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『イノセント・ボイス 12歳の戦場』
- 2006/10/03(火) 13:52:15
〔メキシコ〕VOCES INOCENTES (2004年)
監督:ルイス・マンドーキ
原案:オスカー・トレス
脚本:ルイス・マンドーキ/オスカー・トレス
カルロス・パディジャ/レオノア・ヴァレラ/ホセ・マリア・ヤスピク/ダニエル・ヒメネス・カチョ/グスタボ・ムニョス/オフェリア・メディナ/ヘスス・オチョア
1980年代のエルサルバドルでは、圧政を行なう政府軍と反政府ゲリラとの間の苛烈な内戦に突入していた。父親がアメリカに行ってから、母から一家を支えるように言われていたチャバは11歳。軍人補強のために、政府は12歳になった男子を、強制的に徴兵していた。政府軍と反政府ゲリラとの間に取り残された町。そこで日夜繰り広げられる銃撃戦の狭間を縫うように、チャバは11歳らしい子供らしさと、初恋を体験していたのだが、政府軍の執拗な攻撃と徴兵の手は否応無しにチャバ達一家にも迫り、チャバは友人達と一緒に、ある決意を胸に秘めて行動に移すのだが?
主人公チャバと同じように内戦を経験し、14歳で単身アメリカに渡ったオスカー・トレスの、自伝的脚本の映画化だ。衝撃的な映画だった。少年兵とは、エルサルバドルだけではなく、中東など今も戦争を行なっている地域では度々話題になる存在であり、あえて映画で語られずとも、その悲劇的かつ過酷な現状は、安易に想像が着くだろう。
監督インタビューで語られていたように、演技が重要なのではなく、ドキュメンタリーのような映像にしたかったという意志は、損なわれること無く再現され、恐怖に脅える人々、とりわけ子供達の表情などが、実話であるという精神的なリアル感と共に胸に迫ってくる。
子供の目線で描かれた内戦だったから、より衝撃的に感じたのかもしれない。その目線の中には、子供らしい楽しさ、無邪気さ、淡い初恋などが描かれてはいるものの、全体的にはやはり計り知れない恐怖と、単純に脅かされる脅威に対する剥き出しの敵意とが感じられ、悔しくもあり、恐ろしくも感じたのだ。
チャバが見る夢、家族との楽しい時間、友人達との無邪気な遊び、そうした牧歌的なシーンの直後に、効果的とも言えるように、激しい銃弾の嵐が飛ぶ。そしてその銃弾によって、多くの人が、子供も含めて殺されていく。それを脅えながら見つめるチャバの瞳。
最初こそ涙なくしては見られないシーンなのだが、所詮第3者的目線でしかないからか、次第にその状況にすら馴れてゆく。しかし、物語は展開し、チャバの愛するものを奪い始める。単なる夜間の襲撃が、次第にチャバ自身を巻き込む、無視できない存在になってゆくのだ。そしてチャバは一大決心をする。必然であり、しかし無謀な決心をだ。
人は何故、暴力によって物事を支配しようとするのだろう?
そして何故、同じ暴力によって、事態を収拾しようとするのだろう?
何故人間は、同じ人間を、死という卑怯な恐怖によって操ろうとするのだろう?
劇中牧師が語るように、何らかの信念さえあれば、自らを神聖なものと思えれば、こうした悲劇は回避できるのだろうか?役者とは思えない真摯な瞳と力強い説教に胸を打たれた。
私がこうした事柄を、この映画から必要以上に感じた大きな理由は、やはり子供達が直面している卑劣な現実というところにある。もう1つは、自伝脚本を書いたオスカー・トレス(=チャバ)は、私と同じ年の生まれだったということ。私が12歳の頃を考えて、想像もつかないような時間を生きた人がいたと、改めて考えさせられた。
12歳といえばまだ子供だ。親元から離れたくない年齢だ。友達と遊び、学校に通い、楽しいことだけを見ていれば良い年齢だ。それなのに、彼らは『生きる』事を最重要にしなければならない。恐怖や憎しみや攻撃と言った、子供に必要の無い感情を強要される。
なぜなのだろう、人はなぜこうまでも非情になれるのか?子供と大人の境界線は、決して他人が犯してはいけない、重要な精神形成の礎なのだと気づかされる。
私は大人としてこの映画を観た。日本人の大人としてこの映画を真っ向から観たのだと思いたい。単なる絵空事ではなくて、実際にあったこと、そして、今も世界のどこかで行なわれていることの、代表なのだと思って観たと。
映画の後半、チャバは変わっていく、途中不安になるほどに顔つきが変わったかに思える。それはあってはいけない変化、起こってはいけない事実だ。しかしチャバは持ちこたえた、母の元へ、そして家族の元へ、文字通り戻ったのだ。
最後に語られるように、この物語は、誰が語ってもおかしくは無かった。たまたま『生き残ったチャバ』が、語る運命にあったのだということ。事実に隠された無数の悲劇や勇気を、無視してはいけないと強く思う。
誰彼無しに、無鉄砲に薦めたい映画ではない。それは、この映画を否定して欲しくないからだ。映画とは無数の感想や議論を呼ぶ。人間には人の数だけ思想がある。ただ私は、この作品を映画としても、事実としても、批判して欲しくはないのだ。
それは私が、私の映画鑑賞史上最大に様々なことを考えさせられたからという、非常に自分勝手な感情からの意見なのだが。
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ジャンル:
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