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『ティモレオン センチメンタル・ジャーニー』
- 2007/03/25(日) 14:58:53
ダン・ローズ著/金原 瑞人・石田 文子 訳/アンドリュース・クリエイティヴ
コウクロフトはイギリスで成功した初老の作曲家。しかし多くの挫折、それも殆ど自らが生み出した破壊のせいで故郷を逃れ、イタリアの片田舎で隠れるように暮らしていた。そんな彼の忠実な友は、雑種犬のティモレオン・ヴィエッタ。コウクロフトが最後の恋人と別れてから2人で静かに暮らしてきたが、そこに珍客が訪れる。ボスニア人の謎めいた男、余りに美男子で、コウクロフトは直ぐに彼に恋をしてしまう。ボスニア人を嫌うティモレオン・ヴィエッタの気持ちなどお構い無しに、コウクロフトは報われない愛に溺れ、次第にティモレオン・ヴィエッタすら遠ざけて、無愛想なボスニア人と暮らし続ける。
先に紹介した『コンスエラ 7つの愛の狂気』 の著者の、長編小説だ。日本ではこちらが先に発売されたらしいが、実際は『コンスエラ 7つの愛の狂気』 の方が先の作品。
作品はパート1と2に分かれていて、パート1では、コウクロフトとボスニア人、そしてティモレオン・ヴィエッタの生活が描かれる。パート2では、後に発売される『コンスエラ 7つの愛の狂気』 を髣髴とさせる、難しくてディープで不可思議な愛の物語が、まるで短編形式のように語られ、その全てにティモレオン・ヴィエッタが登場する。どういう構成かは、読まれてからのお楽しみ。
しかしとにかくディープな作品だった。だけどこの著者の物語は、読み続けたいという気にさせる。どんなに救いようが無くても、盛り上がりが弱く思えても、惹き込まれること請け合いだ。紛れも無い筆致の上手さ、構成力、練り上げられた展開、天才肌の人間が作り上げた作品だと思う。
天才の作品をどうこう言うのは難しい。この作品を読んで欲しいとしか言いようが無い。どこか超然とした人間観察、そこから生まれる類稀な物語。まるで見て来たかのような深い創りなのに、この世のものとは思えない、寓話のような漂うベールを感じる文体。時代間が殺ぎ取られ、そこにあるのは、いつの時代であってもおかしくない出来事、物語世界。統一されているのは、ラストが鋭く痛みを伴うものであるということだ。
ティモレオン・ヴィエッタの存在は、余りに儚く小さく描かれてはいるが、この作品を通して最も大きな意義を放っている。尊大なボスニア人に神の制裁を。
この作品で消耗した著者は、『もう書かない』と言っているそうだが、そんな才能の浪費は諦めて、ぜひ新しい作品を発表して欲しいもの、それもなるべく早くが望ましい。
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ジャンル:
- 小説・文学
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