『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』

  • 2008/03/27(木) 08:10:09

〔米〕HEDWIG AND THE ANGRY INCH (2001年)
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
原作戯曲:ジョン・キャメロン・ミッチェル/スティーヴン・トラスク
脚本:ジョン・キャメロン・ミッチェル
ジョン・キャメロン・ミッチェル/マイケル・ピット/ミリアム・ショア/スティーヴン・トラスク/セオドア・リスチンスキー/ロブ・キャンベル/マイケル・アラノフ/アンドレア・マーティン/ベン・メイヤー=グッドマン/アルバータ・ワトソン/ジーン・ピルツ


東西が分断されていた頃の東ドイツで育ったハンセルは、在中していたアメリカ兵に結婚を申し込まれた。しかしそのために、大切なものを故郷で捨去る事になる。性転換手術とは名ばかりの切除手術は失敗し、僅か1インチの塊が残ってしまったハンセル。母の名ヘドウィグを名乗るようになった彼女は、やがて夫に捨てられ、1人アメリカで暮らし始める。そこで出会ったトミー、彼女は持てる全てを彼に注ぎ込み、2人でロックの世界に入って行くのだったが。。。

映画が好きな方なら誰でも、『心に残る名台詞』というのが無いだろうか?一般的なものでなくても、自分だけの琴線ふに触れた、心に染み付いて離れないような名台詞だ。私の場合は『we love balls!!』で主人公の姉が言った一言、『どうして良い男はみんなゲイなのよ!!!』という台詞だ。いや、冗談でも何でも無くて(笑)。とにかく、脳裏に焼きついて離れない。
前々から漠然と思ってはいたのだが、あの勢い、あのタイミング、あの演技、妙に説得力があって大笑いしてしまった。しかも最近、ことある毎にこの台詞を思い出す。多彩で魅力的な人材には、ゲイの方が多いような気がするのね。全く、女性が余っちゃうじゃないの(笑)。
と言うことで、本作の脚本、監督、出演(歌と踊り付き)をこなしたJ・C・ミッチェルももちろんの事。おまけにやたらと綺麗なんである。レイチェル・グリフィスに似てる・・・。全く、女性の立場がないじゃない(笑)。映画開始後直ぐに、ヘドウィグが男性である事を忘れてしまうほど綺麗。立ち居振る舞いとか、全てが余りにも自然。ナヨナヨと『女性らしさ』をデフォルメした演技は良く見かけるが、これほど『普通に』女性になっているのを見たのは初めてだ。
現在ではカルト的人気を誇る本作ではあるが、率直な感想は『普通』。物語、演出など、トータル的には普通なのだ。しかし歌は良かった、J・C・ミッチェルの声も心地良い感じ。しかもやたらと上手い。監督兼脚本家兼役者に求められるレベルを遥かに超えて上手い。全く、どれ1つもまともに出来ない人もいるって言うのに・・・。不公平だわぁ。
ミュージカルではないのだが、映画全編を通してライブを行いながら、その人生や思考を歌によって語っていく。全体としても感じた事だが、特に楽曲では、余分なものを削ぎ落としたシャープさがある。全体の印象もすっきりとしており、だからとって説明不足でも無いのは、物語を時間をかけて練り上げ、細部に至るまで熟考された証とも言えそう。
カルト的人気か故かは不明だが、受け手側の感想や感じた事がまちまちのようだ、愛に特化していたり、生き方であったり。私個人としては、人に与えられた人格の殻を、トミーへの愛が破綻した事をきっかけに脱ぎ捨てられたのだと思った。
人格を押し付けた人達を憎むでもなく、しかしその代わり、何か悲劇を甘んじて受け入れているような消極性も感じた。そしてラストにおいての彼女を観ていたら、なんだか重たいものを色々脱ぎ去って、本来の自分へ戻ったのだと思えた。だから私的には、結構素清々しいラストだったわけだ。素のままの自分、在りたい自分でいる事は難しいのかもしれないが、人生きっと、そのほうが幸せになれるという事かな。自分の片割れも、それでこそ見つけられるというもの。
もしかしたら、他人によって作り上げられた鋳型に苦しんでいたヘドウィグも、ある人に対しては同じ事をしていたのかもしれない。ラストにおけるもう1つのエピソードは、それを意味しているのではないかしら?自分が閉じ込められた殻に気が付くと同時に、自分が他人に作った殻にも気が付いたとか、ね。
さてさて、とんでもない多彩振りを見せてくれたJ・C・ミッチェルは、『ショートバス』の監督。こちら結構いまいちとの評判があるようだが、借りられそうだったら観てみよう(笑)。この驚くほどの才能、今現在ではどのように変化しているか、大変興味があるのだ。

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチヘドウィグ・アンド・アングリーインチ
(2007/01/26)
ジョン・キャメロン・ミッチェル、マイケル・ピット 他

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ぽすれん『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』紹介

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