『幸せな結婚はパンケーキの匂いがする』

  • 2007/09/23(日) 01:26:19

モラグ・プランティ著/柚木 しのぶ 訳/徳間書店
トレッサは、ニューヨークでフードコーディネーターとして成功し、順風満帆な人生を送る、ちょっと太めな38歳。最後と思った大恋愛に破れ、落ち目な時に出会ったハンサムだけど野暮ったいアパートの管理人と結婚して『しまった』。郊外の生活、気の合わない親族との付き合い。自らの結婚に悩む日々。トレッサの憧れは、母方の祖父母の愛に包まれた暮らしだったが、実はその祖母バーナディーンも、祖国アイルランドで送った若き日とその結婚に、傍からは見えない苦難を抱えて生きた人だった。アイルランドの素朴で暖かい料理のレシピと共に、2世代の女性達の結婚感を優しく綴る。


やっと、やっと!!この感想を書く順番が回ってきた!ああ、腕がなる(笑)。ちなみにこの作品、私が読んでいたく感動し、結婚を控えた同僚にぜひ読ませたい!と貸し、その彼女も泣きすぎて目が腫れたそうで(笑)、もう1人の同僚(これは若くて彼氏とラブラブ♪)にも貸し、こちらも号泣して2日で読破というお墨付き(笑)。久々に『本を語り合う』という楽しい時間を私にくれた感涙の一作だ。
ロマンス小説なのだが、気負わずバカにせず読んでいただきたい。男性は除く。無理、この小説の主要男性2人(トレッサの夫のダンと、バーナディーンの夫ジェイムズ)は、ほぼ完璧に理想の男性だから(笑)。
完璧に理想の男性と結ばれたトレッサとバーナディーンだが、これも女性特有の我侭で、相手の男性を満足に見る事が出来ない。そしてそれぞれの結婚生活を交互に語りつつ、本当の幸せって、結婚生活って、人を愛して一生を共にするってどんな形があるのだろうか?という事をじっくりと語っていく。
その経緯も、結論も、普通のロマンス小説とは一線を画した感じで、妙に淡々と冷めた感じで、だからこそそれが真実なのだろうと思える。熱すぎる恋愛はいずれ冷める。じゃあ、冷めた後はどうしたら良い?完璧な相手なんてこの世にいない?いたと感じても、その気持ちに間違いはないだろうか?そうした疑問にも、この作品はきっと答えてくれるだろう。結婚って、愛だけじゃ無いんだねぇ。信頼とか、与える気持ちとか、もっと沢山の感情が必要。そうした気持ちは、男性の方が素直に持てるんだろうな?と改めて思った。女性はとかくロマンチックで、そのくせ妙に現実的で、愛が重要だと思っている。そしてやたらと考えすぎる。
ロマンス小説と簡単にはくくられたくないほど、物語はしっかりしている。キャラクターの造詣が確立されているからだろう。登場人物は少なく、それぞれを丁寧に描く。とりわけ主要なトレッサとバーナディーンだが、物語の比重、構成、深みは圧倒的にバーナディーン寄り。トレッサの方は、現代的でありがちな部分が強く、一般論として添えられている感じだ。
そこにシンクロするように、戦後のアイルランド(といえばかなり閉鎖的)に娘時代を送り、愛する人と引き裂かれ、望まぬ相手と結婚せざるを得なかったバーナディーンの物語が語られるのだ。もうとにかく泣かすのでご注意を!
バーナディーンは、結果として自らのせいで最も満たされない人生を送ってしまったように思えた。そうした面も、反面教師として捉えたい。幸せが目の前にあったら、固執する事無く掴めるように。ただ時代を考えると、致し方なかったかも?と思えて、アイルランド作家なのになぜ舞台がニューヨーク?という疑問も、実はこの辺からすんなり納得できる。こうした構成力やストーリーテリングの上手さ、この著者の別の作品も読みたいと思わせてくれる完成度だった。
各章毎に添えられてるアイルランド料理のレシピと共に、ちょっと切なくて苦しい部分もあるけれど、本当に懐かしい手料理のような味わいのある作品。女として母として、妻として、恋人として生きるあなた!かなりお薦めです。

幸せな結婚はパンケーキの匂いがする 幸せな結婚はパンケーキの匂いがする
モラグ・プランティ (2007/08/28)
徳間書店
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