『アイルランドの柩』

エリン・ハート著/宇丹 貴代実 訳/ランダムハウス講談社文庫
ユニヴァーシティ・カレッジ・ダブリンの教授で考古学者のコーマックは、ゴールウェイ県の湿地で見つかった死体の調査に向かう。湿地で覆われていた死体は驚くほど状態の良いものもあり、警察は早々に考古学の世界に事件を明け渡したのだ。トリニティ・カレッジの解剖学講師のノーラと共に見つかった遺体の調査に取り掛かるが、地域の貴族ヒューゴ・オズボーンに頼まれて、近くの教会の調査にも着手する。ヒューゴの妻は数年前に謎の失踪をしており、その事件に隠された謎にノーラは関心を抱き、次第に謎の深みにはまっていく。

『アイルランド』と来てケルト十字の表紙、過去と現在を繋ぐ謎・・・とくれば、買うでしょう、そりゃ新刊で!(笑)。と思ったら、著者はアメリカ人、ここで勢いはワンランクダウン(笑)。しかし、ミネソタ州におけるアイルランド音楽・舞踊協会の設立者で、ペンネームかどうかは不明だが、名前が『エリン』とくれば、ちょっとばかり士気も盛り返す(笑)。
がぁしかし、中年の(恐らくそんなに見てくれも悪くない)主人公コーマックと、行動を共にする美しく影を持ったノーラ、その出会いとギクシャクした始まりを読んだ途端・・・やっちまったか?という一抹の、、、しかも大きな不安が。これって、実はロマンス小説?
まぁ〜〜〜一応、その枠はかすっているだけとも言えるのだが、熟女連中(年齢的にはばっちり私もその枠の中♪)が悶々しそうな、じれったくも影のある大人の男女の恋愛模様があった。正直・・・邪魔だ、このエピソードってば(笑)。
ヒューゴの妻の失踪に関わる謎、湿地で見つかった遺体の身元を巡る謎。この2つが平行して適度な按配で進行していく。これだけでも十分読める内容であるのに、この2人のまどろっこしい恋愛模様や、結末の謎解きの陳腐さが勿体無かった。これがどうも、ロマンス小説やゴシックホラー的匂いがきつすぎて。
やはりなんと言うか、どれだけ愛情を感じていても、『部外者』が描くアイルランドは違うな〜と思う。余りにも幻想的で、余りにもロマンティック過ぎるのだ。湿地で見つかった女性の遺体に関しても、いい線突いてるんだけど、物語的要素が強すぎて、いまいち興が乗らない感じだ。多分これ、アメリカが舞台であったなら、もうちょっと面白く仕上がっていたんじゃなかろうか?と思う。
ただし、物語進行、キャラクターの造形などはなかなか上手く、読んでいて『つまらない』ものでは決してない。むしろトントンとリズム良く読める作品である。むしろ、謎や物語の深さが十分なクオリティがあっただけに、ロマンス的な要素とのバランスが取れてなくて残念!といった印象。ふむ、勿体無いなぁ。

アイルランドの柩 アイルランドの柩
エリン・ハート (2006/01/22)
ランダムハウス講談社
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  • Author:hiyo
  • たった二つの趣味、映画と読書を中心に、日記を書いてみたいと思います。
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