『ハリスおばさんパリへ行く』
ポール・ギャリコ著/亀山 竜樹 訳/講談社文庫
ロンドンの通い女中、アダ・アリスことハリスおばさんは、得意先のお屋敷でクリスチャン・ディオールの素敵なドレスを見つけてしまう。それ以来、何は無くともディオールのドレスが欲しくなったおばさんは、運命すら見方に付けて何とか小銭を溜めていく。そしてとうとう、憧れのドレス分のお金が溜まった。目指すは花の都パリ。度胸と人情なら誰にも負けない、ハリスおばさんの珍道中は、女性の憧れディオールを舞台に暖かくもおかしく展開していく。
子供の頃は全く本を読めなくて、学校指定の推薦図書などには大分苦労した。1冊読みきるというのがとにかく苦手。子供の頃に読んだ本は、恐らく両手の指が余る程。しかもその殆どを憶えていない。そしてこの作品も、本屋でたまたま文庫を見かけて、子供の頃の記憶がどぉ〜っと蘇った。ああ、高級ドレスを買いたいという奇妙なおばさんのお話だ!!と(笑)。
児童書として本作の『抜粋』を読んだに過ぎないのだが、当時の感想としては、貧乏なハリスおばさんが、あろう事か高価なドレスに全財産を果すだなんて!その虚しさと見苦しさに胸が痛くて、ハリスおばさんが不憫で不憫で仕方が無かった。
両親が洋服屋さんで、子供の頃からパリコレなどに親しんで育った。その分野においてはかなり早熟な子供だったのだ。だから、ハリスおばさんが欲しいと言うドレスの雰囲気も、意味も、価値も、十分に理解していた事から、こうした感慨が生まれたものと思われる。
余りにも分不相応な事に熱意を燃やすハリスおばさんを面白いと思うどころか、なんだかこちらの方が気恥ずかしい思い。しかも新宿で生まれて育った身としては、都会育ちならではの荒んだ心配をしながらの読書だった。要するに、読んでいる間中心休まる時も無く、読み終わっても何か後味が悪い。そんな感想だけが残った。
今、全てを読み返してみると、いや、正しい全文を読んでみると、当時の私の感想は大きく逸れて、それこそ月の方までぶっ飛んでしまっていた事が良く解る。
おまけに、既に絶版の文庫を購入したのだが、そこには著者の名前が『ガリコ』とあり、誰だそりゃ?という思いだった。後書きを読んで納得。ポール・ギャリコの事だったのね(笑)。ギャリコと言えば、中々食指が動かない作家だった。何度か読もうと思ったものの、いまだに手を出せずにいたのだが、なんだ・・・小学校低学年の頃に既に読書済みだったのね(笑)。
なんだか思い出話ばかりになってしまったが、このユーモアは最高。ロンドンの通い女中をギャリコが表わす時に、それは日本の下町のお袋さんを髣髴とさせる。なんと言うか、こういうタイプの女性は、世界各国共通なんだなぁ〜と面白くなった。
戦争を経験し、夫を早くに亡くし、他の誰にも頼らずに、ただ親友とだけ助け合いながら地道に生きてきたハリスおばさん。さもすれば愚痴や嘆きだけに彩られそうな人生だが、その独特の人生観と良い、世の中に楽しみを見出す姿勢と良い、見習いたいと思わせる強さと面白さが満載だ。
子供の頃は不憫に思えたハリスおばさんの行動も、読み返してみれば理解が出来る。これは、ドレスが欲しい!とハリスおばさんが思う事から始まるドラマであり、ドレスだろうがなんだろうが良いわけだ。例えば、何をも欲しがらなくてもこの物語は成立するだろう。一流のシニカルなユーモアであり、子供には、いまいち掴み辛い上級さがあったわけだ(笑)。
またハリスおばさんの人間味溢れる様に、どうしようもなく愛着を感じる。全くもって完全じゃないハリスおばさん。楽天的で、賭け事が大好き。ウソをつかないという独自の解釈は面白いが、有名人に弱くてショービズ界に抗い難い魅力を感じてしまう。おばさんの欠点は言うなれば『見得』なのだが、その辺を修正していくために、このパリ旅行があったのだ。
嫌味な人は出てこないし、あっけらかんとしたハリスおばさんの人柄が、多くの人を幸せに導く。結果として、ハリスおばさんにも大いなる安らぎと幸せと、かけがえの無い人との繋がりがもたらされる。ラストでは惜しみなく感動の展開が用意されており、とにかく泣かせる思い切りの良さが心地良い。
遠まわしと言う言葉はハリスおばさんには無い。そのストレートさもまた気持ち良く、奇麗事を感じさせない下町魂というか、気風の良さがとにかく良い。ギャリコの代表作とも謳われる本作、長い間離れていたが、今更ながらに虜になった。
