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『メモリー・ウォール』

2012/04/08 21:58 ジャンル: Category:読書【ドラマ】
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アンソニー・ドーア 著/岩本 正恵 訳/CREST BOOKS
夫を亡くし、美しい邸宅に1人で暮らす老女は、老いと共に失われていく記憶を保管し、思い出の品と共に壁に貼り付けていた。ある時彼女の記憶を狙う若者が現われ、彼女の記憶を追体験していく。ダムに沈む運命を背負った中国の寒村。出世した息子と思い出の残る村、その狭間で揺れ動く母の思い。両親を亡くした少女は、祖父の済むリトアニアへ向かう。亡き母が暮らした田舎の川辺で、少女は一匹のチョウザメを見つける。第二次大戦下、ドイツの孤児院で暮らすユダヤ人の少女たち。何も知らない彼女達を待ちうける未来、そして1人生き残ってアメリカへ渡った少女の未来。『記憶』にまつわる静謐で情緒豊かな物語を集めた短編集。

メモリー・ウォール/生殖せよ、発生せよ/非武装地帯/一一三号村/ネムナス川/来世

本作は『記憶』をキーワードに、記憶と密接な関係にある思い出の世界を、様々な土地、人々を題材に描いた秀逸な短編集だ。ということで、記憶にまつわる私の物語を少しご紹介しよう。
かつて、A・ドーアの処女短編集『シェル・コレクター』が話題になった時、『読もうかな?』と思ったが暫く放置していた。時間が経つ内、私の記憶の中でタイトルが『シェル・シーカーズ』になり、『ロザムンド ピルチャーは余り好きでも無いし・・・』と後手後手になり、その内に忘れ去られていった。
本作の紹介を見たときも、記憶を司る脳は見たいものしか見せず、『シェル・コレクター』の原作者の・・・云々と読んだだけで、『ああ、ロザムンドおばさんのあれか?』と捻じ曲げられた記憶に翻弄された。しかしやはり評判が良いし、ロザムンドおばさんのはずだが何か雰囲気が違うから借りてみようと(笑)。結果、借りてきて初めて、原作者が男だぞ!?と。つくづく馬鹿だな・・・自分。しかもロザムンドおばさんに翻弄されて、前作『シェル・シーカーズ』もとい『シェル・コレクター』を読まなかったことを大後悔。
本作を読んでいて、先日これまた初体験したポール・セローを思い出した。様々な土地を舞台にしていながら、まるでその土地で生まれ育ったかのような息遣いすら感じる筆致。短編でありながら、登場人物の人生全てが見えてしまうような物語の奥行き、心理的に深く追求していながら、物語としても一風変わった面白味がある構成力と想像力。
物語を書くのって、その土地で生まれている必要は無いんだなと、優れた想像力とリサーチ力があれば、十分に作りこまれた見事な作品が描けるのだなと改めて感じた。『一一三号村』などは、中国の人里離れた寒村の雰囲気が見事に伝わってきて、いつかの映画で見た景色が苦もなく浮かんできた。反面、文化大革命によって変わりつつある中国を鮮やかに対比させ、村に暮らすかつての中国を生きる母と、新しい中国を担う息子の掛け合いがとことん胸を打つ。
表題作『メモリー・ウォール』はさすがの膨らみを見せ、様々に語られる違った視点が徐々に交錯し、そしてまた引き離されていく構成は長編以上に長編らしい見事さだ。過去と現在が巧みに描かれ、揺れ動き、交わり、記憶の所有権すら曖昧になっていく。爽快さと憂いを混在させたラストは美しく、ひときわ鮮烈な印象を残した。
一番気に入ったのはやはり『来世』。この素晴らしい物語を映画化しようという話が無いのが不思議なくらいだ。一行も削らずに映像化すれば、きっと素晴らしい作品が出来上がるだろう。
言葉の使い方も巧みで、文章そのものに幻想的な静けさがある。『来世』を読み終わったときに、包まれていた空気に開放されてしばらく呆然としてしまった。中編と短編の境くらいの長さだが、独自の世界観を生み出す筆力は相当なものだと思う。死を目前として、『生きる手伝いをして欲しい』と言う老女の思いやいかに?死んでいく魂が、これほど救われていると感じる作品は余り無い。
まだ若い作家だが、それが、これほど豊潤な人生の機微を描いて良いものか!?なんだか可愛げが無いぞ!と、心のどこかで無意味な怒りを覚えるほどだ(笑)。ちょっとくらい、突っ込む余地を残しておいて欲しいくらいだ。
暫く時間が経って、この作品のことをぼんやりと考えるときに、おそらく私の綿菓子の脳みそで寝かされたその『記憶』は、きっとそれぞれが見事な『長編』だったと思い出すことだろう。

メモリー・ウォール (新潮クレスト・ブックス)メモリー・ウォール (新潮クレスト・ブックス)
(2011/10)
アンソニー ドーア

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