『サン・ジャックへの道』

  • 2007/11/14(水) 12:43:05

〔仏〕SAINT-JACQUES... LA MECQUE (2005年)
監督:コリーヌ・セロー
脚本:コリーヌ・セロー
ミュリエル・ロバン/アルチュス・ドゥ・パンゲルン/ジャン=ピエール・ダルッサン/マリー・ビュネル/パスカル・レジティミュス/エメン・サイディ/ニコラ・カザレ/マリー・クレメール


仲の悪い3兄弟、母親が亡くなり、その莫大な遺産を相続するためにはある条件が課せられた。それは、遥かスペインの先にあるサン・ジャックへ向けて、徒歩での巡礼の旅。遺産のために仕方なく2ヶ月の旅を決意した3人だが、道中は喧嘩ばかりの険悪なもの。法律事務所公認のガイドは団体旅行の案内人なので、3人以外も様々な人生を背負った旅人を道連れに、彼等の巡礼の旅はテクテクと続く。

予告編を観て、『今の私に必要な映画はコレだ!』と直感。何しろ石丸謙二郎氏のナレーションにまず胸を鷲掴み(笑)。『生きていく上で本当に必要なものなど、そう多くはないんだと教えてくれる』という言葉、そして予告編で流れる穏やかで美しい映像。
その期待も予感も裏切られる事の無かった秀作。格別泣かせる映画では無いが、登場人物が多くて、それぞれが様々な悩みを抱えている。しかもその悩みというのが、大きいものあれ、単に片思いという小さいが可愛らしいものもありで、観客それぞれが、キャラクターの誰かに親近感を覚えつつ、なんだかホンワカできる。
だけど私は結構泣いた(笑)。泣かせよう!という過度な演出があるわけではないのだが、映画そのものが持つ優しさに泣かされたのだ。例えば、失読症のラムジィに3兄弟の長女クララが『言葉』について、その多様さや素晴らしさ、その使い方によって得られるものを教え、ラムジィに『言葉』について興味を抱かせようとする時。
前半は喧嘩ばかりで風景など見向きもしなかった3兄弟が、次第にお互いの存在を違ったように感じ始め、旅の目的が確実に変わった後、映画がみせる風景描写の素晴らしさは、格段に違ってくる。意図的なのか、観客自身も見方が変わったからなのか?その時に映し出される、まるでアイルランドのような広大な丘の緑と、開放感のある素晴らしい風景でも泣いた。自然の美しさとは、それだけで人の心を動かす何かがある。
そして何よりラスト。ありきたりかも知れないし、出来すぎかも知れないが、人の持つ優しさや思いやり、単純に人が繋がっていく不思議とか、色々ど〜っと押し寄せてきて感涙。
しかし不思議だなぁと思ったのは、本当に格別、感動的なエピソードなどは含まれていないのだ。3兄弟もベタベタと仲直りしたりしない。いやむしろ、はっきりとした『和解』などは描かれていない。ただなんとなく、お互いの存在を許容したという程度。
その他の人の問題なども、サラリと描かれていてなんとなく決着している感じ。そもそもその問題自体が、大げさに語られてはいない。メインは3兄弟なので、そのオプションとして、帯同した他のメンバーの事が邪魔にならない程度に描かれているだけなのだ。
それでもこの映画は限りなく優しい。そして『生きる』という事を描いている。大げさじゃなくて良い、しっかりと両の足で歩いていければ良い。目的を持って、仲間を見つけて、時に助け合い、楽しい時間を過ごして、反目しあい、和解しあい、恋をして、歩いていく。地球という美しい景色に囲まれながら、毎日とつとつと踏みしめるように進んでいけば、きっとどこかに辿り着く。
いいなぁ〜こういう映画、とシミジミ思える。観終わった後、なんだか誰かを抱きしめたくなるような映画。重い荷物は捨てて人生を身軽にするのはやはり、そう難しい事じゃない。コミカルであったかくて、ちょっとシニカルで、まさに人間賛歌と言えそうな素敵な映画だ。

サン・ジャックへの道サン・ジャックへの道
(2007/09/26)
ミュリエル・ロバン、アルチュス・ド・パンゲルン 他

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ぽすれん『サン・ジャックへの道』紹介

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