『ボビーZの気怠く優雅な人生』

ドン・ウィンズロウ著/東江 一紀 訳/角川文庫
元海兵隊員で冴えない泥棒のティム・カーニーは、収監されていた監獄で正当防衛の殺人をしてしまう。監獄でも追われる身となったティムだが、そんな折、地元警察からある依頼を受ける。ティムに似ている伝説の麻薬王ボビーZの身代わりになって、メキシコの麻薬密売人の元に行けば、そのまま世間に放免してくれると言うのだ。仕方なくその話を受けたティムだったが、その裏には警察も巻き込んだとんでもない陰謀が動いていた。

ドン・ウィンズロウ・・・、そんなに良いかな?面白いとは思うのだが、単にそれだけというような気が・・・。この作品は映画化され、『ボビーZ』という簡潔なタイトルで日本でも昨年公開されているらしい。調べてみたら、ポール・ウォーカーが主演だと。それはまぁ、イメージ的に合ってるか。
ドン・ウィンズロウの『探偵ニール・ケアリー・シリーズ』は、最初の2作を読んで読むのを止めた。理由は、なんだか知らんが変に陰鬱な主人公が気に入らなかったから(笑)。物語は面白いと思ったが、この主人公を我慢して読み続けたい!と熱望するほどの面白さでは無かった。でもなんか、人気あるのよね、この作家。という事で性懲りも無くまた別の作品を買ってみたのだ、人気があるならもう一度確かめたいじゃない?
結論としては、そつなく無難に面白い路線を辿っているなぁ〜、というところ。メキシコの麻薬密売人、カリフォルニア警察、獄中で殺した男の一族、警察が仕組んだ交換劇で殺された警察官の一族と、まぁあらゆる『一味』から命を狙われるティムなのだが、当然主人公なので死なない(笑)。かといって運に頼ってばかりかと言うと、海兵隊で生き残る術を学んだ主人公らしく、危機的状況を乗り切って行くのだ。足手まといとなる子供を連れての逃亡となるのだが、その辺の『何故?』という疑問には、巧みな人物描写で小気味良く肉付けされたティムという人物像が知らず答を出してくれる。
そんな訳で、実際緻密に計算されたような構成力と、さり気なくしかし上手く描かれる人物像が非常に活き活きとしていて、そうした技は上手いものだなとつくづく思う。しかし、ある程度のレベルにしかないような気もするのね。なんでだろ?
きっと、物語がステレオタイプで、上手さが逆にありきたりに繋がってしまっているからなんだろうなと。どこかで読んだぞ?というか、比較的大量生産されている部類の話だから、上手いと逆に個性が相殺されてしまうんじゃないかと。まぁ、勝手な意見だが。
外れの無い、手に汗握るアクションとちょっとしたサスペンスやミステリが楽しみたい場合、迷わず選べる器用な作家だと思う。当分私は、そうしたアクション系の作品は読みたいと思わないだろうけど(笑)。

ボビーZの気怠く優雅な人生 (角川文庫)ボビーZの気怠く優雅な人生 (角川文庫)
(1999/05)
ドン ウィンズロウ

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