『アイリッシュ・ヴァンパイア』

  • 2007/10/10(水) 23:21:15

ボブ・カラン著/下楠 昌哉 訳/早川書房
世界に数多あるヴァンパイア・ストーリー。その中でも有名な著作を生み出したのは、アイルランドの作家達だった。思い返してみれば、ヴァンパイア・ストーリーの根底に流れるスピリッツは、アイルランドの伝承に酷似している。ここで、ケルトの伝説を下敷きにした、アイルランドに伝わる幾つかの『血を飲むもの』の物語をお伝えしよう。
炉辺にて/森を行く道/乾涸びた手/仕えた女


吸血鬼ドラキュラの生みの親ブラム・ストーカー。彼はアイルランド人だったのです。そして『吸血鬼カミーラ』の著者もアイルランド出身のシェリダン・レ・ファニュ。ブラム・ストーカーに関しては過去に色々話を聞いたが、その中に、『1度もルーマニアに行った事は無かった』というのがある。
先に描かれていた『吸血鬼カーミラ』のプロットやイメージ、モデルとなったトランシルバニアの串刺し公の僅かな記述だけで描かれた、異国の地を舞台にした『吸血鬼ドラキュラ』は、その容貌の端々にアイルランドの姿が描かれているとし、ケルト伝承と古くから伝わる逸話を下敷きに描かれた『血を飲むもの』達の物語だ。ここ数年、アイルランドにおける吸血鬼回帰の運動が高まっているらしい。
黒いマントを翻して、青白い顔の美青年が、美女のこれまた白く艶かしい首筋を狙う・・・などと言う記述は全くなく、『血を飲むもの』の姿も、幽霊や干乾びた死体など、様々なものに姿を変えて描かれる。目に見えないからこそ恐ろしい、未知なるものへの恐怖を描いたゴシック・ホラーのようだった。
かといって格別背筋がブルブル震えるほどの恐ろしさは無く、強いて言うなら『乾涸びた手』が一番恐怖心を呼び覚ましたかな?『仕えた女』などは、領主の無視しがたい存在がアイルランドらしさを上手く導き出し、幸福な家庭に暮らしていた少年が恐ろしい現実に立ち向かう様を描いている。タッチとしてはおどろおどろしいというよりは、なんとなく爽やかな印象すら憶えてしまった。
思うのは、『血を飲むもの』の存在がやはり、どうしても、上流階級(主には領主)の存在であるというのが、最もアイルランドらしいと言う気がしなくもない。権力に制圧された歴史と、その力に対する恐怖心。アイルランドの人々にとっては、イギリスの勢力も強い上流階級の人々が、彼等の生活を搾取し脅かす、まさに『血を飲むものたち』だったのだろう。
単純に物語としては、こういったホラー物は好みでなく余り読まないので、なんとも言えないかなぁ(笑)。スラスラ読めたし、面白かったとは思うけど。

アイリッシュ・ヴァンパイア アイリッシュ・ヴァンパイア
ボブ・カラン (2003/11/19)
早川書房
この商品の詳細を見る

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)