはり宗教そのものに。その2つを激しく拒否することで、アイルランドそのものを拒否しているように感じていた。
自身の苦しみの源となった父、愛憎半ばする複雑な感情で、突き放すことも出来ず同調することも出来なかった父。渾身の作品を、宗教的にも不適切だという理由で発禁にしたアイルランド。それら全てを捨てて渡ったイングランド。それでも、とり憑かれたようにアイルランドについて書き続けた作家。その苦悩ばかりが印象に残っていたので、これほど豊かな人間関係や生活を描ける老後を送っていたと言うことに他人事ながら安心し、祖国アイルランドに対する温かい目線に嬉しくなったのだ。
宗教に凝り固まって若者の自由を奪っていたアイルランドには、内戦という新たな問題が生まれていた。老いを迎えた人々は、それでも自らの習慣を守り、まさにアイルランドらしいあっけらかんとした豪快さを見せてくれる。自らを傷つけ合うことは辞められないとしても、彼らはやはり、我が道を悠々と歩いていく。
まるで日記を読むような感覚。これと言って起伏や事件は無いが、日々のちょっとしたことが大きな事件のように語られる。逆に、人の死や不仲、市や祭りなどのイベントなども、何となく日常的な穏やかさで包括されていく。
生活ってこういうものだよな、、、と思う。これで良いんだなと思える。楽しいことが無いとか、大きなイベントが無いとか日々の単調さを嘆くときもあるけれど、人生を豊かに出来るのは、優れた友人との時間、静かで満ち足りた環境での暮らし、何より、ささやかでも十分と思える糧を、自分の望む形で得ること。雑踏や騒がしい交流などではないんだなぁ。まぁ、都会の雑踏の騒がしさの中で暮らしていると難しいんだけど・・・。単純に憧れてしまうのだ、ああいう生活に、湖畔の生活。
ただもう流れに添って、ジェイムジーの噂話に、ケートとメアリの優しさに、ラトレッジの穏やかな男らしさに、パトリックやジョン、ビル、シャーたちのアイリッシュらしさに流されて欲しい。時代を超越したような牧歌的な風景、芳醇な言葉から紡がれる完璧な世界に漂って欲しい。

湖畔湖畔
(2010/01/21)
ジョン マクガハン

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