『素敵な歌と舟はゆく』

  • 2005/12/17(土) 01:33:03

〔仏〕ADIEU, PLANCHER DES VACHES!
監督:オタール・イオセリアーニ
脚本:オタール・イオセリアーニ
ニコ・タリエラシュヴィリ/リリー・ラヴィーナ/フィリップ・バス/ステファニー・アンク/ミラベル・カークランド/アミラン・アミラナシヴィリ


郊外に暮らす大富豪の一家。母は働いて家計を取り仕切り、夜な夜な盛大なパーティーを開く。老いた父親は、酒と犬だけが友達の日々。長男は毎日スーツを着て町に出かけ、小さな小船の上でジーンズに穿き替え、バイトをはしごする毎日。街での友人は、なぜか浮浪者ばかり。そんな息子ニコラを中心に街の人たちが交差する日々は、どこかちぐはぐで、なんかちょっと楽しい。

好きですよ、こういう映画。ええ、結構ね、フランス作品だけどね、一応。
場面の切り替えが面白かった。こうして日々、私たちは偶然を積み重ねているのかな?とちょっと楽しくなるような、人々のすれ違いや主要人物の交代をを兼ねた、巧みな場面転換だった。
全体的に暗いトーンで、華々しさは一切なし。これぞヨーロッパ係!と言った趣は満載だったが、その淡々とした語り口が妙にそそられる作品だった。
富豪一家の長男ニコラを中心として広がる人物像が、小さくも様々な問題を日常の中に繰り広げていく。特にこれと言った進展も無いので、起承転結が絶対不可欠だと思われている方はご注意。
しかし不思議だったのは、ほぼ主役と思われるニコラ役の役者が、余りにも冴えない事。そんなオーラの無さが、この映画に合っていると言えばそうなのだが、それにしたって、どうにも集中力を欠く朴訥さ。特典で監督の孫だと知って微妙に納得。この監督、知人友人で周囲を固めるタイプらしい。実生活で知り合いのおじさんなんてのが、結構ちゃんとした役で出ていたりもする。
このお孫さん、なぜか台詞は吹き替えだ。監督が移民者であることから、フランス語が苦手?と匂わせているが、ただ単に、喋らせたらそれこそ台無し、だったんじゃないかと、、、思っちゃうんだけど(笑)。
そして結局は、影の主役のようにラストを美しく、楽しく、じんわりと持っていってしまうのは、富豪一家のお父さん、そう監督(役者と二役)その人なのです。ずるいなぁ(笑)。
富める物の苦悩、持たざるものの自由。相まみえない2つの世界が交わって、小さな船は大きな海に漕ぎ出して行く。人生の楽しみは、どこに見つけ出すのか、その人にしかわからない。なんか良い映画でしたよ。

素敵な歌と舟はゆく素敵な歌と舟はゆく
(2002/10/02)
オタール・イオセリアーニ

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