- | HOME |
『麦の穂をゆらす風』
- 2006/11/17(金) 14:09:54
〔英/愛〕THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY (2006年)
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァーティ
キリアン・マーフィ/ポードリック・ディレーニー/リーアム・カニンガム /オーラ・フィッツジェラルド/メアリー・オリオーダン/メアリー・マーフィ /ローレンス・バリー/ダミアン・カーニー/マイルス・ホーガン/マーティン・ルーシー/ジェラルド・カーニー
1920年、イギリスからの独立を目指すアイルランドは、1916年のイースター蜂起から苛烈さを増す戦争を続けていた。ダブリンに集結している上層部の支持のもと、各地の市民軍、義勇軍の兵士達は、イギリス軍や警察に向けたゲリラ戦をしかけていた。南部コークに暮らす医師デミアンも、恵まれた仕事の道を棄て、志願して兵士となった。1921年に休戦が宣言され新たな条約が調印されるが、イギリスに絶対の忠誠を近い、北の6州をイギリス領に残すといった、完全独立とは程遠いものだった。そのためデミアン含む市民や兵士の中で反政府活動が勃発。既に政治に絡んでいた兄テディは自由国軍の制服を着るまでになっており、互いを思いやる兄弟は、対立する運命に直面していくのだった。
すっかりあらすじが長くなってしまったが、これぐらい書いても、この映画を観るにはまだ知識不十分。ぜひとも映画の公式サイト内にある『映画の背景』を熟読してご覧頂きたい。公式サイトはコチラ。
想像していたアイルランド独立のための戦争に関する話と、これまで触れてきた映画や小説の内容とも、違ったアプローチの映画だった。意外というか、やられたというか。
最も近いと感じたのは、ロディ・ドイル著『星と呼ばれた少年』だ。これはIRAの中枢にいる青年が、地方戦のサポートに行く記述が多い。ダブリン中心の戦いではなく、地方(この映画の場合コーク)でのゲリラ戦に詳しくなれるだろう。
映画の中で説明的シーンが多数あるのだが、それでもまだまだ不十分だと感じた。前知識無しにこの映画を観たら、混乱を招く結果になりそうなので、簡単に薦めることはできそうもない。
アプローチが違うと思ったのは、簡単な話、この戦争で大きな役割を担った人物が1人も出てこないこと。幾つかの歴史的戦いも、話題でしか登場しない。あくまでも地方でのゲリラ戦で戦った兵士達の話であり、その姿を描いた作品だ。
なんだかの深淵なメッセージや、感動的に訴えかけるものなどは無いと言える。1920年代頃のアイルランド国内の、いたる所で起こっていたろうと思える事柄を、丁寧にじっくりと描いた映画だ。純粋に真実を淡々と描き、余計な飾りは一切排除する。地方の兵士達の姿だけに焦点を合わせ、その真実をただひたすらに描いた。
それだからこそ、そこには見た人それぞれが感じる『深い意義』が生まれ、同じ過ちを繰り返さない、愛する人と大儀を守ることの大切さや、相反する無意味さを考えさせられる。シンプルで率直であるがゆえに、見えてくる幾つもの事。
ただもう、その真実の出来事に、国と国の戦いに巻き込まれた、自国を愛し、家族や仲間を愛した素晴らしい人々に、そして辿られた悲しい出来事の数々に、苦しい思いがした。こうした解釈は、私達日本人に通ずるところもあると思うので、余計にいたたまれない。人命より大儀が大切、なんてばかげた話だろう。上映中何度も席を立とうと思った。結末が見えるから、展開が読めるから、観続けることが辛くなったのだ。
監督が言っているように、独立を目指す戦争や、国の在り方を問う内戦は、今も世界のどこかで起こっている、起こる可能性があるだろう。昨日まで友人だったものが、突然敵に代わってしまう。もしかしたら、愛する肉親でさえも。
アイルランドの内戦は、その変化が突然に現れた。700年に渡る制圧と、強すぎた国民の自立心たるがゆえ。そしていつの世も、政治という駆け引きの場では、不条理が常識となる悪夢。昨日の英雄が、今日の悪漢となる世界。
今もこうした不幸な歴史を深く抱えるアイルランドだ。しかし彼らは、こうした戦いの中から、独立という価値有るものをとりあえずは得た。そこから、ヨーロッパで1番観光したい国に選ばれるまでになり、今も近代化の成長を続けている。
国が問題を抱える事は当たり前で、我が国においてもそれは人事ではない。現在のアイルランドは、こうした過去の、無名の若者達の幾つもの戦いや死によって築かれ、そして称えられている。歴史に名を刻まずとも、彼らの死が無駄では無かったこと。自らの思いを貫き通したこと。そうした事柄を残す意味でも、この映画が作られた意義があると言えるだろう。
2006年度カンヌ国際映画祭、審査員満場一致でのパルムドール受賞作。納得の出来栄えの映画だ。思うに、この映画を『イギリス人監督』が、これほどまでに丁寧に描いたこと、そこにも何か、大きな意味があるのではないだろうか。
![]() | 麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション キリアン・マーフィー、ポードリック・ディレーニー 他 (2007/04/25) ジェネオン エンタテインメント この商品の詳細を見る |
ぽすれん『麦の穂をゆらす風』紹介
ジャンル:
- 映画
- <<『スウェー★ニョ』
- | HOME |
- 『コーラス』>>
この記事に対するトラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
- | HOME |










