『9 Songs ナイン・ソングス』

〔英〕9 SONGS (2004年)
監督:マイケル・ウィンターボトム
脚本:マイケル・ウィンターボトム
キーラン・オブライエン /マルゴ・スティリー/プライマル・スクリーム/フランツ・フェルディナンド/マイケル・ナイマン/エルボー/ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ

コンサートで出会った男と女。彼らは直ぐに意気投合し、やがて激しい愛に落ち込んでいく。我侭で奔放な彼女だが、男はそんな彼女の全てが愛しい。2人はコンサートを楽しみ、愛を楽しむ。やがて別れの時が来て、彼女は去って行った。男は今、南極の大地であの愛を思い出す。彼女が残した、肌の感触と匂いを感じながら。

最初にお断りしておくと、多少回りくどくても、直接的な表現は出来るだけ排除して感想を書きたいと思う。そうでもしないと、逆検索で不愉快なサイトに色々と引っかかってしまいそうなので。それ程に、この映画の内容は・・・、え〜、、、っと?大人向けだった(笑)。
1人の男が過去の恋愛を思い出し、愛した女性との濃密な時間を思い出すという構図。男が立たされているのは、何物も無い、ただ白銀の世界広がる静謐な南極の大地。そうして煩雑な現実から遠く離れて、男はとことん、思い出の中に浸る事ができたのだろう。時折差し挟まれる荘厳さを包括した、むしろ穏やかとでも言えそうな南極の風景が、作品のほとんどを占めているとんでもなく濃厚な愛の描写との極端なコントラストになっているようで印象深かった。
愛する人を思い出すとき、あなたなら何を基準にして思い出すだろう?時に笑顔であったり、共通の趣味を軸にした語らいだったりするかも知れない。主人公マットは、ずばり『愛=体の営み』という直接的な思考だった。愛した人の肌や匂いによって、全ての思い出を封じ込めている。
1組のカップルが辿る様々な経験、出会いから別れまでの時間と関係の流れを、単に愛し合うという行為の描写とコンサート風景だけで表現したものだ。コンサート風景1/3、愛の営み2/3と言ったところ。2人の気持ちの変化が見え始めた事ですら、愛の行為によって表現される。しかも、かなりどぎつい。
表現する要素を2つに絞った、だからこそ、その描写を他とは一線を画す程の印象深さで表したい、その意気込みは良く解る、非常に意欲的ですらあると思うが、やはり私も、多くの方が言っているように、これは『普通の映画』と言えるのか?という部分に疑問を持つ。
普通の俳優にここまでさせる必要はあったのか?その道のプロならいざ知らず、良く出演を承諾したなというのが正直な感想。男はまだ良いよね、女優にしてみたらかなりの犠牲を払っているとしか思えない。しかも映画初出演だというから、足元を見られていたのじゃないか?と邪推したくもなる。この作品以降余り目立った活躍もないので、なおさら複雑な見方になる。普通の映画とアダルト映画、その線引きはどこにあるのか?ここまでやられちゃうともう解らない。
映像は綺麗で、芸術的な音楽をバックに流し、全体的に静かな流れ。思い出を語る映画という点からも、どこか霞のかかった様な美しい印象すら残った。あれほど凄まじい描写だった割に、記憶に残っているのは静謐でしっとりとした愛の姿というのも、ある意味この監督の凄いところだなとは思うし、少なくとも私にとっては、監督の試みは成功していると言えるのかも?
単に1組のカップルの出会いから別れを描いているだけなので、物語に深みや面白みは一切無い。監督の深みを探りたいならお勧めだし、演出や表現方法など、物語を除いた映画としての楽しみところはたくさんあると思われる。そうした映画は得てして『芸術映画』的扱いを受けるが、私はやはりこれを芸術とは認めたくは無い。
映画としての楽しみどころはたくさんあると書いたが、純粋な興味以外のいやらしい観点でしか見られない人もたくさんいるだろう。そうした要素が強すぎる、だからこそ芸術とは思えない。だって、ボッティチェルリの『ヴィーナスの誕生』を観て、性的興奮を覚える人は殆どいないでしょう?だから芸術と呼べるのではないだろうか?どんなに良い要素を含有していようとも、くだらない興味や中傷などが判断の目を狂わせる可能性が多くある場合、それは芸術とは言い難い、単なる『やりすぎ』の域にあると思うのだ。

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(2005/09/02)
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ぽすれん『9 Songs ナイン・ソングス』紹介
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Category : 映画【ロマンス】 | Thema : DVDで見た映画 | Genre : 映画 |

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