ロンドンの通い女中、アダ・アリスことハリスおばさんは、得意先のお屋敷でクリスチャン・ディオールの素敵なドレスを見つけてしまう。それ以来、何は無くともディオールのドレスが欲しくなったおばさんは、運命すら見方に付けて何とか小銭を溜めていく。そしてとうとう、憧れのドレス分のお金が溜まった。目指すは花の都パリ。度胸と人情なら誰にも負けない、ハリスおばさんの珍道中は、女性の憧れディオールを舞台に暖かくもおかしく展開していく。
子供の頃は全く本を読めなくて、学校指定の推薦図書などには大分苦労した。1冊読みきるというのがとにかく苦手。子供の頃に読んだ本は、恐らく両手の指が余る程。しかもその殆どを憶えていない。そしてこの作品も、本屋でたまたま文庫を見かけて、子供の頃の記憶がどぉ〜っと蘇った。ああ、高級ドレスを買いたいという奇妙なおばさんのお話だ!!と(笑)。
児童書として本作の『抜粋』を読んだに過ぎないのだが、当時の感想としては、貧乏なハリスおばさんが、あろう事か高価なドレスに全財産を果すだなんて!その虚しさと見苦しさに胸が痛くて、ハリスおばさんが不憫で不憫で仕方が無かった。
両親が洋服屋さんで、子供の頃からパリコレなどに親しんで育った。その分野においてはかなり早熟な子供だったのだ。だから、ハリスおばさんが欲しいと言うドレスの雰囲気も、意味も、価値も、十分に理解していた事から、こうした感慨が生まれたものと思われる。
余りにも分不相応な事に熱意を燃やすハリスおばさんを面白いと思うどころか、なんだかこちらの方が気恥ずかしい思い。しかも新宿で生まれて育った身としては、都会育ちならではの荒んだ心配をしながらの読書だった。要するに、読んでいる間中心休まる時も無く、読み終わっても何か後味が悪い。そんな感想だけが残った。
今、全てを読み返してみると、いや、正しい全文を読んでみると、当時の私の感想は大きく逸れて、それこそ月の方までぶっ飛んでしまっていた事が良く解る。
おまけに、既に絶版の文庫を購入したのだが、そこには著者の名前が『ガリコ』とあり、誰だそりゃ?という思いだった。後書きを読んで納得。ポール・ギャリコの事だったのね(笑)。ギャリコと言えば、中々食指が動かない作家だった。何度か読もうと思ったものの、いまだに手を出せずにいたのだが、なんだ・・・小学校低学年の頃に既に読書済みだったのね(笑)。
なんだか思い出話ばかりになってしまったが、このユーモアは最高。ロンドンの通い女中をギャリコが表わす時に、それは日本の下町のお袋さんを髣髴とさせる。なんと言うか、こういうタイプの女性は、世界各国共通なんだなぁ〜と面白くなった。
戦争を経験し、夫を早くに亡くし、他の誰にも頼らずに、ただ親友とだけ助け合いながら地道に生きてきたハリスおばさん。さもすれば愚痴や嘆きだけに彩られそうな人生だが、その独特の人生観と良い、世の中に楽しみを見出す姿勢と良い、見習いたいと思わせる強さと面白さが満載だ。
子供の頃は不憫に思えたハリスおばさんの行動も、読み返してみれば理解が出来る。これは、ドレスが欲しい!とハリスおばさんが思う事から始まるドラマであり、ドレスだろうがなんだろうが良いわけだ。例えば、何をも欲しがらなくてもこの物語は成立するだろう。一流のシニカルなユーモアであり、子供には、いまいち掴み辛い上級さがあったわけだ(笑)。
またハリスおばさんの人間味溢れる様に、どうしようもなく愛着を感じる。全くもって完全じゃないハリスおばさん。楽天的で、賭け事が大好き。ウソをつかないという独自の解釈は面白いが、有名人に弱くてショービズ界に抗い難い魅力を感じてしまう。おばさんの欠点は言うなれば『見得』なのだが、その辺を修正していくために、このパリ旅行があったのだ。
嫌味な人は出てこないし、あっけらかんとしたハリスおばさんの人柄が、多くの人を幸せに導く。結果として、ハリスおばさんにも大いなる安らぎと幸せと、かけがえの無い人との繋がりがもたらされる。ラストでは惜しみなく感動の展開が用意されており、とにかく泣かせる思い切りの良さが心地良い。
遠まわしと言う言葉はハリスおばさんには無い。そのストレートさもまた気持ち良く、奇麗事を感じさせない下町魂というか、気風の良さがとにかく良い。ギャリコの代表作とも謳われる本作、長い間離れていたが、今更ながらに虜になった。
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