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『猫のパジャマ』
- 2008/03/24(月) 23:48:34
レイ・ブラッドベリ著/中村 融 訳/河出書房新社
道端で偶然猫を見つけた男女の出した結論とは?ロマンチックな男女の出会いも、どこか不可思議な雰囲気で語る表題作『猫のパジャマ』を始め、色白になりたかった黒人青年の一夏を爽やかに切なく描いた『さなぎ』、敗血症の男性が挑むハードボイルドな闘いを描いた『用心深い男の死』、若かりし頃の追憶を幻想的に描いた『雨が降ると憂鬱になる ある追憶』、宿敵を亡くして落ち込む男を救った親友の逆転劇を描いた『おれの敵はみんなくたばった』など、未発表作19本を含む巨匠の『新作』短編集。
さなぎ/島/夜明け前/酋長万歳/ふだんどおりにすればいいのよ/まさしく、オロスコ!シケイロス、然り!/屋敷/ジョン・ウィルクス・ブース・ワーナー・ブラザーズ・MGM・NBC葬儀列車/用心深い男の死/猫のパジャマ/三角関係/マフィオーソ・セメント・ミキサー/幽霊たち/帽子はどこだ、急ぎはなんだ?/変身/ルート66/趣味の問題/雨が降ると憂鬱になる ある追憶/おれの敵はみんなくたばった/完全主義者/エピローグ−R・B、G・K・C&G・B・S永遠なるオリエント急行
80歳を超え、いまだ現役。その創作意欲は衰えるどころか、この『新作短編集』は、その魅力を余すところ無く詰め込んだような魅力的過ぎる作品群だ。読者として、これほど喜びを与えてくれる作家は数少ない。いつまでもご健勝であられることを、願って止まない気持ちだ。
上気した作品紹介に挙げた短編が、概ね私が気に入った作品ということになる(笑)。
この作家の短編は、長編には無い魅力があると思う。短編と言うことで、必然的に簡素化された文章が読み易く、読み解くポイントが自然に浮かび上がってくる。また別には、長編だといささかこんがらがってしまいそうなメッセージが曖昧なものも、巧みに短い枠に収めて楽しませてくれる。また、多様な登場人物が彩り豊かだ。比較的少年か青年が主人公である場合が多い長編に対して、少女や老人など、様々なキャラクターが著者の独自の語りを代弁してくれる。
短編集とは、とかく著者の様々な側面を見せてくれるものが多いのだが、今作はまさにレイ・ブラッドベリ展覧会の様相。SFタッチのものあり、風刺的なものあり、単純にコミカルなものあり、幼い子供の純粋さを謳ったものあり様々であり、全てがまさにブラッドベリ・ワールド。
ブラッドベリの作品は、作者がどの年齢で書ものであろうとも、いかなる物語であろうとも、その作風の根底に『時代感の無い若々しさ』というのがあると思うのだ。例え時代を察知させるアイテムが描かれていようとも、その作品世界は時代を超越したノスタルジーを感じさせる雰囲気があり、登場人物がどの年代であろうとも、何となく排他的ではあるが、反面妙な瑞々しさを感じる。これは翻訳家の方々の統一された尽力も多大にあるだろうが、物語が時代にたゆたっているような雰囲気があって、そこがまたたまらない魅力だ。
今納められているタイトルを見ていても、思わずクスリとしてしまうコミカルなものあり、その隣には身を引き締められるような痛烈な物語あり、素晴らしいラインナップだったと思わせられる。作品紹介に上げた以外で特記しておきたいのは、完全に人を食った風刺的要素の強い『酋長万歳』、冒頭から読者の心を掴みつつ揺さぶり、多分にブラッドベリ的な若々しい爽やかさと暗い側面をブレンドした『さなぎ』、脚本も書き、恐らくはアメリカのエンターテイメントに深い愛着があるであろうブラッドベリを感じる『ジョン・ウィルクス・ブース・ワーナー・ブラザーズ・MGM・NBC葬儀列車』、これもまた余りにブラッドベリらしい不可思議さを包括した作品だった。
とにかく楽しませてくれる、長年文章を書き続けてきた人の、まさに職人技と言える卓越した物語。溢れるほどの個性、唯一無二のブラッドベリ世界。現代では少なくなっているように思う、こうした芯から語れる厚みのある作家の新作、是非多くの人に楽しんで貰いたい。
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ジャンル:
- 小説・文学
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