『故郷』

  • 2007/04/23(月) 21:19:13

チェーザレ・パヴェーゼ著/河島 英昭 訳/岩波文庫
新刑務所から出所したばかりのベルトは、同じ時に出所したタリーノの誘いに乗って、彼の故郷モンティチェッロへと向かう。放火の罪で投獄されたタリーノだが、実際のところはのらりくらりと交わして解らない。そんなタリーノに嫌悪感を感じながらも、良く当ての無いベルトはモンティチェッロに留まる。閉鎖された田舎の村で、余所者のベルトは、彼らが覆い隠そうとしてる真実に次第に気がつき始めるのだが。


え〜っと、イタリアでは、というか世界的に有名な作家の作品だそうだ。失礼な話で恐縮だが、私は全く知らずに手に取った。さて、多くの方が研究されている、一種学術書と化している類の作品かと思われる。とまぁ、これも勝手な意見なのだが。
世の中には、多くの人に研究され、その真意を様々に掘り下げられ、時代背景や作者自身の言動と絡めて追求される作品があり、単なる娯楽作としての『小説』を逸脱してしまった作品が多々ある。これはそんな作品ではないかと思うのだ。
物語は1935年頃のイタリアが舞台だ。チンピラのような生活をトリノでしていたベルトという男が、新刑務所で出会った田舎者のタリーノに連れられて、一種逃げ場を求めるように閉鎖された田舎の村に行く。
都会の男が、人と人が密着に暮らし、家族の関係が、とりわけ男に有利になるように強固に繋がっている世界に入っていく。人の触れ合いなど無いほうがマシと思われるような、殺伐とした都会(であろう)で暮らしていた男が見る、不可解な疎外感と閉鎖感。
世界は大きく動こうとしているこの時期、あくまでも古臭い因習に囚われて、むしろそれを良しとする世界に、ベルトは憤りを覚える。それがそのまま、安穏として腹に一物ありそうな、タリーノに向かう嫌悪感として渦巻くのだ。
物語のラストは、実にドラマティックで、なんとも言えない後味を残す。作者が言いたい事は何であったのか?当時を知らない私としても、この薄く淡々とした物語の中に、何物かを感じようとしてしまう。
著者は、ネオレアリズモという文学の父であるらしい。その子供として挙げられるのが、イタロ・カルヴィーノ。ふぅ〜む、そういう流れか・・・。中世の方が、私にはよほど理解しやすい世界らしい。

故郷 故郷
パヴェーゼ (2003/06/14)
岩波書店
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