『フェイス』
ベンジャミン・ゼファニア著/金原 瑞人 訳/講談社
学校の人気者マーティンは、夏休みの夜に友人と出かけた帰り、顔見知りの不良少年の車に同乗した。薬でハイになった運転手が暴走して大事故を起こし、マーティンは顔に大火傷を負ってしまう。それまでの生活とは一転、引け目を感じる外見になったマーティンだが、持ち前の強さを発揮して生き抜くための道を模索する。しかし友人達や周囲の反応は微妙な変化を見せ、マーティンは現実の厳しさを痛烈に実感することになる。
読んでいる時はただ物語りに流されていたが、読み終わってみてこうしてじっくり考えていると、ひっじょぉぉぉにデリケートで難しい問題だと思う。果たして私がマーティンと同じ立場に立ったら、という問題は大きすぎて考えられない。卑怯だが、考えたくもない。
しかし友達がもしも・・・と思った時、私は一体どんな態度を取るだろう?または恋人だったとしたら?
顔が変わっても、私はその人の『中身』を慕っているのだから!なんて口で言うのは簡単だ。確かにこの作品の主人公、当事者であるマーティンのような少年なら、私は永遠に友達あるいは恋人であろうと思うだろう。しかし、一度も相手を傷つけづして、長い関係を築いていけるとは思えない。それほど、出来た人間だと自分を思えない。
物語は、幾分美しく清く展開していく。通常考えられるような自棄だとか暴挙だとか、そうした荒々しい部分は全く含まれておらず、ただひたすらに立派な人間である主人公マーティンが描かれている。これで良いのだと思う。この作品が言いたい事は、顔が周囲に驚かれるほどに変形してしまった『葛藤』ではなくて、『いかに生き抜くか?』というあくまでも前向きな姿勢であるからだ。
当たり前に起こりそうな初期のやりきれない部分がないという不自然さは、効果的な周囲の人の存在によって巧みに打ち消されている。両親や主治医、病院付きの精神科医などを通してだ。
酷い事故、それによる心身を打ちのめす大きな傷。この存在を通して、当たり前の思春期を送っていたマーティンは一気に大人に、というより『立派な』青年に成長していく。彼が語る周囲に対する思いや自分に対する意思などは、時にはっとするほど胸に強く突きつけられる響きがあった。特にラストの台詞、いいねぇ。
作者は詩人だそうだ。初の長編小説がこの作品。正直詩人が書く小説は余り食指が動かないが、この作品は違った。非常に易しく解りやすい文章運び、正確で無駄のない言葉選びは、端的な詩作から培われた賜物と思うし、短い中に思いを充満させる作業に手馴れた詩人らしく、中身の濃い作品に仕上がっていた。
振り仮名が多く児童文学的な様相ではあるが、大人が読んでも十分。むしろ子供を導く責任のある大人にこそ、今一度こうした難しい状況を考えるためにも、読む価値のある作品だと思った。まぁ、難しい事を言わずしても、作り上げられた物語として、単純に楽しめる作品であることは間違いない。お薦めだ・・・しかし絶版だ・・・。
学校の人気者マーティンは、夏休みの夜に友人と出かけた帰り、顔見知りの不良少年の車に同乗した。薬でハイになった運転手が暴走して大事故を起こし、マーティンは顔に大火傷を負ってしまう。それまでの生活とは一転、引け目を感じる外見になったマーティンだが、持ち前の強さを発揮して生き抜くための道を模索する。しかし友人達や周囲の反応は微妙な変化を見せ、マーティンは現実の厳しさを痛烈に実感することになる。
読んでいる時はただ物語りに流されていたが、読み終わってみてこうしてじっくり考えていると、ひっじょぉぉぉにデリケートで難しい問題だと思う。果たして私がマーティンと同じ立場に立ったら、という問題は大きすぎて考えられない。卑怯だが、考えたくもない。
しかし友達がもしも・・・と思った時、私は一体どんな態度を取るだろう?または恋人だったとしたら?
顔が変わっても、私はその人の『中身』を慕っているのだから!なんて口で言うのは簡単だ。確かにこの作品の主人公、当事者であるマーティンのような少年なら、私は永遠に友達あるいは恋人であろうと思うだろう。しかし、一度も相手を傷つけづして、長い関係を築いていけるとは思えない。それほど、出来た人間だと自分を思えない。
物語は、幾分美しく清く展開していく。通常考えられるような自棄だとか暴挙だとか、そうした荒々しい部分は全く含まれておらず、ただひたすらに立派な人間である主人公マーティンが描かれている。これで良いのだと思う。この作品が言いたい事は、顔が周囲に驚かれるほどに変形してしまった『葛藤』ではなくて、『いかに生き抜くか?』というあくまでも前向きな姿勢であるからだ。
当たり前に起こりそうな初期のやりきれない部分がないという不自然さは、効果的な周囲の人の存在によって巧みに打ち消されている。両親や主治医、病院付きの精神科医などを通してだ。
酷い事故、それによる心身を打ちのめす大きな傷。この存在を通して、当たり前の思春期を送っていたマーティンは一気に大人に、というより『立派な』青年に成長していく。彼が語る周囲に対する思いや自分に対する意思などは、時にはっとするほど胸に強く突きつけられる響きがあった。特にラストの台詞、いいねぇ。
作者は詩人だそうだ。初の長編小説がこの作品。正直詩人が書く小説は余り食指が動かないが、この作品は違った。非常に易しく解りやすい文章運び、正確で無駄のない言葉選びは、端的な詩作から培われた賜物と思うし、短い中に思いを充満させる作業に手馴れた詩人らしく、中身の濃い作品に仕上がっていた。
振り仮名が多く児童文学的な様相ではあるが、大人が読んでも十分。むしろ子供を導く責任のある大人にこそ、今一度こうした難しい状況を考えるためにも、読む価値のある作品だと思った。まぁ、難しい事を言わずしても、作り上げられた物語として、単純に楽しめる作品であることは間違いない。お薦めだ・・・しかし絶版だ・・・。
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